ワクチンの開発、接種等の状況
数ヶ月もの間、ファイザー社とモデルナ社では数十万本分のワクチンが、米国とヨーロッパのいくつかの製造施設に留め置かれたままとなっていました。米疾病予防管理センターの推奨に基づき、米国では医療従事者や高齢者や慢性疾患のある人が、合計すると約2,000万人ほどですが、ワクチンを最初に接種されます。最終的には6億回分のワクチンが供給されるので、それを米国中に配送し隅々まで行き渡らせなければなりません。出来るだけ多くの人が確実にワクチンを2回接種できるようにしなければなりません。しかし、ワクチンを配送し配分するということの難易度は非常に高いのです。米国生物医学先端研究開発局の感染症研究の責任者であるロバート・ジョンソンが言うには、通常では配送体制の構築には5~6年かかるのですが、現在は何とか3カ月で構築するように取り組んでいる最中だそうです。配送業者6社と共同で取り組んでいます。
ファイザー社は2021年に世界で13億回分のワクチンを製造する予定です。しかし、そのワクチンは華氏マイナス94度(摂氏マイナス70度)で保管する必要があるため、配送体制を整えるのは非常に困難です。ファイザー社は、2ミリリットルのガラス容器にワクチン約5,000回分を閉じ込めてドライアイスを利用する輸送用コンテナを開発しました。コンテナは配送先に到着した後、一時保管庫として15日間機能します。1日2回ドライアイスを補充する必要があります。各コンテナには、位置と温度を追跡調査するためのGPS機能の付いた熱センサーが装備されています。ファイザー社の計画では、平均すると1日当り20便の貨物便を飛ばします。
モデルナ社の計画では、2021年に5億~10億回分のワクチンを製造する予定です。こちらのワクチンは、家庭の冷蔵庫の温度で30日間保管できるため、配送の難度は高くありません。モデルナ社の研究に携わっている医師ザックスは、モデルナ社が以前研究していたワクチンは華氏マイナス94度での保管が必要だったとのことです。ファイザー社の現在のワクチンの保管温度と同じです。ザックスによれば、そうなったのは全くの偶然だそうで、実際、両社はウイルス開発において一切協力や提携はしていません。
ファイザー社とモデルナ社のワクチンの治験の被験者は2年間は追跡調査される予定です。連邦政府のデータベースであるワクチン有害事象報告システムでは、すでにワクチン接種後の副作用についての監視を始めています。また、米疾病予防管理センターは、スマホを活用するv-safeと呼ばれるシステムを開発しました。そのシステムでは、ワクチンを初回に接種される2,000万人の健康状態の追跡調査が可能です。コロナウイルスとワクチンの治験を監督する部署のリーダーであるラリー・コーリー(ウイルス学者)は私に言いました、「ワクチンで長期的に副作用が出るということはほとんどありません。とはいえ、確実に安全だと分かるまで調査することは必須です。」と。
アストラゼネカ社は3番めにワクチンの緊急使用許可の申請をする会社だと思われています。アストラゼネカ社製造のワクチンは安価で保管も容易です。11月23日、同社は治験中のワクチンの有効率は平均すると70%であると発表しました。しかし、その結果はすぐにデータに疑義があるとして疑問視されました。同社が英国とブラジルで行った2つの異なる治験で収集したデータを組み合わせて分析していたことが問題視されました。また、治験で一部の被験者には1回目の投与の際に誤って予定量の半分のワクチンしか投与されませんでした。その被験者のグループでは、55歳以上の者は1人もいませんでしたが、ワクチンの有効率は90%でした。もう1つのはるかに大きな被験者グループでは、ワクチンは2回とも規定の量を投与されましが、ワクチンの有効率は62%でした。アストラゼネカ社の幹部の1人は、誤ってワクチンを半量しか投与しなかったことによって思いがけない発見があったようだと言いました。しかし、多くのワクチン研究者は、データの透明性が欠如しており、米国で承認される為にはさらなるデータの収集が必要であると見なしていました。12月初旬に、アストラゼネカ社の広報担当役員は、さらに追加で治験を行って、最もワクチンの有効率が高くなる投与量を突きとめる予定であるとの表明しました。