第 2 章 反トランプ勢力の受け皿になる可能性がある
サウスカロライナ州予備選の 2 週間前に、ヘイリーはバスを使ったキャンペーンを実施すると発表した。バスは行く先々で停まる度に、ヴァン・ヘイレン( Van Halen )の楽曲「ライト・ナウ( Right Now )」を流した。私はプレジデントデー( 2 月 19 日)の週末に、そのキャンペーンに同行した。バスは州内を走り回った。このキャンペーンに興味を持つ有権者は少なくなかった。支持政党が決まっていない有権者、共和党員であるがトランプを支持しない者などの数は決して少なくない。その受け皿に、ヘイリーがなれるかもしれないと思えた。日曜日(2 月 18 日)の夕方、バスはフォートミル( Fort Mill )郊外の多くの高齢者が住まう閑静な高級住宅街に入った。多くの住民(ほとんどが高齢者)が集まってヘイリーを歓迎した。「女性差別主義者で、精神的に不適格な人物が指名争いをしている」と医療法人の理事をしているローガン・ヘッジス( Logan Hedges )は言った。「すべてがすべてデタラメだ。多くの人が、洞窟の中のコウモリのように、トランプにぶら下がっている。何も考えていない。ドナルド・トランプに投票するくらいなら、チンギス・ハーン( Genghis Khan )に投票する。まともな者なら誰もがそうする」。
トランプは、ヘイリーに献金する者や彼女の支持者を将来にわたってトランプ陣営から追放すると宣言している。ヘイリーは自らを、屈強なゴリアテ( Goliath )に追い込まれながらも立ち向かうダビデ( David )になぞらえている。多数の MAGA 支持者に守られたトランプに必至で対抗する勇者のイメージを定着させようとしている。彼女は反トランプ運動( Never Trump movement )の急先鋒というレッテルが貼られるのを拒否している。しかし、彼女がキャンペーンを続けることは、共和党がトランプの言いなりになってしまったことを憂いている者たちにとって心強い。最近の彼女の集会には、トランプとジョー・バイデンにうんざりしている者が多数参加しており、なかなか盛況である。共和党員の中にも、リベラルで反トランプを標榜している者は決して少なくない。
フォートミルでは、ジョーン・ジェット( Joan Jett )の楽曲が流れる中、ヘイリーがバスから降りた。「私たちは前進しなければならない。否定的な意見を捨て去らなければならない。新しい世代のリーダーが必要ではないか?」と、彼女は聴衆に問うた。「私たちの子供や孫のために、正しい選択をすべきである」。ノースチャールストン( North Charleston )での支持者集会で、トランプは聴衆に語った、「急進左派が牛耳る民主党は、ニッキー・ヘイリーが共和党の候補者に指名されることを願っている。というのは、民主党は大統領選でヘイリーが相手なら勝てると踏んでいるからである。…(中略)… 彼女は怒りやすく、すぐに狂う。トランプ錯乱症候群という疾病を患っており、既に末期症状である」。