侮れないトルコ製ドローンの実力!バイラクタルTB2投入でウクライナの戦況は一変!精密空爆可能な上に安価!

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 昨年10月、ウクライナはキエフ郊外にバイカー・テクノロジーズ社の無人飛行機の組立工場を建設中であると発表しました。その直後に、ウクライナはドンバス東部の紛争地域でバイラクタルTB2が敵の砲兵隊を攻撃している映像を公開しました。ウクライナの無人飛行機による作戦を統括していた空軍大佐は、安全保障上の懸念を理由に身分を明かしませんでしたが、2019年にトルコ西部にあるバイカー・テクノロジーズ社の施設に出向き、3カ月間にわたって訓練を受けたと言っていました。その大佐は、米国ワシントンDCを拠点とするニュースWebサイトのAl-Monitorのインタービューを受けた際に、「私はそこがとても気に入りました。」と語っていました。

 「バイラクタルTB2や米国製対戦車ミサイルのジャベリンのように最新の強力な兵器を導入しても、ロシアに侵略を思い止まらせるという効果はあまり期待できません。むしろ、侵略の脅威が増す可能性の方が高いでしょう。」と、軍事評論家のアーロン・スタインは、昨年12月にブログに投稿していました。スタインが予見していたように、今年2月になってロシアは侵攻を開始しました。

 ロシア軍が侵攻を開始したばかりの頃は、まるでナゴルノ・カラバフ紛争の再現のようでした。公開されている映像を見ると、バイラクタルTB2が少なくとも10基のロシア軍のミサイル砲台を破壊していました。また、ロシア軍の輸送車両を攻撃してロシアの補給体制を混乱させていました。しかし、ここ数週間は、攻撃映像の公開が遅くなっています。安全保障上の懸念が理由で公開が遅くなっているのかもしれませんが、ひょとするとロシア軍がTB2の攻撃に対処する能力を改善した可能性もあります。それで、TB2の優位性が無くなってしまったのかもしれません。TB2は、戦闘機には対抗する能力はありませんし、ロシア軍は侵攻開始前に無人飛行機に対処する訓練を実施していました。3月上旬にウクライナ当局は、バイカー・テクノロジーズ社から新たに兵器類を受け取ったと発表しました。3月末までにロシアが公表した数値を集計すると、ロシア軍の発表ですので真偽の程は定かではないものの合計39機のTB2を撃墜されたことになっています。39機というと、ウクライナ軍の保有していたTB2のほとんどだと思われます。ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、当初はバイラクタルTB2の華々しい戦果をしきりに喧伝していました。しかし、4月になるとそうしたことはしなくなりました。4月にキエフの地下鉄駅で行った記者会見では、彼はTB2の重要性を強調しませんでした。彼は言いました、「バイラクタルTB2は、他の兵器類と同様に非常に有用です。しかし、率直に言って、最新兵器を揃えただけでこの戦争に勝てるわけではないのです。そもそもこの戦争は容易なものではないのです。無人攻撃機は役に立つが、形勢を左右するようなものではないのです。」と。しかし、その2週間前にロシアの駐トルコ大使のアレクセイ・ヤークホフが、トルコがウクライナにTB2等を追加で売却したことに抗議していたわけですから、ロシアにとってにTB2は大きな脅威であったと思われます。ヤークホフは、トルコ政府に対して正式に抗議しました。彼は言いました、「トルコが納入した無人爆撃機がロシア軍の兵士を殺しているのだから、『企業間の純粋なビジネスであり、問題ない。』という説明は通用しない。」と。

 私がバイラクタルと話をした時、彼はロシアの行動を非難しましたが、軍事作戦の詳細についての言及は避けました。彼は言いました、「私は、両国から全てのリスクが取り除かれることを望んでいます。また、貧しいウクライナの人々が傷つくのを目にすることは、私にとってはとても大きな悲しみです。それを看過してしまうと、私は最後の審判の日に責任を取らされることになるだろうと思わずにはいられません。」と。バイカー・テクノロジーズ社のソフトウェアは、顧客からのフィードバックに対応して常にアップグレードされ続けています。また、兵器類は常に改良を加えられ進化を続けています。バイカー・テクノロジーズ社の最新のドローンは、双発エンジンを搭載したバイラクタル・アキンジ(Akinci)です。4万フィート(約12キロ)まで上昇可能で、妨害電波対策も施されています。3月には、バイラクタルは、バイカー・テクノロジーズ社初のジェット機であるキジレルマ(Kizilelma)のプロトタイプの写真をツイッターに投稿しています。それは、外観がF16戦闘機に似ていますが、無人機で自立飛行をしますのでコックピットは有りません。(バイカー・テクノロジーズ社は続々と新兵器を開発していて、軍用車両だけでなく、人間サイズのクアッドコプター(4つの回転翼を用いる航空機)であるセゼリ(Cezeri)もあります。バイラクタルは、それを「空飛ぶ車」と呼んでいました。)

 バイカー・テクノロジーズ社は、自動操縦技術の研究にも多額の投資をしており、バイラクタルによれば、バイカー・テクノロジーズ社は自動操縦の分野では抜きん出た存在になりつつあるとのことでした。彼は言いました、「自動操縦技術は、当社が最も得意な分野です。ボタンを押すだけで、無人飛行機を飛び立たせて、タスクをこなさせて、戻って来させて着陸させることもできます。」と。自動操縦のドローンは、万が一通信回線が切断された場合でも、戻って来ることができるようになっているそうです。そのようなシステムを開発するためにバイラクタルは優秀なプログラマーをたくさん確保する必要があるのですが、エルドアン政権下では優秀な人材の国外流出が多いので、人材確保には苦戦しているそうです。カガプタイは言いました、「私も、優秀な人材で海外に移住してしまった人をたくさん知っています。そうした人たちは、トルコにいても明るい未来は無いと思っているようです。」と。

 バイラクラルは、ウクライナがロシア軍の侵攻に立ち向かっていることに言及しました。彼は、「圧政に屈することは、死ぬよりも悲惨なことである。」と言いました。しかし、私が彼と会って話をした1カ月後、トルコでは市民権運動家オスマン・カバラが、終身刑の判決を受けていました。アムネスティ・インターナショナルは、その裁判を茶番劇であるとして批判していました。あからさまなエルドアンによる司法介入があったようです。5月1日、ウクライナ国防省はバイラクタルTB2が攻撃する映像の公開を再開し、ロシアの巡視船2隻を攻撃する映像が公開されました。また、同日公開された別の映像では、破壊されたロシアの装甲車両を背景にして、数人のウクライナ兵が踊ったり、笑ったりしていました。彼らは、バイラクタルが主題のフォークソングを歌っていました。「バイラクタルは、ロシアの盗賊を亡き者にする!・・・」♦

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