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バイデンが公式に再出馬を表明したわけですが、控えめな感じがしましたが、それは非常に重大な決定でした。また、そうした意思表示が近々されるだろうと予測されていました。その場で、2021年1月6日にトランプ支持者が連邦議会議事堂を襲撃する衝撃的なシーンで始まる短い動画が流されたり、選挙資金調達のための宣伝があったり、バイデンの執務室に胸像が誇らしげに置かれている有名な労働指導者シーザー・チャベス(Cesar Chavez)の孫娘であるジュリー・チャベス・ロドリゲス(Julie Chávez Rodríguez)が選挙対策本部長に就任するという発表がありました。それほど盛り上がる内容ではありませんでした。また、動画の中で「この仕事を終わらせよう。あと4年間続けるぞ!」と訴えかけていました。
バイデンが正式に再出馬を宣言したことは、特に驚くようなものでもなく、特にタイミングが良かったわけでもありません。また、バイデンは政策については具体的なことにはほとんど言及しませんでした。特に印象的だったのは、バイデンが 「自由のために戦う」と述べたことでした。彼は、4年前に大統領選出馬を表明した際には「国家の魂を賭けた戦い(battle for the soul of the nation)」という有名な標語を掲げていました。トランプと戦うと宣言しつつも「自由」という語は使っていませんでした。今回使われた動画では、「自由」という言葉が5回登場しています。
「自由」という語は、何十年にもわたって共和党が標榜し続けてきた重要な価値観です。それが共和党のスピーチライターや広報担当が好き好んで使う言葉だったことを考えると、バイデンがその語を使ったことは注目に値します。1964年に、ロナルド・レーガン(Ronald Reagan)は、近現代史で最も有名な「選択のとき(A Time for Choosing)」というスピーチにおいて、アメリカの政治を「自由」と「安全」の間の選択であると再定義しました。そのスピーチは、何世代にもわたって反響を呼んできました。しかし、共和党内では、レーガン主義よりもトランプ主義が幅を利かしている状況に変わってしまいました。それで、共和党でも自由を信奉する気概は希薄になりつつあります。民主党は、トランプが任命した最高裁判事が人工妊娠中絶権を違憲としたことや、多くの赤い州(共和党が優勢な州)で検閲・禁書の事例が多発していることを非難しています。自由を信奉していた共和党が自由の擁護者ではないという矛盾を突く民主党の戦術は、かなり効果が出ているようです。民主党の世論調査専門家であるセリンダ・レイク(Celinda Lake)は、ニューヨーク・マガジン誌に、「自由は非常に強く試されている。」と、語っていました。「共和党のトランプ支持者に対する最も強い批判は、彼らがアメリカから自由を奪おうとしていることです。」
バイデンは再出馬を表明して選挙戦の戦い方を熟考しているところだと思いますが、共和党も同様に戦術を練っているところです。共和党はバイデンに非難を浴びせるだけでなく、バイデン以上に人気のない副大統領のカマラ・ハリス(Kamala Harris)にも非難を浴びせる方針のようです。早速、今週、ハリスに非難を浴びせていました。ニッキー・ヘイリー(Nikki Haley)は、ハリスが万が一大統領になったら、「恐ろしいことになる」とツイートしていていました。以前、ヘイリーは、フォックス・ニュースで、バイデンは今後5年以内で死ぬだろうから、2024年に彼を支持することはハリス大統領誕生を支持することに等しいというようなことを平然と言っていました。私は、ヘイリーほど無神経な政治家を見たことがありません。ヘイリーは言いました、「ジョー・バイデンに投票することは、ハリス大統領誕生を期待することと同じである。」と。
ワシントンでは、80歳のバイデン大統領が再出馬を決意した理由はハリスが立候補すると共和党候補に負ける可能性が高いからだという噂が流れています。あからさまにそう指摘するような人はいないわけですが、あながち間違いではないかもしれません。私が思うに、共和党関係者にも、民主党関係者にも、そう考えている者が多いようです。共和党のハリス批判が激しさを増しています。女性の生殖の自由を否定し、LGBTQの権利を擁護するディズニーを批判し、ジェンダーニュートラルなトイレに反対する立法に時間を費やす共和党の批判をハリスはかわすことができるのでしょうか?ドナルド・トランプの動向も注目ですが、共和党のハリス攻撃にも注目すべきです。♦
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