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1970 年、オレゴン州フローレンス( Florence )の海岸にマッコウクジラの死骸が打ち上がった。それは巨大で、誰もその処理方法を知らなかった。最終的に、作業を担当していたオレゴン高速道路局は、ダイナマイトで死骸を破砕し吹き飛ばすというアイデアを思いついた。彼らは、海に吹き飛ばされなかった死骸の破片はカニやカモメが食べられるほど小さな破片に分解されるだろうと考えた。そのため、死骸の多くを海側に吹き飛ばすことを意図して 0.5 トンもの爆薬を仕掛けた。これはかなりの量である。多くの傍観者が爆発の様子を見ようと集まっていたが、死骸は小さな破片にはならなかった。腐敗した死骸の腐った脂肪が結構大きな塊となって雹のように降り注ぐ状態となった。「周囲に鯨の脂肪が落ちているのが分かった」と、現場にいた記者のポール・リンマン( Paul Linnman )はポピュラー・メカニクスマガジン( Popular Mechanics magazine )に語っている 。 「脂身は非常に密度が高く、指先ほどの大きさの脂身でも誰かの頭に当たれば致命傷となる。爆発音を聞いてすぐに道路の方を見たが、すぐに 2 度目の爆発音が聞こえ、コーヒーテーブルほどの大きさの脂身が 1 台の車をなぎ倒すのが見えた」。なお、この事件の動画は、1990 年にデイブ・バリーが記事を書いて初めて拡散されたものであるが、インターネット上で非常に注目を集めた。リンマンの無表情なテレビニュースナレーションもその動画の面白さを引き立たせていた。
愚かさの中にも喜びとユーモアはある。それは、数々の失敗動画や TV のリアリティ番組や映画” Dumb and Dumber ”(邦題:ジム・キャリーは Mr. ダマー)を思い浮かべるとわかる。意地悪である必要もない。フローレンスという町には現在、「爆発クジラ記念公園( Exploding Whale Memorial Park )」と呼ばれる屋外スペースがある。昨年は、「爆発クジラの日( Exploding Whale Day )」に先立つ 1 週間の祝賀行事の後、多くの人々が仮装してそこに集まった。オリジナルの拡散された動画を見ると、私はダイナマイト破砕計画を立案した技術者に共感してしまう。私も彼と同じで失敗の連続である。人は誰でも間違いを犯すものである。賢い人でも愚かなことをすることがある。私たちは誰もがしばしばクジラを爆破させているのである。重要なのは、二度と同じことをしないことである。
しかし、残念ながら、愚かさは必ずしも単純なものではない。理解するには絶妙なバランス感覚を必要とする概念である。賢くなるためには、自分の愚かさに気づく必要がある。それは、学ぶべきことがたくさんあることを思い出すためである。同時に、自分が愚かだと感じすぎて諦めたり、冷笑的になったり、賢いということの意味に幻滅したりしたくはない。同様に、世の中をうまく生きていくには、他人の愚かさを見抜く必要もある。しかし、人は一人では生きられないわけで誰かと交われば、愚かさは避けられず、愚かさは状況に依存するということも理解する必要がある。愚かさへの意識の高さには理想的なレベルがある。そのレベルを見つけ出して維持できれば、私たちは傲慢に陥ることもなく、前進を互いに促すことができる。それを見つけることは決して容易ではない。♦
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