春の園芸シーズン到来!種子カタログをめくって、野菜や花に関する蘊蓄(うんちく)を知るのは意外と楽しい!

4.在来品種の種子が見直されている

 最近では、古い在来品種の種子が見つけられて、新たに販売されることも珍しくありません。巷では在来品種の良さが見直されているようです。テリトリアル・シーズ社のカタログでは、あるイチゴが記されています、「マーシャル種(Marshall)は、125年以上前にマサチューセッツ州の庭で発見されました。非常に珍重され、開拓者たちが大陸を横断する際に西部にも運ばれました。マーシャル種は、アメリカ北西部に住処を見つけ、そこで繁栄し、その味の良さによって、ついにはワシントン州とオレゴン州の冷凍フルーツ産業全体に繁栄をもたらすこととなりました。そんなマーシャル種も現在ではほとんど栽培されていません。本当に災難に見舞われています。」と。今こそ、マーシャル種のストロベリーを救うべきです!カタログでは1株21.95 ドルとなっていますが、残念ながら、現在は売り切れ中です。かつてフェデコ(Fedco)社がカタログで紫色のブロッコリーを売るために反アパルトヘイト運動を持ち出したように、種子会社のカタログを見て種子を買う行為は政治的行為でもあります。1975年にミズーリ州に住む夫婦が、シード・セイバーズ・エクスチェンジ(Seed Savers Exchange:アイオワ州デコーラ近郊に拠点を置く非営利団体)を設立しました。最初は、祖先が1884年にバイエルン(Bavaria)から持ち込んだ2つの在来品種の種子だけを扱うところからスタートしました。現在も在来品種の種子の保存を目的とする非営利団体として存続しており、過去30年にわたってカタログの印刷を続けています。シード・セイバーズ・エクスチェンジは、多くの種子会社と同様に、1999年に制定された”Safe Seed Pledge”(「安全な種子の誓い」の意)に署名しています。その冒頭は、「農業と種子は、私たちの生活を支える基盤となっています。私たちは、この基盤を安全で遺伝的に安定した資源として、未来の世代のために守らなければなりません。」という文章で飾られています。種子販売は大企業等の寡占状態にあり、それらはパテントや特許等で利益を守っているわけですが、その弊害を除去することを目指す非営利団体が2012年に設立されました。オープン・ソース・シード・イニシアティブ(Open Source Seed Initiative)です。そのモットーは、”Free the Seed!”(種子を開放せよ!)です。アメリカ中の公共図書館が小さなシード・ライブラリー(seed library:種子の図書館。種を配って育ててもらって、種を採ってもらって、少し増やして返してもらう)を運営して、そこで種子を配っています。

 農業は衰退しています。ガーデニングは成長しています。1950年代には、種子のカタログは多くのハイブリッド種を販売していました。当時、ハイブリッド種は科学の粋でした。ハイブリッド種は、目新しく、改良されたもので、より大きく、よりおいしいものでした。現在、2020年代には、鳥や蝶の数はあまりにも少なくなり、あらゆる種類の野生生物も少なくなってしまいました。カタログで種子を販売する各社は、地球を救うという約束のもと、在来品種を販売しています。在来品種は、古来からのもので、絶滅寸前のものもありますが、純粋種(交雑ではない)で、大企業の支配下にもありません。在来品種の種子を売る企業が訴えたいことは、気候変動、生物多様性の喪失、アメリカ農業の危機、迫り来る食糧危機といった大問題も、種子と土があれば解決できるということです。ミネソタ州ウィノナ(Winona)のプレーリー・ムーン・ナーサリー(Prairie Moon Nursery)社は呼びかけています、「当社で最も人気のあるガーデンキットを導入して、ミツバチや蝶、鳥を呼び寄せましょう!」と。ちなみに、同社の販売する鉢植えガーデンには、38種類の植物が植わっています。14種類の花粉媒介者が寄ってくるそうです。あなたの庭が、ポリネーター・ガーデン(Pollinator Garden:花粉を媒介する虫(pollinator=送粉者)の採餌を助ける草花を植えた庭)になるそうです。149ドルで5月に出荷されます。先ほどの呼びかけに続いて、「この鉢植えガーデンを導入すれば、ヒーローになれます。とんでもない数の野生生物を養うことができます!」と記されています。

 ビートを栽培して、それを食べるのも良いかもしれません。すぐに植えることができます。本当に簡単ですから。終霜の3週間前に植えれば良いのです。まあ、私の場合は、いつ終霜がおりるかなんて把握していないんですけど、もうそろそろだと思います。地面に0.5インチ(1.3センチ)の深さの穴を掘ります。深さは小指で測れます。指先から第一関節くらいの長さです。一般的なビートの種子は、コショウの実ほどの大きさです。それを1つずつ、2インチ(5センチ)間隔で植えていきます。畝に植えるのが良いでしょう。それから2週間後くらいに地面から芽が出だしたら、間引きを行います。密集しすぎているものを引き抜きます。私は、間引いたものを移植コテでフェンスの外に打ち出しています。バドミントンのシャトルを打つような要領です。単なる暇つぶしです。さらに1カ月待って、根を掘り起こし、キッチンのシンクで泥を洗い落とします。採れたビートは、赤肉の球状で、サイズはこぶし大です。毛むくじゃらの根っこが付いています。それを、私はいつもローストして食べます。葉も食べることができます。見た目も味もスイスチャード(red-veined chard)のようです。私はいつも土のような味がすると感じるわけですが、嫌いではありません。♦

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