衝撃!アメリカの小売業で年間に返品される金額合計が1兆ドルに迫る!日本の国家予算より多くない?( ^ω^)

3.返品商品処理という業界のすそ野は広い

 3年前、カナダのテレビ番組「マーケットプレイス(Marketplac)」のプロデューサーが、アマゾン・カナダで靴、おむつ、鉄道模型、コーヒーメーカー、プリンター、その他いくつかの商品を購入した。それぞれの商品の中にGPS追跡装置(G.P.S. tracking device)を隠し、すべて返品し、その後どうなるかを調べた。いくつかの商品はトラックで何百マイルも移動し、途中で倉庫や返品処理施設に立ち寄った。最終的な処分は不明だった。新品の女性用バックパックは、廃棄物処理センターに運ばれ、埋立地に向かう途中だった。この番組では、製品を破壊する施設の従業員との会話をこっそりと録音していた。トラック1台分のアマゾンに返品された商品を受け取り、すべてが粉砕していた。表向きはリサイクルのためにシュレッダーにかけていると説明しているが、ゴチャ混ぜにしてシュレッドしている。おそらく、ほとんどはリサイクルされていない。

 お金をその辺で落とせば、誰かが拾ってくれる。リターン・ロジスティクス協会のカンファレンス開催期間中に、私は暇を見つけてリクイディティ・サービス(Liquidity Services:ワシントンDCに本社を置くオンライン・オークションを行う企業)社の幹部2人と30分ほど話をした。同社は、ウェブサイトによれば、あらゆる種類の企業にサーキュラー・コマース(circular commerce :循環型小売)ソリューションを提供する企業である。あらゆるアイテムをさまざまな状態で世界中で販売しているという。同社の最高商務責任者(chief commercial officer)のジョン・ダウント(John Daunt)は言った、「中古品を売っているイメージがあるかもしれませんが、想像以上に多くのことができます。」と。同社は、北米で巨大倉庫型施設を8箇所運営している。ニューヨークに最も近い施設はペンシルベニア州ピットストン(Pittston)にあり、アマゾン、ホーム・デポ(Home Depot)、レノックス(Lennox)、ニーマン・マーカス(Neiman Marcus, PepsiCo)、ペプシコ(PepsiCo)、その他無数の企業が所有する配送施設や返品施設が集積している地区にある。ネットショッピングの台頭は、巨大で低く平らな屋根の金属構造物を建設する人々にとって非常に好都合だった。ピットストンの物流施設集積地区にロウズ(Lowe’s)が所有する2つの巨大倉庫がある。この2棟の屋根の下には50エーカー(20万平米)以上の敷地があり、さらにトラックヤード(loading dock)とセミトレーラー数百台分の駐車スペースがある。現在、同様の物流施設集積地区は全米各地にある。いずれも高速道路や空港へのアクセスが容易な場所にある。さらに多くの施設が建設中である。

 返品商品処理業者にとって、利益を上げられるかどうかは、扱う品々が妥当な価格で再び売れるかどうか、売れる際に人の手が必要かどうかを素早く判断できるかどうかにかかっている。リクイディティ・サービス社のような企業では、返品された品々の仕分作業の自動化もしくは半自動化が進んでいる。修理が簡単なものは修理され、電子機器からはデータが消去され、販売可能な物のみが見込み客に提供される。「とにかくたくさんの返品商品を受け入れることです。それと、いかにそれらの転売先を見つけるかが重要です。転売業者が更に川下に商品を流通させます。個人商店や再販業者などです。」と、ダウントは言う。「トラック単位で大量に販売することがほとんどですが、パレット単位で販売することもあります。また、消費者に直接販売する手段もあります。ネットで落札した商品を当社の施設まで引き取りに来てもらうこともあります」。

 今すぐリクイディティ・サービス社のウェブサイトにバイヤーとして登録すれば、誰でも数百のオークションに入札することができる。私も登録した。入札はしなかったが、どんなものがオークションに出ているかを調べた。興味深く朝の一時を過ごした。スポーツ関連のアマゾンの返品商品でパレット2枚分、重量654ポンド(297キロ)分が売りに出ていた。中身は、ペレット銃(pellet gun)7丁、透明ビニール傘(clear-plastic umbrella)6本、かなりの量の各種サンドバッグ(punching bag)とパンチングボール(punching ball)、おもちゃのライトセーバー(double-bladed lightsabre toy)1本、ミニ・バスケットボール・リング(mini basketball hoop)1個、ヨガマット(yoga mats)8枚、ミノー・トラップ(minnow trap)1個、屋内用トランポリン(indoor exercise trampoline)1個、ハイキング・ポール(hiking pole)1組、キックボクシング用防具(kickboxing shield)1式、車の冷蔵庫(car refrigerator,)、ホバーボード(hoverboard)2台(1台はブルートゥース付き、1台はなし)、縄跳びラック(jump-rope rack)1個、矢筒1個分のクロスボウの矢(quiver’s worth of crossbow bolt)、サイフォンポンプ付きの14ガロンの赤いプラスチック製ガソリン容器(red plastic gas can with a siphon pump)1個、バドミントンラケット(badminton racquet)4本セット1個、マウンテンバイクのハンドルバー(mountain-bike handlebar)1本。全部で114点あり、リクイディティ・サービス社はそれらの元の小売価格合計は7,576ドルと見積もっていた。最終的には50件の入札があった。落札者は925ドルを支払った。送料は別である。どの入札者も元の小売価格1ドルに対して15セント以上の値は付けなかった。15セントを提示していれば落札できた。安いように思えるが、その理由は、何の保証も無く、機能しないアイテムがあるかもしれないからだ。返品された品物は、破損していたり、へこんでいたり、傷がついていたり、動作しないことも多く、見た目は問題無いものでも、部品や付属品が欠けていることがある。

 トラック1台分の女性用ブランド靴がオークションにかけられていた。重量4トン強の返品商品だった。すべて箱入りで、多くは新品同様だった。リクイディティ・サービス社の推定では元の小売価格合計は81,700ドルだった。そのオークションは、私を含めて250人の買い手が見ていたにもかかわらず、入札がないまま終了した。この結果を見て、リバース・ロジスティクス協会の会員の1人が言っていたことを思い出した。アパレル製品の返品は「悪夢(a nightmare)」でしかないらしい。衣料品を売り捌くのは難しい。ファッションは流行り廃りが早い。商品は一点限りのものが多い。

 ラスベガスから帰宅してから調べた。自宅からそれほど遠くないところに、大量のアパレル返品商品、在庫切れの衣料品、過剰在庫を処理する企業の1つがある。それは、N.E.J.という企業で、30年以上の歴史がある。同社の本社はコネチカット州ビーコンフォールズ(Beacon Falls)に置かれている。ビーコンフォールズは、100年前はゴム靴の製造が盛んな古い工業都市であった。「アパレル商品は野菜と同じです。」と、同社のオーナーのエド・マスコロ(Ed Mascolo)は私を案内しながら言った。「すぐに鮮度が落ちてしまうんだ」。

 同社のビジネス成功の鍵は、「正確な予測能力に支えられた高速大量処理能力」にある、とマスコロは言う。N.E.J.は、不要になった商品を買い取ってそれを再販するということはしていない。主に大手小売業者と契約し、返品商品や過剰在庫を大量に受け入れ、それをアソートし直したり、再分類したり、再梱包して、アウトレットやその他の二次流通に出荷している。私が訪れた日、200人ほどの作業員がゲイロード(Gaylords)と呼ばれるパレットサイズの輸送用コンテナを開け、中身を仕分けして、分類していくつかの大型カゴ台車に入れていた。他の場所では、アソート、仕分け、折り畳み、袋詰め、ハンガー掛け、箱詰めをしていた。また、持ち込まれたばかりの商品のラベルを剥がしている者もいた。消せないマーカーで値札に黒い線を引いたり、大きな点を付けたりしていた。返品できない商品と分かるようにしている。

 6年前にマスコロはアパレル業界について十分に学んだと判断し、アパレル業界に参入した。N.E.J.は、ビルズ・カーキ(Bills Khakis)という倒産したアメリカのアパレル企業を買収し、復活させた。同社は、ズボン、シャツ、下着などを販売している。すべてアメリカ製である。「ズボンのレングスは0.5インチ(1.3センチ)刻みにしている。」と、彼は言った。「昔ながらのズボンなんだ。ポケットが大きく、ベルトループの数が多く、股上(rise)が深いんだよ。当社のメイン顧客は50〜75歳で、保守的な服装を好む男性なんだ」。私が彼と会った時、マスコロはビルズ・カーキの5ポケットのツイルカーキパンツ(225ドル)とビルズ・カーキの茶色のレザーベルト(98ドル)を身に着けていた。私は彼にビルズ・カーキの返品ポリシーを聞いた。

「何でも返品OKだよ。」と、彼は言った。