ロボットがあなたの仕事を奪い取る?奴は週7日24H働いても乳酸を溜めず、有給や忌引で休むこともない。

Annals of Technology March 4, 2019 Issue

Are Robots Competing for Your Job?
ロボットは仕事を奪ってしまうのか?

Probably, but don’t count yourself out.
おそらく無くなる仕事もあれば、新たに生まれる仕事もあるでしょう。 

1.ロボットが職を奪い取るという脅威が差し迫っている?

 ロボットがやって来ます。WD-40(防錆潤滑剤)を隠して、バッテリー類も隠して下さい。強力磁石を使って罠を仕掛け、深い落とし穴も掘らないといけません。「オックスフォード大学が行った研究で今後の15~20年間で米国の仕事の47%はロボットや人工知能に置き換えられるリスクがあると予測されて以来、私は「仕事」というものが将来どのようになるのだろうかと考え続けています。」とアンドレス・オッペンハイマーは著書「The Robots Are Coming: The Future of Jobs in the Age of Automation(邦題:ロボットがやってくる:自動化時代における将来の仕事)」(ヴィンテージ出版)に記しています。その本によると、将来は誰もがロボットに仕事を奪われるようです。その本の第4章では銀行家が仕事を奪われ、第5章では弁護士、医療従事者が仕事を失うと記されています。ハリウッドも影響を受け役者が仕事を奪われると記されています。しかし、そういったことは今のところ実現していません。真っ先に被害を受けると予想されていた工場労働者の仕事でさえ奪われていません。

 かつては労働者の脅威であった昔ながらのロボットは肉体労働をするロボットでした。力持ちで武骨でした。米国中西部の工場労働者からかなりの仕事を奪い取りました。しかし、経済学者のリチャード・ボールドウィンによれば、著書「The Globotics Upheaval:Globalization、Robotics、and the Future of Work(邦題:(グロボティクス) グローバル化+ロボット化がもたらす大激変)」(オックスフォード出版)の中で論じていますが、現在脅威となっているロボットは、頭脳労働をするロボットです。ロボットと呼んでいますが、実際に今一番の脅威は、海外にいる知識労働者です。彼らはブルックリンで行われている銀行のバックオフィス業務をしている人たちの仕事を奪い取っていくでしょう。ボールドウィンは、そうした者たちのことを「remote intelligence(リモート・インテリジェンス)」略して「RI」と呼びました。それらは正確にはロボットではありませんが、どういうわけか、ボールドウィンは同じカテゴリに分類しています。彼らは、自国に留まったまま国境を越えることなく米国の仕事を盗むことができます。彼らは、インターネットやリモートワーク用のアプリを駆使することで、面倒な入国手続きをすることもなく誰からも気付かれずに国境を越えます。彼らは、米国や欧州や他の高賃金の国の中産階級の繁栄の基盤であった条件の良い安定した仕事を奪っていくでしょう。中産階級は人工知能にも職を奪われています。「Grobot」(グローバル化+ロボット化)の脅威は非常に差し迫ったものです。

 自分の仕事を奪い取るのが、人工知能(アーティフィシャル・インンテリジェンス)かリモート・インテリジェンスのいずれであるかを知る方法はあるのでしょうか?オックスフォード大学で人類の未来予想をしている研究者アンダース・サンドバーグはオッペンハイマーに言いました、「もし、あなたの仕事の内容が簡単に説明できるようなものであれば、それは簡単に自動化されるでしょう。簡単に説明できないのであれば、自動化されることはありません。」と。私は職務記述書に「未来を予測すること」とだけしか書かれていないので、運の無いことに仕事をすぐに奪い取られることでしょう。ボールドウィンは3つアドバイスをくれました。(1)AIやRIと競合することは避ける。(2)人間だけにしか出来ない技能を習得する(3)人間性はハンディキャップではなく武器であることを認識すること、の3つです。これらの意味することを真に理解することは難しいかもしれません。特に、これまで人間性がハンディキャップであると考えたことなどない場合はなおさらです。人類の未来に関して、オッペンハイマーは3つの別の滑稽なルールを提示しています。社会は3つの大きなグループに分けられます。1つめはエリートのグループです。技術革新が常に続く状況にも適応できる人たちで、最も収入を得る人たちです。2つめは、進化し続けるエリートグループに対して役務の提供が可能な人たちのグループです。パーソナル・トレーナー、ジムのトレーナー、ヨガの達人、ピアノの先生、出張シェフなどです。3つめは、誰にも雇用されず、技術の進化によって失業し、補償としてユニバーサル・ベーシック・インカムをもらう人たちのグループです。

 ダグラス・アダムズ(英国のSF作家)の読者であれば、「The Hitchhiker’s Guide to the Galaxy(邦題:銀河ヒッチハイク・ガイド」に似たような話があったと思うかもしれません。はるか昔、銀河系のそんなに遠くないところの惑星ゴルガフリンチャムの人々は、3つのグループに分かれていました。Aは、優秀な指導者、科学者、偉大な芸術家などの誰もが知っている成功の証を持つ人たちのグループです。Bは、美容師、疲れたテレビプロデューサー、保険のセールスマン、人事担当者、警備員、広報担当役員、経営コンサルタントなど、他の人たちから何も生み出さない馬鹿と思われている人たちのグループです。そして、Cは、実際の仕事をする人たちのグループです。物を作ったり、ものごとを実施する人たちです。Bのグループの人たちは、住んでいる惑星が滅びる運命にあると信じ込まされ、他の惑星を植民地化する必要があると主張して、探検隊を組織して宇宙船1隻で飛び出していきました。その後、その宇宙船の船長が、主人公の英国人アーサー・デントに「どうやら太陽みたいなものにぶつかりそうです。」と報告する場面がありました。その時、船長はどうして他のグループの宇宙船が続いてこないのか不思議に思っていました。続いて、Bの船長はデントに「太陽ではなくて、どうやら月みたいなものが衝突しそうです。この状況ではどう考えても、助かる見込みが無いように思えるんですが?」と尋ねました。すると、デントは、「そうですよ。だからこそ、AとCのグループの人たちは、あなたたちを先に行かせたんですよ。」と答えました。

 現実の世界の話に戻りますと、イーロン・マスクが火星を植民地化するという野心を抱いていますが、Bのグループの人たちを説得して宇宙船に乗せようなどとは誰も考えていません。なぜなら、Bの人たち、つまり美容師、ジムのトレーナー、ヨガの達人、パーソナルトレーナーなどは、 Aの人たちの役に立っています。しかし、Cの人たち、物を作ったりものごとを実施する人たちは、要らない人になりつつあります。なぜなら、ロボットがやった方がより速くより安くできるようになりつつあるからです。歴史家で哲学者のユヴァル・ノア・ハラリは、Cのグループの人たちの呼び方を考えました。それは「役立たず属」です。一部の研究者が示唆していますが、アイザック・アシモフのSF小説の中の記述と似ていますが、Cのグループの人たちは将来は一日中テレビゲームをして過ごすことになるかもしれません。そうでない場合、Cのグループの人たちが革命を起こそうとする可能性があります。そうなると、Aのグループの人たちは、自らを「コグニティブ・エリート」と呼び賢いロボットよりも自分の方が賢いと信じている人たちですが、堅牢なシェルターに逃げ込まなければならなくなるでしょう。実際、ピーター・ティール(PayPal創業者の1人)はニュージーランドに500エーカー近くの土地を所有し、独自の水源も確保しているくらいです。多くの人が支持している提案は、Cのグループの人たちに革命を起こさせないために、お金だけを払うということです。マスクは2年前のドバイサミットで他の億万長者と会った際、ユニバーサル・ベーシック・インカム制度の必要性を主張していました。その際、Facebook社のマーク・ザッカーバーグ、Slack社のスティワート・バターフィールドもそれを支持していました。