ワクチン・カウントダウン 意外と難度が高いワクチン開発後の工程

 本日もコロナワクチンに関する記事の和訳を投稿します。the New YorkerDecember 14, 2020 Issueに掲載。英題は、”Countdown to a Coronavirus Vaccine”(コロナワクチン・カウントダウン)です。ワクチンは開発するまでより、それ以降の工程の難易度が高いということが記されています。

 Carolyn Kormann記者による記事です。いよいよ日本でもワクチンが承認され接種が始まって、今後、多くの人に接種するのですが、実はそれって非常に難度が高いことなのです。そんなことが書かれている記事があったのを思い出しましたので、訳してみました。
 非常に長い文章ですので、最後に和訳全文を掲載しますが、先に要旨のみ記します。要旨は次のとおりです。

要旨

  1. 米国では2社のコロナワクチンが承認された(2020年12月時点)。
    モデルナ、ファイザー(アストラゼネカは治験やり直し中)
  2. 上2社のワクチンはいずれもmRNAワクチン
    mRNAワクチンは、米国立アレルギー感染症研究所副所長バーニー・グラハムとテキサス大学のジェイソン・マクレラン教授がMERS発生時に行った研究成果が生かされている。
  3. トランプ前大統領がワクチンは大統領選前に接種できると嘘の宣伝をしたことで、米国民の間にはコロナワクチンの開発は拙速に行われていてリスクが高いのではないかという懸念が広がってしまった。
  4. 上のような懸念を拭い去るため、ファイザーやモデルナなど有力製薬企業のCEOが連名で声明を出した。曰く、ワクチン研究・開発は純粋に科学的、医学的な見地から行われており、いかなる政治的圧力も入り込む余地は無い。
  5. 米国では、デモグラフィックス(人口動態)に合わせて被験者を集め、大規模な治験を行って、有効性と低リスクが確認されている。今後も大規模な追跡調査を続ける。有効で安全であると思われる。
  6. 感染拡大を防ぐには全国民の70%がワクチンを接種する必要がある。その難度は高い。
    ワクチンのサプライチェーンの構築、接種順位の決定、ワクチン忌避者への啓蒙等いずれも難度は高い。

その他、ワクチンについて知ったこと

  1. 新型コロナワクチンは2回の接種が必要。1回目で抗体を作れるようになり、2回目で作れる抗体の量を多くすることが出来る。1回目と2回目の投与の間にコロナウイルスに感染する可能性があるが、その場合も重症化する確率は低くなると推測される。
  2. ワクチンの有効性は、プラセボ(偽薬)を使ったランダム化比較試験によって検証されている。その試験開始後に被験者の中から感染者が出ると、ワクチンが効かないのではないかと思うのは間違い。感染者が本物のワクチンか偽薬(生理食塩水)かどちらを接種されていたかを調べることで、薬の有効率が判明する。逆に感染者が出ないと、有効率は判明しない(エボラ出血熱では、感染が自然に終息し感染者が出なかったため、ワクチンの有効性が証明できなかった)。
  3. アメリカでは、非白人のワクチン忌避者の割合が高い。それは過去に不幸な出来事(タスキーギ梅毒実験)があったことが原因である。

以上が要旨です。では、以下に和訳全文を掲載します。