侮れないトルコ製ドローンの実力!バイラクタルTB2投入でウクライナの戦況は一変!精密空爆可能な上に安価!

Annals of War May 16, 2022 Issue

The Turkish Drone That Changed the Nature of Warfare
トルコ製ドローンが戦況を激変させた

The Bayraktar TB2 has brought precision air-strike capabilities to Ukraine and other countries. It’s also a diplomatic tool, enabling Turkey’s rise.
バイラクタルTB2によって、ウクライナなどの国は精密空爆が可能になりました。バイラクタルTB2を欲する国は多く、トルコの外交力も高まっています。

By Stephen Witt  May 9, 2022

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 2月末、ウクライナ軍総司令官ヴァレリー・ザルジニーがFacebookに動画を投稿しました。ロシア軍の車列がケルソン市に近づいていく様子を上空からとらえたものでした。数日前からウクライナに侵攻しているロシア軍にとって、ドニエプル川河口に位置し造船業が集積しているケルソンは、戦略上重要な地点でした。その動画を見ていると、自動目標捕捉システムがロシア軍の車列の中央の車両をロックオンし、その数秒後にその車両は爆破され、勢いよく火柱が吹き上がっていました。画面には、「思い知れ!我が軍のバイラクタルTB2の威力を!ようこそ、地獄へ!」というキャプションがザルジニーによって付けられていました。

 バイラクタルTB2は、角度のついた逆V字型の翼を持ち、推力をテールブームにある内燃機関から得るグレーで平ぺったい無人航空機(UAV)です。レーザー誘導爆弾を搭載し、平ボディトラックで運べるほど小さい上に、コストはアメリカ製やイスラエル製の同種の無人機と比べると数分の一ほどです。設計者のセルチュク・バイラクタルは、トルコの自動車部品製造メーカー創業者の息子です。そのメーカーは、今では世界有数の兵器製造メーカーとなりました。ウクライナでは、バイラクタルという名は既に伝説となっており、キエフ動物園のキツネザルの赤ちゃんにその名前が付けられました。また、バイラクタルを題材にしたフォークソングも作られました。「バイラクタルは、ロシアの盗賊を亡き者にする!」と歌っています。

 2016年4月に、バイラクタルTB2は初めて実戦に投入されました。それ以来、少なくとも13カ国に販売されました。それによって発展途上国でも精密空爆を実施することが可能になりました。いくつかの戦争においては、その導入によって形勢が逆転したこともありました。2020年のアゼルバイジャンとアルメニアによるナゴルノ・カラバフ紛争においては、アゼルバイジャンの独裁者イラム・アリエフがバイラクタルTB2を使いました。バイラクタルTB2が敵軍の車列や部隊を爆撃したのですが、その様子は首都バクーのビルの電光掲示板に映し出されました。

 私は、3月にバイラクタルとビデオ通話で話をしました。彼は、会社の本社があるイスタンブールにいました。会社の名前はバイカー・テクノロジーズです。2,000人以上の従業員を抱えています。ウクライナでバイラクタルTB2が使用されていることについて尋ねると、彼は言いました、「TB2は、世界で最も進んだ防空システムを掻い潜り、多くの装甲車両を破壊しています。想定通りの働きをしています。」と。バイラクタルは42歳です。目尻が下がり、穏やかな目つきです。鼻筋が少し曲がっています。透明なプラスチックの台に載せたいくつもの新型ドローンの模型を、誇らしげに私に見せてくれました。少しオタクっぽく見えました。「当社の全てのドローンの開発に、私は携わってきました。自ら操縦テストもしています。私は、ドローンを開発することがとても好きなんです。」と彼は私に言いました。バイラクタルは、ツイッターのフォロワーが200万人を超えています。バイラクタルは、自身のアカウントを使って、若者への教育活動を推進したり、トルコの殉教者を称えたり、新しい航空機のデザインの写真をアップしたりしています。ジェノバ大学の国際関係研究者のフェデリコ・ドネリは私に言いました、「トルコには彼のことをイーロン・マスクのように考えている人も少なくありません。」と。

 2016年5月、バイラクタルはトルコの大統領であるレジェップ・タイップ・エルドアンの末娘のスュメイ・エルドアンと結婚しました。エルドアン大統領は、政教分離を国是とするトルコにあって、親イスラム・反世俗主義を前面に打ち出して、保守層や中・低所得者層からの支持が厚いようです。アナリストのスヴァンテ・コーネルは、エルドアン大統領がトルコという国をイスラム世界を牽引するような先進工業国に導くことを期待していると記していました。トルコの軍需産業は、過去20年間で10倍に成長し、現在では同国軍の装備類のほとんどは国内で製造されています。トルコの元外交官アルパー・コシュクンは、私に言いました、「バイラクタルTB2は、著しい躍進を遂げているトルコの防衛産業の象徴的存在である。」と。

 トルコは、イラン、イラク、シリア、アルメニア、ジョージア、EUと国境を接しています。また、黒海を隔ててロシアと向き合っています。ドネリは、トルコ周辺では地域独特の複雑で不安定な政治情勢が続いており、第一次世界大戦前のヨーロッパを彷彿とさせると言っていました。ドネリは、「バイラクタルは天才で、トルコの歴史の流れを変えることができる。」と言っていました。

 エルドアンは2003年から権力を維持し続けています。この間、彼は、司法機関を掌握し、報道機関への検閲体制を確立し、トルコ憲法を改正し、女性の社会進出を制限しました。エルドアン政権に批判的なジャーナリストの多くが、野球のバットや鉄棒で殴打されました。また、エルドアン政権に敵対的な活動家の何人もが、収監され禁固数十年の判決を言い渡されました。しかし、トルコ経済は停滞しており、過去12カ月間のインフレ率は70%に達しました。2019年、エルドアン率いる公正発展党は、1990年代以降ずっと勝利していたイスタンブール市長戦で敗北を喫しました。バイラクタルTB2の名声は非常に強大ですので、エルドアン大統領はしばしばその成功を引き合いに出して、トルコには輝かしい未来が待っていると訴求してきました。バイラクタルは私に言いました、「現代において、私たちの生活における最大の変化は、テクノロジーの進化によってもたらされています。つまり、テクノロジーを進化させる者が社会の変化を作り出しているのです。」と。