FRB議長ジェローム・パウエルは利上げをするのか?グリーンスパンはそれをして見事に景気を後退させた・・・

 本日翻訳し紹介するのはthe New YorkerWeb版にのみ掲載のコラムで、タイトルは”As Omicron Spreads, Jerome Powell Is in the Hot Seat”(オミクロン株の感染が拡がる中、FRB議長ジェローム・パウエルの舵取りは増々難しいものになりつつあります。)です。米国で12月6日(日本時間12月7日)に投稿されたコラムです。

 John Cassidyによるコラムです。氏はこの雑誌で元も多作だと思います。サブタイトルは、”With inflation and the new coronavirus variant buffeting the economy, the Federal Reserve chair is attempting a feat that Alan Greenspan and Ben Bernanke failed spectacularly to pull off”(インフレ率上昇とオミクロン株によって経済の舵取りが困難になる中、FRBは、アラン・グリーンスパンやベン・バーナンキがこなせなかったタスクに取り組んでいます)です。

 このコラムは、12月3日(金)に米国労働省が11月の雇用統計を発表したことに反応して記されたコラムです。 John Cassidyは、毎月雇用統計が発表された当日か翌日にはコラムを寄稿していましたが、今回は金曜日の発表を受けて、3日後の寄稿となりました。間に土日の休みがありましたから、日数がかかったようです。

 12月3日発表の失業率は4.2%でした。前月4.6%、市場予想は4.5%でした。4.2%というのは歴史的に見ても非常に低い数値です。失業率が引いイコール景気が良いということですから、テーパリング加速が決定される可能性が高まりました。テーパリングというのは債権買い取り額を減らして資金供給量を減らすわけですから、株式市場にとっては悪材料です。しかし、月曜日(12月6日)はダウ平均は600ドルの大幅高で引けていました。案外、テーパリング加速が行われても株式市場は崩れないのかもしれません。その後には利上げが待っているのですが、早ければ22年6月くらいになるのでしょうか。パウエル議長はタカ派ですから、利上げがやりたくてしょうがないのです。11月下旬にパウエル議長は再任されたのですが、卑怯なことに再任が決まるまではタカ派的な発言は控えていました。それで、再任が決まった後で、利上げする条件が整ったと大手を振って主張し出したのです。どれだけ利上げしたいんだ?と思います。

 バーナンキやグリーンスパンがFRB議長だった時に利上げを実施した際には、市場は見事に腰折れしました。私の個人的な予測ですが、今回も利上げ後は同様の状況になると思います。現議長のジェローム・パウエルは利上げ後も市場を混乱させない自信があるのかもしれません。多分、過信だと思います。予測とかコントロールできると思っていること自体が誤りです。10月のインフレ率が予測以上に高くなったから、利上げする条件が整いつつあるとFRBは言っています。インフレ率上昇幅を大きく読み間違えたのに、コントロールする自信があるのは不思議なことです。予測不能でコントロール不能であることを認識して政策決定をして欲しいものです。

 さて、米国では、インフレ抑制は中央銀行の役割だと考えられています。そもそも、政府は景気刺激策等を実施しますが、インフレ率をコントロールする手段は政府には何も無いからです。ですので、米国では政府はインフレになっても批判されません。ここは日本と大きく違います。日本では、物価高では与党が批判されることが多いように思います。米国が良いとか日本が良いという問題ではないのですが、興味深いことです。

 では、以下に和訳全文を掲載します。