6.ゼロコロナ政策見直後、事態が悪化することはないのか?
Q.習近平は新型コロナの感染拡大によって死者数が膨大になるようなことがあれば政権が揺らぎかねないと感じていた。あなたはそう考えているようですが、なぜそのように考えたのでしょうか?世界にはさまざまな国があって、それぞれの国に指導者がいるわけですが、なぜ中国だけが独自のゼロコロナ政策を採用したのでしょうか?
A.まあ、彼の個人的な考え方が反映したという部分が大きいのだと思います。彼は、新型コロナの感染が広まるずっと前に、既に自らの権力を揺るぎないものにしていました。さらに権力を強固なものにするために中国国内の態勢を整備する必要があったかもしれませんが、それはそんなに急ぐことでも最優先するようなことでもありませんでした。彼がゼロコロナ政策をとった理由はいくつか考えられるわけですが、その中でも2020年前半に新型コロナの感染が初めて広がり始めた頃に感染が無秩序に広がることを望まなかったということが一番大きいのではないでしょうか。彼は、当時、新型コロナの感染爆発が中国で起こったら、どんなことになるか認識していたと思います。多くの地方政府で医療施設がとても貧弱であることが露見し、途轍もなく大量の犠牲者が出ると認識していたと思います。もし、実際に感染爆発が起こっていたら、独裁者の地位を確立済みの彼が権力を失うことは無かったでしょうが、悲惨な状況を迎えていたでしょう。経済は大打撃を受けたでしょう。労働力も不足したでしょうし消費も減ったでしょう。
誰もが既に忘れてしまっていますが、中国が新型コロナの感染が広がり始めた頃にゼロコロナ政策をとったことを、習近平政権は世界に自慢していました。新型コロナの感染が広まった初期には、中国以外の国々の新型コロナ封じ込め対策は非常に拙いものでした。中でも特に米国は悲惨な状況に陥っていました。当時、中国はしきりに喧伝していました、「今や中国の統治モデルは、世界中の国々が見習うべきものとなった。」と。当時、中国はしきりに「中国方式(China model)」は優れているということをアピールしていました。当時、中国の政策決定プロセスである中国方式は優れていると主張する人がたくさんいました。他国も見習うべきだという人もたくさんいました。そのように世界中で中国の評判が良くなることは、習近平にとって非常に重要なことでした。
中国共産党第19回全国代表大会(Nineteenth Party Congress)、あるいは第18回全国代表大会でも、習近平は、中国が世界の模範となり中心的な役割を果たすことを望むと公言していました。そして、新型コロナの初期以降、つい先日ゼロコロナ政策を緩和するまでは、中国は望みどおり世界の模範となっていました。しかし、その間、残念なことに中国は外交面でも完全に他国と切り離されていたため、他国に影響を与えることもあまりありませんでしたし、中心的な役割を果たすこともありませんでした。今になって、習近平は世界と何らかの形で繋がっておくべきだったと後悔しているようです。さて、中国は独自にゼロコロナ政策を取っていたわけですが、それで中国の景気が失速したように見えてしまうのは避けたいところでした。それでは中国のイメージがダダ下がりです。また、新型コロナの感染爆発も起こしたくありませんでした。それは習近平政権の無能ぶりを示すものでしかないからです。