Joe Biden’s 2024 Opening Argument: It’s Me or the Abyss
ジョー・バイデンの2024年大統領選出馬宣言 : 私を選ぶか、大変な目に合うか?
The President’s calling card—as a Trump-slayer, and an upholder of normality and sanity—remains his biggest advantage.
バイデン大統領は、トランプの再選を阻止し、アメリカの平和と正義を守るという大義名分を掲げて、大統領選を戦うつもりです。
By John Cassidy April 25, 2023
今日、ジョー・バイデン大統領が2024年の大統領選に再選を目指して出馬すると正式に表明しました。今後18カ月間にわたって選挙戦が繰り広げられるわけですが、彼は差し当たっての抱負を述べました。彼は、今回の大統領選をアメリカの自由、民主主義、社会的権利を右翼の攻撃から守る戦いと位置付ける戦略をとっています。バイデンは、 火曜日(4月25日)にネット上に3分間の動画を投稿し、その中で「私は、大統領に就任して以降、民主主義のために戦い続けてきました。」と述べていました。その動画の冒頭には、2021年1月6日に国会議事堂を襲撃するトランプ支持者の映像が映っていました。
バイデンは、共和党全体を、アメリカの根幹を成す価値観を攻撃している過激主義思想にまみれた、トランプが支配する組織であると非難しました。彼はアメリカ中で、「MAGA(Make America Great Againの略)を唱える過激主義者は、有権者が一生かけて支払った社会保障費を目減りさせ、自由の基盤を奪おうとしている・・・(中略)・・・ 人工妊娠中絶の権利を奪い、検閲を強化し、LGBTの権利も軽視しています。」と訴えていました。
その動画は、一部はデラウェア州にあるバイデン大統領の自宅で撮影されたものでしたが、政策についてはあまり触れられていませんでした。彼が4 年前に大統領選に立候補すると発表して以来一貫して彼が発してきたテーマを繰り返し主張することに重点を置いていました。彼は、1月6日の議会襲撃事件以降、トランプを非難する姿勢をより強めていました。また、現在アメリカでは基本的な権利と自由が危機にさらされており、「アメリカの魂のための戦い」は依然として激しさを増していると主張していました。その動画には、セルマ(Selma)のエドマンド・ペタス橋(Edmund Pettus Bridge)を歩いているバイデンと公民権運動家ケタンジ・ブラウン・ジャクソン(Ketanji Brown Jackson)の映像が含まれていました。ジャクソンは、連邦最高裁判所で初めて判事に指名されたアフリカ系アメリカ人です。また、連邦最高裁判所がロー対ウェイド判決を覆す判断をしたことに抗議するデモ参加者の声も含まれていました。バイデンは語っていました、「自己満足に浸っている場合ではない。それが私が再選出馬を決意した理由です。」と。
バイデンがその動画の中で明確には名指ししていない人物が1人いるのですが、それは、大統領選で相まみえる可能性の高いドナルド・トランプです。トランプが必ず共和党の大統領選候補者になるというわけではないのですが、バイデンが大統領選で再選される可能性を最も大きく左右するのは、トランプの動向であることは誰もが認識しています。バイデンが再出馬の意向を表明する前の時点では、各種調査結果によると、民主党支持者の間でバイデンの再選を期待する声はそれほど高まっていないことが示されていました。ただし、この世論調査結果は慎重に解釈する必要があります。私が読んだところでは、ほとんどの民主党員はバイデンの人格には肯定的です。しかし、民主党が80歳の人物を大統領選候補とすることには否定的なようです。しかし、民主党支持者は、他にもっと良い候補者を見つけられない状況にありますし、トランプがホワイトハウスに戻ることだけは何としてでも阻止したいと望んでいます。
バイデンが訴えているのは、自分の任務はトランプの再選を阻止することで、自分は正義と正気の擁護者であるということです。彼にとっては、それを訴え続けるのが2024年の再選に向けた最善の策だと思われます。バイデンには、他にも訴求できる点があります。彼は大統領に就任して以降、民主党内を巧みに纏め上げてきました。彼は挙党体制を構築できる有能なリーダーであることを証明してきました。彼は昔ながらのアイルランド系アメリカ人の政治家であり、彼の側近の多くの政治顧問は党の穏健派出身のベテランばかりです。それにもかかわらず、彼は民主党支持者の中心は白人や高齢者でないことをずっと以前から認識していました。それで、バイデンは、より若く、より多様で、進歩的な人物を要職に何人も迎えました。そうした傾向は、2024 年の大統領選の準備においても見られます。火曜日(4月25日)、バイデンは、労働者の指導者であり公民権活動家として有名であったセザール・チャベス(Cesar Chavez)の孫娘であり、大統領上級顧問の1人であるジュリー・チャベス・ロドリゲス(Julie Chávez Rodríguez)が選挙対策本部長に就任すると公表しました。また、ジョージア州でラファエル・ワーノック(Raphael Warnock)の上院決選投票における選挙キャンペーンを統括した33歳の黒人政治戦略家、クエンティン・フルクス(Quentin Fulks)が主席副本部長を務めることも公表しました。
バイデンは再出馬を表明した動画で大統領就任後2年間の成果ついては詳しく説明しませんでしたが、強調すべき重要な成果をいくつも残してきました。彼のリーダーシップの下、アメリカ経済は他の多くの国よりも新型コロナの影響から早く回復していますし、失業率はわずか3.5%です。この1年間、議会はグリーンエネルギー、電気自動車、半導体チップ製造へ膨大な額の投資を決定しています。私が先週のコラムで指摘したのですが、これらの施策は既に実を結んでおり、新たに多くの工場が建設され、新たに多くの雇用が創出されました。そうした恩恵を受けているのは、赤い州(red state:共和党を支持する傾向がある州)と紫の州(purple state:両党の支持が伯仲する接戦州)が多いようです。
彼の実行した施策は誇るべき成果を挙げていますし、長期的にアメリカ経済を健全にするものであるわけですが、バイデンの再選の最大の障壁となりそうなのは、短期的なアメリカ経済の動向です。バイデンにとってタイミングの悪いことに、現在から2024年11月までの間に景気後退局面入りする可能性が高そうです。というのは、FRBがインフレ抑制を優先し、引き締め的な金融政策を維持しているからです。ファイブサーティエイト(FiveThirtyEight:世論調査の分析を中心としたウェブサイト)の世論調査よると、インフレ率が上昇し生活費が急激に上昇した2021年10月以降、バイデン大統領の支持率は概ね45%を下回り続けています。昨年7月にはその数字が37.5%となり最低値を記録したのですが、その後インフレ率が徐々に下がったため、それ以降はゆっくりと回復しています。今のところ、有権者の多くがバイデンのインフレ対策をそれほど評価していないようです。リアルクリアポリティクス(RealClearPolitics:政治ニュースサイトおよび世論調査データ収集サイト) の調査結果では、バイデン大統領の経済運営の手腕を支持しているのはわずか37%で、57.9%が不支持です。
その調査結果についてつぶさに調べてみると、 バイデン大統領にとってポジティブな兆候もいくつか見られます。バイデン大統領の支持率は低いのですが、バラク・オバマやロナルド・レーガンの大統領就任1期目の2年目の時点の支持率と大差ありません。また、世論調査において、バイデン大統領の仕事ぶりに対する評価ではなく、人物についての評価を見るとそれほど悪い評価ではないのです。たとえば、最近のユーガブ(YouGov:英国の国際的なインターネットベースの市場調査およびデータ分析会社)とエコノミスト(Economist)誌による調査では、バイデン大統領個人に対する支持率は47%で、仕事ぶりに対する評価を5ポイント上回っていました。
また、大統領選は1対1のガチの対決となるわけですが、その際、有権者は2人の候補者を見比べて判断をする傾向があるという事実があります。最新のリアルクリアポリティクスの世論調査によると、トランプの支持率はバイデンよりも概ね2ポイント低くなっています。もしも、トランプが共和党の大統領選候補に選出されなければ、民主党は2024年の大統領選における取り組みを修正する必要が出てくるでしょう。とはいえ、今のところ、トランプが共和党の指名争いで敗北する可能性は非常に低いようです。彼の最大のライバルと目されていたフロリダ州知事のロン・デサンティス(Ron DeSantis)は世論調査で支持を急激に減らしていますし、月曜日(4月24日)には、共和党のモンタナ州選出上院議員で共和党の大統領選キャンペーンの責任者であるスティーブ・デインズ(Steve Daines)がトランプを支持すると表明しました。バイデンの言っていることは事実で、MAGA(Make America Great Again)の脅威は除去されていません。非常に手強いもので、その脅威を消し去ることは容易ではないのです。バイデンは再出馬を表明した動画の中で訴えました、「この仕事を終わらせよう。私たちにはそれができる。」と。♦
以上
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