本日翻訳し紹介するのは、February 10, 2025, issue の誌面に掲載された Dhruv Khullar の寄稿文で、タイトルは、” Can the Human Body Endure a Voyage to Mars? “(人間の体は火星への旅に耐えられるか?)となっています。
Dhruv Khullar は、開業医で医科大学の准教授です。医療関係の記事を数多く寄稿しています。ときどき政治に関する記事も書いています。今回の記事のスニペットは、” In the coming years, an unprecedented number of people will leave planet Earth—but it’s becoming increasingly clear that deep space will make us sick.”(今後数年間で、前例のない人数が地球を離れることになるが、深宇宙が私たちを病気にすることがますます明らかになっている。)となっています。
さて、この記事のタイトルを読むと人間の身体が火星の環境に耐えられるか否かということが書かれているのかと思うわけですが、それはそんなに深く書かれていません。もっぱら書かれているのは、宇宙空間という微小重力で大気が無く放射線に晒された環境が人体に与える影響の大きさです。ちょっとタイトルのイメージと中身が違うということは留意しないといけません。しかしながら、内容は最後まで興味を失わず読み進めるものでした。
読んでなるほどと思ったのは、人間の身体は地球環境に最適化しているので、それ以外の環境で健康に長期間過ごすのは難しいということです。宇宙では酸素が無いわけですが、酸素を確保できたとしても2つの問題をクリアできません。
1つは重力の少なさです。重力が少ないと幅跳びで数十メートル飛べるかもしれませんが、人間の身体に様々な影響を及ぼします。脊柱が伸びてしまい、これは重大な問題を引き起こします。頭の重さを感じないから片頭痛が直るというわけでもないのです。また、脳の中身が重力が少ないと頭蓋内の上部に移動し、そこの液が圧迫され重大な問題を引き起こします。
もう1つは放射線です。大気が無いもしくは薄いと放射線は容赦なく人体に降り注ぎます。アホか、宇宙服が防いでくれるだろっと指摘する方もいると思うのですが、宇宙服は放射線を弾きません。宇宙では重力が無いから放射線を弾く重い宇宙服を着て活動してもそこそこ動けるわけです。だから重くても放射線を弾く宇宙服をもっていけば良いではないかと思うのですが、残念ながら宇宙船というのは大きければ大きいほど打ち上げる難度も高くなり故障も増えがちなので、とにかく荷物を少なく軽くする必要があるのです。
結論として、人間の身体は長期間宇宙で過ごすことはできないということです。最近では ISS (国際宇宙ステーション)で1年以上過ごす人がいたりするわけですが、あれはそれほど地球から離れていない低軌道を回っているのです。低軌道を離れて深宇宙へ行った者はアポロ計画のたった 24 人しかいないのです。それも約 50 年前のことで、期間はすべて 2 週間以下で、本当に行ったかどうか疑わしいところもあります。
火星までの距離は月の 140 倍です。途轍もなく遠いのです。だから、火星に生身の人間はたどり着けないでしょう。火星に星条旗を掲げると息巻いている大統領がおられますが、ロボットとかに立てもらうしかないでしょう。国際法上、ロボットが旗を掲げた場合、その国が所有権や影響力を主張できるかは微妙なところです(人間が掲げても同じだが)。旗自体はとてもなびくと思います。ただ、大気が薄くもの凄い強風ですから、固定するのは無理なのではと思います。
話がそれましたが、以下に和訳全文を掲載します。詳細は和訳全文をご覧ください。