8.5%UP!3月消費者物価指数40年ぶり高水準!インフレ軟着陸に向けたマクロ経済政策の舵取りは難化した?

QUESTION 2 :

 エコノミストのラリー・サマーズは、早くからインフレの危険性を警告していました。彼は、もう既に景気後退局面に入った可能性が高いと主張しています。あなたは、先週のコラムで彼のこれまでの主張を詳しく紹介していました。そこで、お聞きしたいのですが、今後どのような政策を実施する必要があると思いますか?景気後退局面に入ったのでしょうか?それは避けられるものなのでしょうか?

ANSWER 2 :

 インフレ率の上昇そのものが景気後退を引き起こすわけではありません。インフレ率の上昇は、労働力や原材料や資源等の供給量に対して経済が急速に成長しすぎていることを示していると理解すべきです。危険なのは、物価の急激な上昇を目にすることで、バイデン政権やFRBが経済にブレーキをかけようとする可能性があるということです。サマーズが強調していたのは、もしFRBが迅速にインフレを制御できなければ、思い切った行動に出る可能性があり、つまり非常に大幅な利上げに踏み切る可能性があるということでした。もし、そんなことをすれば景気は減速するだけでなく、深刻な不況に陥る危険性が高いでしょう。そうした状況に陥ったことが、1980年代前半にありました。FRBのこれまでの行動に瑕疵は無いとして擁護している人がほとんどのようです。おそらく、FRBには不況を引き起こすことなく経済を鎮静化させ、インフレ率を低下させるチャンスがまだ十分にあるでしょう。いわゆるソフトランディングですが、不可能なシナリオではありません。

 今後インフレが収束すると考えるか、それともさらにインフレが進むと考えるかは、現在のインフレ率の急上昇の原因をどのように解釈しているかによって大きく異なるような気がします。もし、あなたが、今回のインフレは世界規模のサプライチェーンの混乱など、新型コロナのパンデミックの影響による混乱が主な原因であると考えており、それらの問題は時間とともに解決されるだろうし、ウクライナ紛争もいずれ終結すると考えているならば、FRBが目標を達成するチャンスは十分にあると思うことでしょう。一方、あなたが、今回のインフレが供給力に対する過剰な需要の産物であり、それが米国経済の構造的なものになりつつあると考えるなら、FRBの見通しには懐疑的になるでしょう。つまり、インフレ率の急上昇の原因をどう解釈するかが大きなポイントになるわけです。私が先日書いたコラムで一番言いたかったことは、この点なのです。