本日翻訳し紹介するのは The New Yorker の Web 版に 3 月 2 日に投稿された Julian Lucas のエッセイでタイトルは、”UNESCO’s Quest to Save the World’s Intangible Heritage”(ユネスコの無形遺産を保護する取り組み)となっています。
Julian Lucas はスタッフライターです。しばしば文化や IT 関連の記事を書いています。スニペットは、” For decades, the organization has maintained a system that protects everything from Ukrainian borscht to Jamaican reggae. But what does it mean to “safeguard” living culture?(何十年にもわたって、ユネスコはウクライナのボルシチからジャマイカのレゲエに至るまで、あらゆるものを保護するシステムを維持してきた。生きた文化を「守る」とは何を意味するのか?)となっています。
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一口メモ
今回翻訳したエッセイは、ユネスコに関するものでした。特に、無形文化遺産の保護に関するものです。文化遺産は、有形文化遺産と無形文化遺産の 2 つがあります。有形文化遺産は、文化的な価値がある建物や書物等です。私が知っているのは姫路城です。無形文化遺産は伝統や慣習などです。アイヌの踊りが登録された記憶がありますが、間違っているかもしれません。要するに私には、ユネスコの取り組みや世界遺産についての知識は全くありません。google で調べても、無形文化遺産につてはあまり詳細な内容は出てきません。日経新聞 Web 版で検索しても引っかるニュースはほとんどありません。こんな状況ですから、たぶん、ユネスコの活動や無形文化遺産について詳しい方は日本にはほとんどいないと思います。
さて、このエッセイを訳してユネスコの無形文化遺産の認定について分かったことがあります。ユネスコに自国の慣習とか伝統を推薦して無形文化遺産と認定してもらうには、顕著な普遍的価値があることを証明しなければならないとされています。しかし、無形文化遺産の価値は、推薦する国が決めれば良いことになっています。ですから、基本的には推薦したら、ほとんど却下されません。難易度的にはモンドセレクション金賞を獲得するくらい簡単です。でも、それで問題ないと思います。逆に、審査を厳しくして、自国が推薦した伝統や慣習が却下されたりしたら、頭にきますから。どこの国の委員が反対したか調べて、報復としてその国の推薦したものには反対するようになったりして、ギスギスしてしまいます。
しかし、問題もあります。緩い審査を逆手に取って、無茶苦茶な内容の推薦をしてくる国がいくつもあります。もっとも悪質なのは中国です。中国はウイグルの伝統音楽ムーカムを無形文化遺産に推薦しました。審査は緩いですから、登録されました。中国がウイグルの伝統音楽を無形文化遺産に推薦したと聞くと、中国がウイグル人の文化を尊重して保存することに注力しているようのかと思う方もいるでしょう。それが違うのです。中国は、ウイグル人のその伝統音楽を後世に伝承させないように弾圧しています。中国がウイグル人の伝統音楽としてユネスコに推薦して登録されたものは、全く別物なのです。ウイグル人固有の宗教色を排し、楽器はウイグル固有のものではなく中国伝統のものを使い、歌詞の内容は中国の体制を賛美するものに変えているのです。
ユネスコという国際機関に白々しくも虚偽の申請をする国があるということに驚かされます。そういう意味では、ユネスコの無形文化遺産の登録の仕組みが緩いことは問題があると思います。ユネスコが中国のウイグル人弾圧に期せずしてお墨付きを与えた形になってしまっています。性善説に則って緩いルールにしたら、中国やロシアがそこを突いてくるのは予想できたことだと思います。最低でもファクトチェックだけはするべきだと思いました(ユネスコはお金がないから出来ないのかもしれないが・・・)。
では、以下に和訳全文を掲載します。詳細は、和訳全文をご覧ください。