トランプは敗北を受け入れられない!トランプは国外逃亡しないのか?

トランプが裁かれる可能性は?

イタリアの元首相シルヴィオ・ベルルスコーニが脱税で有罪判決を受けた後のように、米国の元大統領が投獄され刑罰として奉仕活動をするなんてことを想像するのは簡単なことではありません。しかし、トランプにとって法的追及のいくつかは深刻な脅威です。その中でもマンハッタン地検のバンス判事が追及している案件は特に脅威です。コーエンが有罪になった案件の検察の調書によると、コーエンは彼一人の手で違法行為をしたわけではありません。コーエンの主な罪状は、ポルノスターのストーミー・ダニエルズに情交したことの口止め料を支払ったことでした。コーエンの口止め工作には起訴されていない共謀者がいると検察は考えています。ニューヨーク州南部連邦地裁は、その共謀者を匿名で”individualー1(個人-1)”と呼び、それは2016年に米国大統領選挙選を見事に勝利させた人物であると主張していました。
 それは明らかにトランプのこと指していると思われました。しかし、この数十年、司法省は現職の大統領を起訴することはできないという判断を維持しているため、連邦地裁はコーエンを有罪判決を下したところで一連の捜査を終了しました。マンハッタン地検のバンス検事は、連邦地裁が捜査を止めた後も疑惑を追及しているようです。
 バンスの捜査の動向は、コーエンの判決文を見れば読み取ることができます。それによると、2016年の大統領選の最中に、コーエンはダニエルズに13万ドル支払うためにペーパーカンパニーを設立していました。トランプ・オーガナイゼーション(トランプ率いる複合企業体のこと)は、口止め料をの支払いを訴訟費用として偽装していました。しかし、連邦地裁は、ダニエルズを沈黙させるための支出は選挙資金法違反にあたると主張しました。ダニエルズの口を封じたことで、トランプは選挙に立候補できるようになりました。不利な事実を押さえつけました。また、連邦法で定められている献金限度額(個人の献金は1候補者に対し2,700ドルまで)をはるかに超える献金を集めることも出来ました。口止め料を訴訟費用と偽装したことは、選挙資金の収支記録の改ざんを禁止するニューヨーク州の法律に違反した可能性があります。このような犯罪は単独であれば通常は軽罪になりますが、それが脱税などの他の犯罪を助長するために犯されたものである場合、重罪になる可能性があります。コーエンの判決文では、「コーエンは”individual-1(個人1)と共謀し、その指示により行動した」という記述があります。トランプは激しくその主張を否定しています。
 マンハッタン地検が、ストーミー・ダニエルズの口止めの件以外のことも捜査しているのが明白になりました。バンスによる大陪審の捜査の内容は一切明かされていないが、とある消息筋から私が聞いた情報では、違法の可能性が高い自己取引についても強力な捜査がされているようです。8月には、マンハッタン地検は、トランプに個人的な納税記録と事業の納税記録を提出するよう求めることは合法であると提訴しました。現在、実施しているトランプ・オーガナイゼーションの広範囲で長期間の不法行為に対する捜査を進めるために必要だからです。検察は大陪審で何を調査しているかは明らかにしていませんが、脱税、保険金詐欺、金融取引に関する詐欺が含まれているだろうと報道されています。タイムズ誌の先日のトランプの納税記録に関する報道によれば、彼は長い間、所得税を払わなくて済むようにするために、積極的に、詐欺的な金融取引手法を取り入れていました。明らかになっている1例では、ヘアスタイリングのための7万ドルを経費計上しています。これは、通常、個人的な支出となり経費とは認められません。同時に、コーエンが昨年議会で行った証言によると、トランプは保険会社に損益計算書を提供しました。納税額を抑えるため損失が出ているように見えるものと、ビジネスを有利に進めるため利益を誇張しているものの2種類がありました。トランプの弁護団は一貫して納税記録の提出を拒否し、巡回裁判所と最高裁判所の召喚を拒否しています。トランプは不法な金融取引は一切していないと主張しています。そして、彼の納税記録を調べ上げようとすることは、「米国史上最悪の魔女狩り」であると非難しています。しかし、彼の弁護団は法廷では分の悪い状態が続いています。法廷闘争の準備や打合せが不足している可能性があります。地裁が撤退する可能性がないわけではありません。スカラムチのようなトランプを批判する者でさえ、大統領を刑務所に入れることは司法制度上無理であると信じています。しかし、とあるニューヨーク元市長が言っていますが、トランプが選挙で負けても勝ってもバンスやジェームズは捜査を続けると推測されます。もしもトランプが選挙に負けたからとか勝ったからといって捜査を止めるなんていうことをすれば、それこそ政治の介入があるという誤ったメッセージを発信することになってしまいます。
 有罪判決を得るには、地検はトランプが故意に詐欺に関与したことを証明する必要があります。私が話をした検察官は、それはとても難しいものであると言っていました。コーエンが指摘したように、トランプはほとんど文字を書くことはありませんし、電子メールやテキストも送信しません。もっと別な方法で意思を伝えています。また、現役の大統領を捜査することには様々な障壁もあります。しかし、検察官たちはコーエンと共謀していたことを既に明確にしました。コーエンは刑期3年を言い渡された後、ニューヨーク州オーティスビルの矯正施設で懲役刑に服しています。そこで、コーエンはマンハッタン地検から少なくとも4回以上の尋問を受けています(コーエンはパンデミックのため、既に釈放されています)。
 ワシントンDCにあるアメリカンエンタープライズ研究所の政治学者で、トランプ批判の急先鋒でもあるノーマン・オーンスタインは、次のように述べています。「地検がトランプの脱税に関して捜査を進めているのは間違いないでしょう。トランプの脱税は罰金刑で終わるレベルの犯罪ではないことは明確です。」と。フォーダム大学教授で国際法と政権移行時の法律問題に詳しいマーティン・フラハティも、同様に考えていて、「トランプは逮捕されてしかるべき犯罪を間違いなく犯している。」と言っています。
 現在、盛んに議論がされているのは、トランプがどのように対処されるべきかということです。あるいは、どのようにすれば政治家が悪事に手を染めなくすることが出来るかということです。フラハティは世界各国の政治家の犯罪とその捜査に関して詳しいのですが、犯罪を犯した者を刑務所送りにするということは犯罪抑止の効果が大きいと言います。しかしながら、フラハティはトランプは何の裁きも受けない可能性があると認識しています。それで、彼は言いました、「ウォーターゲート事件以来、政治家が犯罪を犯してもそれに見合った裁きを受けていないということは大きな問題です。どうせ裁かれないだろうという雰囲気がトランプのように恥知らずな行動をする者を増やしているのです。」と。
 けれども、トランプが何の裁きも受けない可能性は少なからずあります。ニュージャージー州の元司法長官のアン・ミルグラムは、バイデンは勝った場合に司法制度の公平性への信頼を損なう行動を避ける可能性があるし、現職大統領への訴追免除を根拠にトランプへの捜査が進まない可能性もあると言います。ミルグラムは、理想的には、連邦地裁ではなく、マンハッタン地検が刑事事件として処理するべきであると言います。何故なら、地検のバンスは、トランプ・オーガナイゼーションが本拠を置く市で民主的に選出された検察官であるからです。ミルグラムは言います、「バイデンが勝って新政権になっても、トランプへの捜査が全く進まない可能性が無いわけではありません。もしそうなれば、トランプは勝利を宣言して、彼の支持者の熱狂は冷めることはないでしょう。そして混乱した状況が続くでしょう。」と。