The Trump Veepstakes Has Begun
トランプの副大統領候補選びが始まった
An unseemly crowd of would-be V.P.s has been campaigning in Trump’s wake, generating a phantasmagoria of maga abasement—rich in ambition, short on shame.
多くの副大統領候補志願者が、トランプ詣でに余念がない。なりふり構わず MAGA 陣営に加わろうとする様は、野心が見え見えで、恥も外聞もない。
By Amy Davidson Sorkin January 28, 2024
「法と秩序を回復し、我が国を結束させる大統領が必要だ!」とのティム・スコット( Tim Scott )上院議員(サウスカロライナ州選出)は、先週ニューハンプシャー州コンコードで開かれた予備選前の集会で訴えかけた。「ドナルド・トランプが必要だ!」。まもなく、ドナルド・トランプは、よほど番狂わせが起きない限り、副大統領候補を決めるだろう。つい最近まで共和党の候補者指名争いに名を連ねていたスコットは、そのことをよく理解している。上院で唯一の黒人の共和党員であることが彼のアピール点でもある。自らが副大統領候補に相応しいと考えている人物は彼だけではない。見苦しいにも程があるのだが、多くの副大統領候補希望者が、トランプ詣でをしている。彼の尻を追っかけ回して必死にアピール合戦を繰り広げている。なりふり構わず MAGA 陣営に加わろうとする様は、あからさまな野心が見え、恥の意識は微塵もないようである。
ちょっと前までは、著名な共和党議員でトランプの相棒になることを拒まない者はいないと思われていた。前回の大統領選の副大統領候補はマイク・ペンス( Mike Pence )であった。ペンスは、トランプからの選挙結果を覆せとの指示を拒否したため、危害を加えると脅された。だから、この地位に就きたい者など誰もいないと考えられていた。しかし、現時点では副大統領候補の志願者リストには、多くの名前が載っている。MAGA の熱烈信奉者に加え、複数の知事や上院議員や下院議員が含まれている。ドナルド・トランプ・ジュニアがニュースサイトのニュースマックス( Newsmax )に語ったのだが、タッカー・カールソン( Tucker Carlson:FOX ニュースの司会者)も「候補の内の 1 人である」という。下院共和党会議の議長であるエリス・ステファニック( Elise Stefanik )は、「将来のトランプ政権で、どのような立場であれ奉仕できることを光栄に思う」と語っている。同じようなことを言う者ばかりである。アリゾナ州のカリ・レイク( Kari Lake:2024 年の上院議員選挙に立候補予定)は、前大統領のためなら「割れたガラスの上でも這いずり回る」と宣言した。AP 通信の報道によれば、現職上院議員(訳者注:49 人しかいない)の内、30 人がトランプ支持であるという。副大統領候補の座を巡って激しい争いがあるという事実は、共和党内でトランプ支持が広まっていることを裏付けるものである。
大統領選挙があると必ず副大統領候補者争いが発生するわけだが、今回の大統領選では明らかに通常とは異なることがある。その 1つは、その争いが早い時点で起こっていることである。スーパーチューズデー(予備選挙・党員集会が集中する 3 月第 2 火曜日)はまだ 1 カ月以上先である。1 月下旬に、トランプは副大統領候補争いを煽るような発言をした。「私には好ましいと思っている人物がいる。」と、トランプはフォックス・ニュースの司会者のブレット・ベイアー( Bret Baier )に言った。「その人物を選ぶ可能性は 25% である」。彼はこの争いを傍目で見て楽しんでいるようである。また自分に副大統領候補を決める権力があることが嬉しくてたまらないようでもある。そんな中でも彼を激怒させていることがある。それは、前サウスカロライナ州知事のニッキー・ヘイリーがニューハンプシャー州の予備選で 2 位になったのに撤退しないことである。先週、彼はトゥルース・ソーシャル( Truth Social:トランプ専用のソーシャルメディア)で、ヘイリーに鳥の脳
( Birdbrain )というあだ名をつけて侮辱した上で、「ヘイリーに資金提供した者をトランプ陣営は永遠に許さない」と発表した。今回の副大統領候補争いは、トランプ陣営の内輪の争いでしかない。
共和党の副大統領候補争いでは、もう 1 つ、奇妙な点がある。トランプは 4 つの刑事事件で起訴されており、それとは別に、連邦最高裁は 2 月 8 日に彼に出馬資格が無いとしたコロラド州最高裁の判断の是非を審議すべく口頭弁論を開く。これらの案件は、副大統領候補の役割について重大な問題を提起するものである。トランプに出馬の資格が無いと判断された場合、彼が選任した副大統領候補が繰り上がって大統領選指名候補となるのか、あるいは有罪判決を受けながらも彼が当選した場合はどうなるのか、現時点で見えていないことも多い。現時点では、共和党はトランプ支持で結束しているように見えるが、副大統領候補争いが激しいことで党内にしこりが残る可能性もある。両党にとっては不確実なことが多く、情勢が読みづらい状況が続く。 トランプが 77 歳でジョー・バイデンが 81 歳と高齢であるのも不確実性を高めている。先週、ヘイリーは、もしトランプが大統領候補に指名されたら支持するか否かを聞かれた。彼女は、支持すると答えた。理由を聞かれ、「カマラ・ハリス( Kamala Harris )が大統領になるのだけは見たくない。」と答えた。
ヘイリーはニューハンプシャー州の予備選の数日前に、「私は副大統領にはならない。そんなことは全く考えていない。」と言った。あくまで大統領を目指すという建前から出た言葉だと思われるが、現実的に見ても彼女がトランプに選ばれて副大統領候補になる可能性は無い。ニューハンプシャー州の集会では、トランプがスコットに「本当はヘイリーが大嫌いなんだろ?」と尋ねると、スコットは「私はあなたを尊敬しているいるだけだ!」と言った。スコットは、かつてヘイリーが州知事時代に上院議員に指名されたわけで、このやり取りはトランプがヘイリーを毛嫌いしていることを示すものである。同様に、ロン・デサンティスも現実的には副大統領候補になる可能性は無いだろう。なぜなら、彼はトランプと同様にフロリダ州に住民登録があるからである。彼が副大統領候補になると憲法の奇妙な規定により、フロリダの選挙人は両方には投票できなくなってしまう。デサンティスはヘイリーと同様、おそらく 2028 年の大統領選を見据えているのだろう。バイロン・ドナルズ( Byron Donalds )下院議員も同様にフロリダ州に住民票があるという足かせがあるが、副大統領候補になるつもりはあるかと尋ねられた際に、「指名されて断る者などいない。」と答えた。
副大統領候補となる可能性のある者にとって重要なのは、「やり過ぎる( overdoing it )」ことなく「トランプへの忠誠心 ( fealty to Trump )」を示すことだとポリティコ( Politico:政治に特化したニュースメディア )は見ている。トランプが 「やり過ぎ 」のハードルをどこに置いているのかは定かではない。ペンスは 2020 年の大統領選の結果に疑義を呈したが、それだけでは十分ではなかったようである。ドナルド・トランプ・ジュニアが副大統領候補として名前を挙げた 1 人であるオハイオ州選出のJ・D・バンス( J. D. Vance )上院議員がニューハンプシャー州の集会で行ったように、1 月 6 日の真実がアメリカ国民に隠されていると主張する必要があるのかもしれない。また、バンスは、トランプの法的問題を「失敗した大統領を守るための見せかけの起訴 」であると主張している。おそらく、今後、共和党副大統領候補になろうとしている者たちは、いずれもトランプが起訴されている件を非難するだろう。前回の大統領選の結果にも疑義を呈するだろう。ステファニックは、1 月 6 日の行動で刑事訴追された人たちを「人質 」と呼んで、トランプに媚びを売るのに余念がない。現時点では、彼女は副大統領候補の最有力候補と見られている。ニューハンプシャー州での共同会見で、トランプは先月の下院公聴会での彼女の発言を賞賛していた。彼女自身がハーバード大学出身でありながら、反ユダヤ主義を明確に非難しなかった同大のゲイ学長を鋭く追及したからである。
世論調査から判断すると、大統領選は接戦になりそうである。副大統領候補の人選が重要になってくる可能性もある。候補によって、たとえば郊外に住む主婦の得票が増えるとか、黒人男性の支持が得られるという違いがもたらされる可能性もある。副大統領候補になるためのアピール合戦は凄まじいものがあるが、そのスタイルは各人各様である。アーカンソー州知事のサラ・ハッカビー・サンダース( Sarah Huckabee Sanders )からは繊細さが感じられる。彼女は、副大統領候補者リストに名を連ねたことを聞かれると、「今の自分の仕事が大好きである」とだけ答え、あからさまな欲望を上手く隠していた。ナンシー・メイス( Nancy Mace )下院議員は取り澄ましたような態度を見せて上品さを出そうと必死である。シャーラマーニュ・タ・ゴッド( Charlamagne tha God:ラジオパーソナリティ)に副大統領候補になる気はあるかと聞かれて、「興味深い」とだけ語った。サウスダコタ州のクリスティ・ノーム( Kristi Noem )知事は熱意を前面に打ち出している。彼女は同様のことを聞かれて、「すぐにでも」と答えた。ノースダコタ州のダグ・バーガム( Doug Burgum )知事のスタイルもノームと同様である。残念ながら、誰が共和党の副大統領候補に選ばれたとしても、それほど違いはない。いずれもトランプの暴走を抑制しようとは考えていないからである。
トランプの副大統領候補選びが続いているわけだが、胸糞悪いような場面もたびたび見られる。例えば、ニューハンプシャー州で勝利後の演説で、トランプは、陰謀論を唱える実業家で直近で大統領候補指名争いから撤退したヴィヴェク・ラマスワミに対し前に出て発言するよう命令していた。馬鹿にしたような口調であった。ラマスワミは撤退後にトランプ支持に転じたのだが、まるで玩具のように扱われたのである。 「 1 分以内だ!やってみろよ、ヴィヴェク!」とトランプが指示すると、ラマスワミはなんとか義務を果たそうとし、矢継ぎ早に発言した。短い時間の中で、バイデンのウクライナ支援を批判し、ヘイリーのアメリカ・ファーストではない姿勢を批判した。また、ヘイリー支持者について、「彼らが望んでいることは、最も起こってはいけない醜いことである」と主張した。醜いこととは何であろうか?明確にはされなかった。けれどもトランプは、それを見て嬉しそうだった。その数分後、トランプは同じく壇上にいたスコットを小間使のように扱っていた。自分の写真を撮れと命令していた。
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以上
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