本日翻訳して紹介するのは、the New Yorker の November 9, 2020 Issueに 掲載の記事です。英題は”Why Trump Can’t Afford to Lose(なぜトランプは敗北を受け入れられないのか?)”。少し古いですが、先週投稿した記事「中国の対米輸出急増! コロナ禍も米中貿易摩擦も関係ない」に、トランプ前大統領が登場していて関連があると思ったからです。
そういえば、11月頃にトランプは選挙で敗れたら訴追を逃れるため国外逃亡するだろうという内容の記事があったことを思い出したからです。当時は、なるほどと思ったのですが、21年3月現在ではかなり予測されていたのとは違う状況になっています。
Jane Mayerによる記事です。彼女はthe New yorker誌のワシントンのチーフ特派員で文化、政治、安全保障などをカバーしています。 トランプは過去に弾劾1回、離婚2回、破産6回、性的暴行26回、民事訴訟4,000回を生き延びてきました。11月時点では大統領職にありましたので、訴追免除特権がありました。しかし、選挙で敗れればその特権が無くなり、いろいろ起訴されてしまうので選挙には絶対負けられなかったのです。しかし、負けました。記事中では、負けた場合は米国と犯人引渡条約を結んでいない国(ロシアとか)に逃亡すると予測されていました。実際、前回2016年の大統領選ではトランプ陣営はヒラリーに負けると分析していたので、大統領選翌日に飛び立つ逃亡用プライベートジェットを用意していました。
私がこの記事で読んで、トランプが大統領でなくなっても訴追されないのは、後任のバイデン大統領が前任者を裁く重荷に耐えられないのが理由なのかなと感じました。でも、ここは重荷を負って、きちんと裁いておくべきと思います。少なくとも脱税と租税回避と公職選挙法違反と性的暴行は立件すべきかなと。トランプは炭鉱のカナリアだったのです。ここできちんと対処しなければ、また危険な人物が出てくるぞという警告なのです。このままではトランプよりもっと強烈な人物「トランプ2.0」が現れる日も遠くないのかもしれません。
では、以下に和訳全文を掲載しますが、非常に長い文章ですので、要旨、その後に和訳全文の順で掲載します。
要旨
- 米の現職大統領には訴追免除特権がある。実際、米国で現職大統領が刑事事件で起訴されてことはない。
- トランプには関しては、12件以上の捜査が進行中。何とかして再選して訴追免除特権を維持したい。
- トランプは前回大統領選(2016年)では、敗北を予想していて、大統領選後に国外逃亡用できるようプライベートジェットを準備していた。
- トランプが大統領選で敗北しても、(民事訴訟は別として)何も裁かれない可能性も高い。
トランプ支持者の数は依然として多く、熱狂的であるため、バイデン政権も手を出しにくい。 - トランプは敗北した場合、「トランプ・ニュース・チャネル」のようなものを作る可能性も考えられた。非常に儲かる可能性があるビジネスである。
- トランプが敗戦した場合には、ブッシュ前大統領と違ってスムーズな引継ぎは期待できない。
(20年11月に記された記事の要約ですので、21年3月の現在では少し違和感があります。ご容赦ください)
その他知ったこと
- 現職大統領が自己恩赦を出来るかについて。出来ない。
ニクソンが自己恩赦をしたという認識を持っている方がいるが、誤りである。実際には、ニクソン辞任→フォードが後任の大統領に→フォード大統領がニクソンを恩赦 という形であった。 - アメリカでは訴訟費用が高額である。
クリントン大統領は8年間で訴訟費用に1,000万ドル以上をかけた。モニカ・ルインスキとの不適切な関係があったとはいえ、凄い額です。
以上
では、以下に和訳全文を掲載します。