決して撤退しない! ニッキー・ヘイリーは、何を成し遂げようとしているのか?

第 5 章 知事時代から反トランプを掲げていた

 ヘイリーの新しいスローガンは「 Make America Normal Again(アメリカを普通の国に)」である。彼女は、バスを使ったキャンペーンツアーの 2 週目の週末に、キアワ島( Kiawah Island:サウスカロライナ州チャールトンの南西 に浮かぶリゾートアイランド)のショッピングモールに赴いた。彼女はこの島のゴルフリゾートに隣接する海岸に邸宅を所有している。ショッピングセンターの中心にある芝生広場に集まった聴衆は少なかった。その広場は、ちょっとしたイベントができるスペースとなっており、周りにはジェイマクラフリン( J. McLaughlin )やサザンタイド( Southern Tide )等のアパレルショップやワインバーなどがあった。パームツリーが植えられ、トピアリーがあり、パステルカラーが目立って、リゾート地らしい雰囲気が漂っていた。スポーティーなウェアに身を包んだカップルがゴールデンレトリバー 2 匹とともにショッピングを楽しんでいた。手にはニューヨークタイムズ紙があった。

 ヴァン・ヘイレンの 楽曲「ライト・ナウ」が流れる中、バスに続いて 2 台の SUV が到着した。1 台には保安官が乗っていた。レッドソックスの帽子をかぶったスコット・マクガバン( Scott McGovern )という男性は言った、「バイデンとトランプの争いになったら、どっちが勝つかは誰にもわからない。バイデンの実績は素晴らしいけれど、歳をとりすぎている。パーキンソン病かもしれない。」と。マクガバンは妻と一緒にこのイベントに参加していた。「撤退せずに頑張るという彼女の野心を私は応援したい。この州には超保守的な田舎者しか住んでいない。トランプが完全に州全体を支配している」。ヘイリーのイベントは、必ずと言ってよいほど、抗議活動家やトランプ支持者から妨害される。この日の朝の妨害者は 1 人だけだった。その男は、歩きながら「パレスチナを解放せよ!」と叫んでいた。

 「ここでは多くの人が彼女の悪口を言っている。」と、チャールストン出身で引退した元広告会社役員のジェリー・スモーク( Jerry Smoak )は言った。彼のテーブルの脇に座っていた 2 匹のオーストラリアン・シェパードには、ヘイリーのステッカーが貼られていた。このイベントは、反トランプを掲げる者たちにとって拠り所となるものであったのだが、熱気は無かった。トランプ陣営には勝てそうにないという諦めの雰囲気が漂っていた。スモークは言った、「同じようにトランプがイベントをしたら数千人が集まっただろう。のんびりできて良いんだけど、今日は閑散としている。もしトランプがここにいたら、ビーチに行くことさえ不可能さ!」と。

 キアワ島でのヘイリーのバスを使ったキャンパーンは、本当に閑散としていた。普段の週末と何ら変わらなかった。ヘイリーは、いつもの週末と同じで、リゾート地の牧歌的な雰囲気を堪能できたのではないか。多くの女性が子供を連れてアパレルショップでドレスを物色したり、アイスクリームスタンドに立ち寄ったりしている中、トレイン( Train )の「 Meet Virgina(ミート・バージニア)」という楽曲が流れた。そこかしこに掲げられているアメリカ国旗が海風にそよいでいた。しかし、トランプのように国旗を抱きしめながら「 USA !」と唱える者は 1 人もいなかった。ボーフォート・ボネット・カンパニー( Beaufort Bonnet Company )の店があった。ちょっと高価だが洗練されたベビー服と子供服を売っている。古いロックのヒット曲が流れていたせいもあるが、私は古き良き時代の選挙風景を思い出した。昔は、候補者がバスで各地を回ると、多くの家族連れが待っていた。暖かく迎えられ、盛大に拍手されたものである。