Don’t Take the Surprising Drop in G.D.P. at Face Value
GDP成長率がマイナスになったが、その数値を額面通りに受け取る必要は無い!
Some special factors reduced headline growth in the first quarter.
いくつかの特殊な要因により、第1四半期のGDP成長率は
下押しされました。
By John Cassidy April 28, 2022
好調な雇用情勢に支えられ、今年の1〜3月期の米国の家計消費は、引き続き旺盛でした。企業の設備投資も伸びました。特にIT関連分野での投資が多かったようです。民間部門の総支出は年率3.7%の伸び率で引き続き堅調で、今年度後半も好調に推移する見通しです。
米国商務省が木曜日(4月28日)の朝に今年1〜3月期の実質国内総生産(GDP)の速報値を発表しました。個人消費は年率2.7%増、民間非住宅建築投資は15.3%増で、非常に堅調でした。しかし、商務省の発表に関するニュース報道を見たところでは、経済が堅調であるという報道はほとんどありませんでした。また、共和党は商務省が発表した数値を見て他の部分に焦点を当てて民主党の経済運営に問題があると主張していました。商務省の発表で最も興味を持たれたのは、経済活動を最も如実に示す指標の1つとされるインフレ調整後GDPが、同期は年率換算で前期比マイナス1.4%だったことです。これは2020年以降では、最大の落ち込みでした。バイデン政権は現下のインフレへの対応で苦労していますが、今年後半の中間選挙に向けて、経済面では一息もつけない状況が続きそうです。さて、1〜3月期(第1四半期)は、個人消費も企業の投資も前の四半期よりも大幅に増えているのに、どうしてGDPは減ってしまったのでしょうか。この事象を理解するためには、GDPとはどういう数値であるかということを理解する必要があります。GDPは、米国内の生産活動によって新たに生み出された財とサービスの付加価値額の合計で、いろんな数値を積み上げて算出されます。今年の第1四半期のGDPを詳細に見ていくと、3つの要因がGDPの成長率を大きく下押ししたことが分かります。
3つの要因の内の1つ目は、第1四半期に大きく伸びた支出の大部分が、米国外で生み出された財とサービスに対するものだったということです。それは、GDPを押し上げません。その分、貿易赤字が増えました。海外のサプライチェーンの問題や米国内の港湾が機能マヒに陥って」問題になっていましたが、実際には輸入は大幅に増えていたのです。コンピュータ、衣類、半導体などの輸入が好調だったようです。財の輸入は、年率換算で20%以上増加したのですが、輸出は10%近く減少しました。さらに、旅行や金融などのサービスを加えた輸入の伸び率は17.7%で、輸出は5.9%の減少でした。商務省によれば、この要因だけで、GDPの成長率を3.2ポイント押し下げたようです。
マイナス要因の2つ目は、企業が手元に抱えている在庫が大きく減ったことです。在庫が増減しても、その時点で売上が減ったり増えたりするわけではないのですが、政府統計上でGDPを算出する際には在庫も期間中に新たに生まれた価値としてGDPの一部に算入されます。昨年の第4四半期は、多くの企業が、サプライチェーンの問題で商品を確保できなくなることを回避するために、クリスマス商戦や年末商戦用の在庫を積み増していました。そのため、昨年第4四半期には、増えた在庫によってGDPが押し上げられ、名目成長率は6.9%という高い数値となっていました。しかし、今年の第1四半期では、期首で多かった在庫も捌けて通常以下に減りました。それでGDPの名目成長率が押し下げられました。多くの企業、特に自動車関連企業で在庫が減りました。商務省によれば、第1四半期は期末在庫が期首在庫より減ったという要因によって、GDPの伸び率は1ポイント弱下がったようです。
マイナス要因の3つ目は、政府等による公的支出の減少でした。特に連邦政府の支出の減少が大きく、年率換算で6%弱も減っていました。昨年の3月に下院で可決された1.9兆ドルの米国救済プラン(American Rescue Plan)が終わったことも少しは影響しているようです。しかし、商務省がGDPを発表した際の資料を見ると分かるのですが、第1四半期に政府支出が減少した主たる理由は、国防費の減少だったようです。国防費は、四半期ごとで見ると大きくブレる傾向があるのです。商務省の計算によれば、政府等の支出の減少によって、GDP成長率が0.5ポイント押し下げられたようです。
3つの要因がGDP成長率を押し下げたと記したわけですが、その3つが合わさって名目成長率を約4.5ポイント押し下げました。そのために、家計消費や企業投資が堅調であったにもかかわらず、GDPの名目成長率はマイナスとなってしまったのです。また、今年の第1四半期の新規雇用者数は約170万人で、失業率は3.9%から3.6%に低下しました。雇用も引き続き非常に好調だったのです。ですので、GDPの名目成長率がマイナスになったことを受けて、景気が後退してしまったと思う者も少なからずいるでしょうが、決してそうではないのです。世界的な経営戦略コンサルティング会社であるEYパルテノン(EY-Parthenon)でチーフエコノミストを務めるグレッグ・ダコは、「商務省が発表した数値からノイズを取り除いて本質を見ると、米国経済は総じて堅調である。」と指摘していました。ゴールドマン・サックスの投資調査部門も、「商務省が発表したGDPのレポートの詳細を分析すると、米国経済は非常に堅調に見える。」と指摘していました。
第2四半期が始まりましたが、今期は在庫が前期より積み増されると予想されますし、軍事費は前期に減少した反動で今期は増えるでしょう。その2つの要因は、GDPの成長率を押し上げるでしょう。さて、第1四半期のGDP成長率を押し下げた要因の残りの1つである輸出入は、第2四半期のGDP成長率を押し上げるでしょうか、それとも押し下げるでしょうか?それは、予測が簡単ではなく、どちらに転ぶか分からないと言うしかありません。中国の新型コロナ感染対策のロックダウンやウクライナ戦争の影響など、国際情勢はどうなるか分かりませんから、輸出入がどうなるかを正確に見通すことはできないのです。もし今年、世界規模で景気が急激に減速すれば、残念ながらその可能性がますます高まっているような気もするのですが、米国の経済成長も確実に影響を受けるでしょう。
連邦準備制度理事会(FRB)が利上げに踏み切り、昨年来の景気刺激策が縮小に向かい、高いインフレ率が購買力を蝕むわけですが、経済の根幹をなす家計や企業の支出はどうなるのでしょうか?それが一番の問題です。既に、金利に敏感な消費には影響が出ている兆候が見られます。実際、住宅ローン金利の上昇に伴って、2月と3月の中古住宅販売件数が減少しています。
金曜日(4月29日)には、商務省が3月の個人消費と所得に関する詳細な情報を発表することになっています。2月の統計では、バーやレストラン、ホテルへの支出が増加していることが示されていました。閉じ籠もる生活に飽きたアメリカ人の多くが、人と会ったり旅行をするようになったことが分かりました。最近は空港に行くと混雑が目立ちますし、ホテルの稼働率も上昇しているようですから、そうした傾向は継続しているようです。商務省が発表した4月の名目GDPの成長率がマイナスで、共和党はバイデン政権の経済運営が上手くいっていないと主張しているわけですが、米国経済は堅調を維持しており、新型コロナの影響から着実に回復しつつあります。しかしながら、今後どうなるかは予測が付きません。
以上
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