衝撃!アメリカの小売業で年間に返品される金額合計が1兆ドルに迫る!日本の国家予算より多くない?( ^ω^)

The World of Business

What Happens to All the Stuff We Return?
返品した商品はどうなるのか?

Online merchants changed the way we shop—and made “reverse logistics” into a booming new industry.
ネット小売業者が消費者の行動を大きく変えた。そして、リバース ・ロジスティクスが急成長する新しい産業となった。

By David Owen August 14, 2023

1.アメリカ人は返品好きとリバース・ロジスティクス

 先日、知人の娘(20代)が新しいドレスを6着注文した。全てを購入するつもりは無い。大学の同級生の結婚式に招待されたので、一番気に入ったドレス以外はすべて送り返すつもりだ。「水着や結婚式用のドレスが必要になったら、たくさん取り寄せたら良いのよ!」と、ネット・モールのクレイジー・クーポン・レディ(Krazy Coupon Lady)の共同設立者であるジョニー・デマ―(Joanie Demer)が教えてくれた。一部のネット・アパレルショップでは、売れた商品の40%が返品される。

 ネット・ショッピングは着実に成長している。それに伴い、返品される商品もべらぼうに増えた。あらゆるものが返品される。1月には擬木のクリスマスツリーが大量に返品される。大きな森が出来るほどだ。春には、イースターが終わると緑色のプラスチック製イースター・グラス(玉子の下に敷く藁みたいなもの)が山ほど返品されてくる。スーパーボウル(Super Bowl)直後には、大型テレビの返品が増える。ポータブル発電機(portable generators)は台風や竜巻が発生すると売れまくる。購入者は、一時だけ使う。しかし、難が去れば、返品され戻ってくる。私の別の知人は、非常に多くのデジタルブックをオーディブル(Audible)に返品した。今では、彼女が返品をしようとすると、オーディブルは彼女に電話するか、電子メールを送信してくるようになった。豪華なパーティに招待された人は、高価な衣装やアクセサリーを購入する。用が終われば、それらはキャビアのシミが付いて返品されてくる。いわゆるワードロービング(wardrobing)という技である。実店舗(Brick-and-mortar)での買い物客も返品しまくる。「ペトコ(Petco:アメリカのペット小売業者)は死んだ魚でも引き取ってくれます。」と、デマーは言う。「ホームデポ(Home Depot)やロウズ(Lowe’s)では、購入1年後に枯れた苗木でも返品できる。たとえ、自分の瑕疵で苗木を枯らしてしまっても堂々と返品すれば良いのです。恥ずかしがってはダメです。遠慮したら損するだけです」。世界で最も返品好きな国民は、アメリカ人で、類まれなレベルである。その対極にあるのが日本人である。彼らはほとんど返品しない。

 今年初め、私はラスベガスで開催された3日間のカンファレンスに出席した。このカンファレンスはリバース・ロジスティクス協会(Reverse Logistics Association:略号RLA)の主催だった。同協会は、返品された製品、売れ残り在庫、倒産品等を扱う企業が加入する業界団体である。この業界は大きく、拡大が続いている。アリゾナ州立大学のビジネススクール教授のデール・ロジャーズ(Dale Rogers)は、コロラド州立大学のビジネススクール教授で息子のザカリー(Zachary)と共同発表を行った。聞いて驚いた。アメリカの冬季休暇(winter-holiday)中の返品商品の総額は3.000億ドルを超える。 ザカリーは言った、「アメリカのGDPの1.5%に該当します。クリスマスに購入して直ぐに飽きられて返品された商品の総額は、世界中の多くの国のGDPより大きいのです。」と。1年間にアメリカで返品される商品の総額は、1兆ドルに近づいているという。

 ほとんどのネットショップ利用者は、返品した商品は通常の在庫に戻されて、再び定価(full price)で販売されると思い込んでいる。そんなことはめったにない。3日間の会議の最終日に、私は懇親会(champagne roundtable)に加わった。主催者は、ニコス・パパイオアンヌ(Nikos Papaioannou)だった。彼は、キンドル(Kindles)、エコー(Echos)、ブリンク・ホームセキュリティ・システム(Blink home-security systems)など、アマゾン(Amazon)独自ブランドの電子機器の返品商品を統括している。彼によると、アマゾンに返品される商品はすべて、リバース・ロジスティクスの世界でトリアージ(triage)と呼ばれる作業を経る。トリアージとは、商品の状態の分析から始まる。トリアージを経た商品の内、再び新品として扱われる割合はどのくらいか尋ねた。

 「本当に僅かです。」と、彼は答えた。「具体的な数字は申し上げられない。商品カテゴリーによって異なる。ちなみに、もしシールが破れていたり、包装に少しでも傷があれば、棚には戻さない」。パパイオアンヌはアマゾンの返品商品の実態について誰よりも理解しているにもかかわらず、他の人と同じように買い物をすることが多い。普通に返品をしまくっているという。たとえば、彼が靴を買う際には、いつも0.5インチ違いの2足を注文する。実店舗では、誰かが試着した靴は箱に入れ直され、棚に戻される。「アマゾンの基準に立てば、箱が開けられた瞬間に棚に戻される可能性は無くなる。」と、彼は言った。

 長い間、ネットショップの返品商品の多くは単純に廃棄されてきた。驚くほど高い割合だった。返品商品を廃棄することは、業界用語でDIFと称されている。”destroy in field “の略である。メリーランド州に本社を置くパトリオット・シュレッディング(Patriot Shredding:シュレッダー・サービスを提供)社のウェブサイトには、「製品廃棄によって、企業の評判を守り、将来に集中できる」とある)。現在でも、安価な衣料品、安物の小型家電、ブランド企業がオーシャン・ステート・ジョブ・ロット(Ocean State Job Lot:成長中のディスカウントストア)に商品が流れるのを望まない高級品などでは、多くの返品商品が廃棄されている。しかし、ほとんどの製品カテゴリーで、以前ほど廃棄処分はされなくなった。リバース・ロジスティクス協会のカンファレンスには800人以上の参加者がいた。その多くが、何らかの形で利益に繋げられる方法がないか模索していた。もっと効率を上げられないか、可能な限り環境負荷を減らせないかということを考えていた。自由放任の消費行動から生じる廃棄物の管理方法を改善したいと考えていた。「返品商品管理には、ビジネスチャンスが広がっている。」と、マイアミに拠点を置く返品商品管理会社(returns-management company)のゴーTRG(goTRG)社のブランド・マーケティング責任者のファラ・アレクサンダー(Fara Alexander)は言った。彼女以外にも、何千人もの人々がリバース・サプライ・チェーン(reverse supply chain)として知られ急速に進化している業界に身を投じています。しかし、ほとんどの人は、この業界のことを全く知らないでしょう。存在していることすら知らないでしょう。