本日翻訳して紹介するのはthe New Yorker のWeb版に掲載のMatthew Hutsonによる記事です。タイトル”Can We Predict Which Viruses Will Spread from Animals to Humans?”(動物から人間に感染するウイルスを予測することは可能か?)です。
Matthew Hutsonは、サイエンス&テクノロジー関連の記事の寄稿が多いです。New Yorker以外の雑誌(Science、Nature、 Wired、Atlantic等)にも寄稿しています。医学博士ですが、MITでサイエンス・ライティングの修士号も取得しています。著作もたくさんあるようで、”The 7 Laws of Magical Thinking”という著書は邦訳されています(邦題は「なぜ、これを「信じる」とうまくいくのか」)。
この記事は、人獣共通感染症の研究について記されたものです。ちょっと聞き慣れない言葉かもしれませんが、ヒトとそれ以外の脊椎動物の両方に感染または寄生する病原体により生じる感染症のことです。英語ですと”zoonosis”です。日本語では、「人と動物の共通感染症」とか「動物由来感染症」と称されることもあるようです。で、動物からヒトへウイルスが飛び移れるようになることを「スピルオーバー(spillover)」とか「スピルオーバー感染」と言うようです。”spillover”は流出とか溢れ出るという意味ですので、ある動物種でのみ感染が広まっていたウイルスが人間にも感染するようになることだとイメージできます。
詳細は、和訳全文をお読みいただきたいのですが、次に発生する人獣共通感染症を予測するのは不可能なようです。その為の研究に膨大な資金が投じられていて、世界中の野生生物のサンプリングが為されているのですが、次の人獣共通感染症を言い当てるのは不可能なのです。というのは、野生生物ってそれこそ無限にいるわけです。世界中に。で、新型コロナであれば、武漢のコウモリを調べていなければ予測できなかったわけです。コウモリだけでも数千種いて、その中の1種類を当てて、なおかつ武漢のコウモリをサンプリングしていなければ発見できなかったのです。しかも、ウイルスが人間に感染するか否かを調べるには時間が結構かかります。また、ウイルスは、常に変異を起こしますから、調べても調べてもきりがないのです。
この記事を読んでびっくりしたのは、信頼区間(confidence intervals)という語が使われていたことです。意味は、「統計学で母集団の真の値が含まれることが、かなり確信できる数値範囲のこと」です。んー、New Yorkerは学術誌ではないのだから、この語はちょっと難しすぎるだろうと思いました。まあ、スクリップス研究所(Scripps Research Institute)の研究者が語ったことを” ”で囲んでそのまま記しているから仕方がないのかもしれませんが。
では、以下に和訳全文を掲載します。詳細は和訳全文をご覧下さい。