5.
Q.さまざまな反応をどうご覧になりましたか?
A.アメリカ側は、スパイ気球問題に過剰に反応したように見えました。おそらく、共和党がバイデン政権の対応を激しく批判したことと、中国に対する潜在的な懸念によって騒ぎが大きくなってしまったような感じです。中国がアメリカの主権を侵害したことが強調され、さまざまな領域で中国がアメリカに挑戦していることに焦点が当てられていました。そうしたことによって、アメリカでスパイ気球が多くの注目を集める結果になったのでしょう。
スパイ気球について多くの議論が交わされています。なぜもっと早くスパイ気球を追跡しなかったのか、なぜもっと早く気づかなかったのか、などといった疑問の声が上がっていました。そして、もちろん、気象調査を行う民間企業の飛行船であるという中国がしていた当初の説明にも疑問の声が上がっていました。中国は何ら悪いことはしていないという主張を繰り広げるでしょう。私は、スパイ気球に関してさまざまな議論や考察が繰り広げられているのを目にしているわけですが、それほど大騒ぎするほどの出来事ではないような気がするのです。
Q.この件に過剰反応するのは危険だとお考えなようですね?そうでしょうか?
A.私が危険であると思うことは、スパイ気球のことばかりに注目が集まることで、アメリカと中国の両国が共存していく上で重要なことが疎んじられてしまいかねないということです。両国はこれまでお互いに妥協し合いながら、うまく折り合いをつけてきたのですが、それが続けられなくなるようなことはあってはならないと思います。ブリンケンの訪中は、両国が折り合いをつけるための非常に長いプロセスの第一歩であったといえます。両国は何とかして良好な関係を維持するための枠組みを構築したいと思っているのでしょう。規模が大きく能力の高い両国が良好な関係になることは、非常に重要なことです。言うまでもなく、すでに両国は経済的な領域ではお互いにかなり依存し合っています。スパイ気球の問題によって、両国がより大きな、そしてより重要な戦略的課題から目をそらすことになるとしたら不幸なことです。
Q.中国の軍事的近代化に対するアメリカの対応をどのように見ていますか?
A.中国は急速に台頭した挑戦者であり、脅威であると言う者も少なからずいるようです。アメリカの軍の近代化や配備計画は、中国を念頭においている部分もあります。つまり、軍事的な領域でアメリカは中国と競合しているわけで、アメリカは如何にして影響力を最大化して、如何にして脆弱性を最小化するかということに、より焦点を当てているということです。もちろん、中国には、人民解放軍の近代化に対応してアメリカがとっている行動に自由に対応する権利があります。つまり、軍事的な領域では、両国間で緊張が高まり、不安定さが増し、さらに緊張が高まるというスパイラルに陥る危険性が高まりつつあり、両国間に本当の危機が訪れる危険性も高くなっています。スパイ気球の問題で期せずして非常に緊張が高まってしまったわけですが、どれほど緊張が高まっているのでしょうか?実際のところ、アメリカも中国も軍事行動を起こす準備が整っているようには見えません。♦
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