サウジアラビアがイランとの外交関係の正常化に合意!何と仲介したのは中国!これはアメリカ外交の大失態なの?

Question 3

Question3
 最近の報道によれば、サウジアラビアはイスラエルとの国交の正常化を実現しようと努めており、その見返りとしてアメリカ政府に対して民生用核開発の支援を求めていると伝えられています。イスラエルは、イランを封じ込めるという表向きの目的のために、サウジアラビア以外のスンニ派の国(UAE、バーレーン、オマーン、カタール等)とかねてから接触を続けてきました。ですので、今回の2国の国交正常化をそれほど脅威とは思っていないでしょう。サウジアラビアは、イランとの国交正常化をしつつ、イスラエルとの関係も改善しようとしています。2つの目的は相反するように見えるのですが、両立可能なのでしょうか?

Answer
 確かに2つは相反します。それは疑いようがありません。イスラエルは、実は水面下で、アブラハム合意(Abraham Accords:元々はイスラエルとUAEとの平和条約で、その後バーレーン、スーダン、モロッコも加わった)を拡大して、サウジアラビアも含めることを検討していたようです。私の推測になりますが、イランはそうした動きがあるのを察知していたのでしょう。サウジアラビアがアブラハム合意に加わるような事態になるのはイランにとって脅威です。というのは、イランのこの地域での孤立が深まってしまうからです。サウジアラビアがイランと手を組むことと、同時にイスラエルとも手を組むことは、両立しえないように思えます。しかし、私が言いたいのは、サウジアラビアとイランは単に国交正常化に合意しただけであるということです。両国間の問題が全て解消するわけではありませんし、同盟関係になるわけでも無いのです。これも推測ですが、サウジアラビアとイランが国交正常化した一番の理由は、イエメン内戦の停戦を確実にしたいということだと思います。互いに相手国で大使館を再開することが目的ではなかったはずです。何と言っても、イランは、国境を隔てているとはいえ、イエメン北部を拠点とするシーア派の分派であるフーシ派に対して強い影響力を持っています。イエメンの問題を解決することはサウジアラビアにとって非常に重要なことです。ですので、この点ではイランの手を借りざるを得なかったのです。

 私は、今回の国交正常化で、イエメン内戦に関するサウジアラビアとイランの緊張関係が完全にほぐれるわけではないと思います。両国間には、それ以外にも意見が合わない問題がたくさん横たわっています。イラク情勢やシリア情勢やレバノン情勢や核合意の問題などです。それらは直ぐに解決されるものではありません。今回、非常に興味深かったのは、湾岸諸国の外交問題に中国が関与したことです。中国は宗教的な対立には全く興味がないでしょうし、全く当事者では無いわけですから、中国にどんな動機があったのかは不明です。しかし、中国の仲介によってイランの核問題で進展が見られるようなことがあれば、それは大いに賞賛されるべきことです。ノーベル賞級の貢献と言わざるを得ません。