4.新型コロナは習近平の経済運営にどのような影響を与えたか?
Q.新型コロナは、習近平政権の経済運営にどのような影響を及ぼしたのでしょうか?大きな影響を及ぼしたのでしょうか?
A.間違いなく習近平が推し進めたゼロコロナ政策によって中国の民間セクターは大きな損害を受けています。中国の民間のハイテク企業の株式時価総額は3兆ドル近く下落しました。これは途轍もなく大きな数字です。習近平は、民間資本が中国を豊かにし、技術的な進歩をもたらすと理解しており、それは素晴らしいことだと考えています。しかし、それが大きくなりすぎることは、共産党の権威に挑戦するような可能性もあると考えており、それは耐えられないことであり、避けるべきことだと考えているようです。結局、誰が中国の指導者になったとしても、共産党は何らかの形で民間セクターと衝突することとなってしまうのです。しかし、習近平は本当にどこまでも共産党の力を信じていて、その力をフルに発揮してこれまで民間セクターを抑えてきました。
今年の春までは、中国政府の新型コロナ対応は及第点でした。中国経済は、輸出部門が好調であったため堅調でした。現在は、景気に配慮してゼロコロナ政策が見直されたので、感染しても自宅で過ごせるようになりました。これが、これまでのとは大きく変わった点です。中国政府の景気の見通しは悪くなく、改善が続くと推測しているようです。私もその予測は概ね正しいと認識しています。
私たちは何度か経験しているので知っているわけですが、問題は1〜2ヵ月後に起こります。おそらくある時点で新型コロナの感染者が急増するでしょう。それに伴って重症者数も急増し、感染による死者数も経験したことの無いほど急激に増加するでしょう。その時、習近平は、再び非常に厳格なロックダウンを行うのでしょうか?それとも、部分的にロックダウンを行うだけで緩い対処を続けるのでしょうか?現時点では、予測できません。今までのところ、ゼロコロナ政策を緩和して以降も感染者数の急増は見られません。厳しい規制が無くなったことで、人民の不満もおさまったようですし、景気が良くなって喜んでいる者も多いようです。おそらく、来月、来々月までは感染者もそれほど増えないでしょう。しかし、その後も感染者が急激に増えないという保証は何もありません。そうなってしまって、入院患者数も急増してしまった場合には、習近平はどのような方策を取り得るのでしょうか?
中国はこれまで、プロパガンダで世論をある程度コントロールすることができていました。しかし、今回の抗議デモの活発化で分かったことは、全ての国民を洗脳できるわけではないということです。多くの国民が、ゼロコロナ政策のせいで大きな損失を被ったということを認識しています。