習近平はどうやってゼロコロナ政策見直しを決めたのか?熟考したの?いや、実は単なる思い付きで決めたよう・・・

Q. & A.

Why Xi Jinping Changed His Mind on “Zero COVID
習近平はどのようにしてゼロコロナ政策見直しに思い至ったのか?

After weeks of protests, China will ease its stringent pandemic restrictions. The reversal could be a boon for the economy—and lead to a wave of deaths.
数週間にわたる抗議デモを受けて、中国では厳格な新型コロナ対策が緩和されました。この方針変更は、中国経済に恩恵をもたらすでしょう。同時に、感染が急拡大し死者数が爆発的に増えるリスクもはらんでいます。

By  Isaac Chotiner December 9, 2022

1.ゼロコロナ政策が見なおおされたのは、抗議デモの激化が原因か?

 水曜日(12月7日)、中国政府は、新型コロナのパンデミック対策でとってきたゼロコロナ政策(zero covid approach)を大きく転換すると発表しました。数週間にわたって中国全土で抗議デモが繰り広げられたことを鑑み、習近平(Xi Jinping)政権は隔離政策を大胆に緩和することにしました。検疫体制やロックダウンによる制限も緩められます。各地で抗議デモが激化していました。新疆ウイグル自治区で起こった火事で少なくとも10人が死亡したことが引き金となったようです。多くの市民が厳しいゼロコロナ政策のせいで救助活動が妨げられて死者数が増えたのではないかという疑問をもったようです。習近平がゼロコロナ政策を緩めると決めたことで、抗議デモは沈静化するでしょうし、中国経済にいくぶん改善の兆しが見える可能性もあるでしょう。その一方で大きな懸念もあって、新型コロナの感染が急拡大する可能性もあります。最近行われた研究の中には、今後数カ月で100万人の死者が出ると推定しているものもあります。

 今回の抗議デモについて、また、今後の中国の動向ついて、中国政治の専門家であり、カリフォルニア大学サンディエゴ校グローバル政策・戦略大学院で教授を務めているビクター・シー(Victor Shih)に電話で話を聞きました。紙面に限りがあり、また、より分かりやすくするために対談の内容は一部編集していますことをご承知おき下さい。私がシーに聞いたのは、習金平政権がゼロコロナ政策を見直したのは抗議デモが直接の原因であるのか否かということ、習近平が今後どのようにして中国経済を正常化していくのかということ、中国政府の新型コロナ政策を取らざるを得なかった背後にある複雑な事情などです。

Q.中国がゼロコロナ政策を転換すると発表したわけですが、政策が変更された原因は、抗議デモの激化にあるのでしょうか?あるいは経済的な側面が重視された結果なのでしょうか?

A.残念ながら詳しいことは私にも分かりません。しかし、私たちが収集した情報から推測する限り、中国のトップレベルの指導者たちの間でさまざまな議論があったようです。また、中国政府にゼロコロナ政策の見直しについて助言していた専門家の間でも、さまざまな議論があったことは間違いないでしょう。長い間、ゼロコロナ政策の継続を強く主張する勢力がいたことは事実でしょう。しかし、ここ数カ月、抗議デモが始まる前から、中国政府の疫学専門家の中でも、もっと規制を緩めるべきだという声は高まっていました。厳しく隔離するのを緩めて代わりにワクチン接種を重視するアプローチを採用すべきであるという声が高まっていたのです。また、そうした状況下で抗議デモが活発化したことは、おそらくセロコロナ政策見直し支持派に少なからず追い風となったことでしょう。しかし、現時点では、ゼロコロナ政策が見直されると言っても、どの程度緩められるかは不透明です。

 あらゆる報道メディアを統制し、政府が伝えたいことのみを報道するよう報道メディアに明確に命じている権威主義的な中国の独裁政権の課題が露見しました。それは、中国では共産党の中枢に居る政治局員でさえ、国民の満足度や不満度を正確に知ることはできないということです。巷でゼロコロナ政策の見直しを求める機運が盛り上がっていることに、習近平は全く気づいていませんでした。複数の都市で抗議デモが繰り広げられるまで全く気付かなかったのです。