Gun Violence Is America’s Never-Ending Plague
銃乱射事件はアメリカから決してなくならない風土病
The mass shooting in Monterey Park was one of dozens already this year.
モントレーパークの事件は、今年に入って既に数十件発生した銃乱射事件の1つに過ぎない。
By John Cassidy January 23, 2023
今日もまた、アイオワ州デモイン(Des Moines)で銃乱射事件が発生してしまいました。月曜日の午後には、多くのケーブルテレビ局が土曜日の夜に11人が射殺されたロサンゼルス東部のアジア系住民が多いモントレーパーク(Monterey Park)の事件の報道に追われていたわけですが、それを切り上げざるを得ませんでした。デモインのダウンタウンにあるチャータースクール(charter school)で事件が発生し、生徒2人が死亡、1人が重傷というニュースを伝えなければならなくなったからです。「悲劇に次ぐ悲劇」とカリフォルニア州知事のギャビン・ニューサム(Gavin Newsom)はツイッターでコメントした。
非営利団体ガン・ヴァイオレンス・アーカイヴ(Gun Violence Archive:米国内の銃による暴力のすべての事件をカタログ化している)によると、1月はまだ1週間残っているわけですが、既に37件の銃乱射事件(mass shooting)が発生しています。その内の5件で4人以上の死者が出ています(ガン・ヴァイオレンス・アーカイヴでは、銃撃者を含めずに4人以上の人が撃たれた事件を、銃乱射事件(mass shooting)と分類しています)。37の銃乱射事件は全米のあちこちで発生していて、17の異なる州とコロンビア特別区で起こっています。モントレーパークのスター・ボールルーム・ダンススタジオ(Star Ballroom Dance Studio)で起きた銃乱射事件は、現地の警察の発表によれば72歳のアジア人男性によるものです。今年に入って起きた銃乱射事件で最も多くの死者が出ました。
ガン・ヴァイオレンス・アーカイヴが銃乱射事件を記録しているわけですが、集計した資料を見ると、銃乱射事件には様々な形態があることが分かります。家庭内での乱射、ギャング間での乱射、精神障害者による無差別乱射、職場同僚への乱射などがあります。また、国内テロもあります。これは、FBIの定義によれば「政治、宗教、社会的、人種、環境などイデオロギー的課題を遂行するために個人またはグループによって行われる暴力的犯罪行為」です。銃乱射の加害者と被害者は、年齢、人種、社会的背景等によって偏在しているわけではありません。このような多様な現象を、共通の動機や根本的な心理的背景があるとして説明しようとするのは不可能で、それは愚かなことです。しかし、CNNのコメンテーターで元FBI副長官のアンドリュー・マッケイブ( Andrew McCabe)が月曜日に指摘したように、死者が多数出た銃乱射事件の多くには、1つの共通点があります。それは、大量殺戮が可能な武器を容易に入手できたという点です。当局の発表によれば、モントレーパークの事件でも、セミオートマチックピストルが使われていました。銃乱射事件が稀な他の多くの先進国と米国の違いは、容易にそうしたものを入手できる点です。
こうした現実があるわけですから、銃乱射事件が発生する度にどのような反応が引き起こされるかは、予測可能です。毎度毎度で気が滅入ります。銃規制に反対する圧力団体(gun lobby)とその息がかかった政治家たちによって、銃規制強化は否定され、何故か議論も巻き起こりません。それによって大多数の銃規制強化を支持する者たちが絶望感を味わいます。土曜日の銃乱射事件を受けて、共和党は直ぐに予防線を張りました。彼らは、厳格な銃規制法が既にあるカリフォルニア州やイリノイ州などでは銃乱射事件が減っていないと主張しています。しかし、共和党のこの主張は、カリフォルニア州やイリノイ州のような厳格な銃規制のある州で大勢を殺傷するのに使われた銃の多くが、銃規制の緩い州から不法に持ち込まれたという事実を無視しています。非常に恣意的に無視しています。
今回の事件では、銃は他州で入手したものではありませんでした。月曜日の報道によると、スター・ボールルーム・ダンス・スタジオの銃撃犯は、数十年前にカリフォルニア州で合法的に購入した銃を使用したとのことです。いつ、どのように彼がそれを入手したかはまだ明らかにされていません。それはさておき、週末にワシントン・ポストが報じたとおり、1990年代に制定されたカリフォルニア州の銃規制法が、実際には銃乱射事件数の減少に役立っています。カリフォルニア州は、全米50州の内で銃による死亡率が7番目に低くなっています。また、大量殺戮による死亡率も平均以下となっています。
しかし、国レベルでの銃規制が進まなければ、銃乱射による大量殺人を防げる可能性が限りなく小さいことは確かです。昨年6月、テキサス州ウバルデ(Uvalde)のロブ小学校(Robb Elementary School)で18歳の卒業生が19人の児童を射殺した直後、連邦議会は30年ぶりに超党派で銃規制策に合意しました。それによって、21歳以下の銃購入者の身元確認を厳格化し、他者への脅威が深刻とみなされる人物から銃器を取り上げる警告法(red flag laws)を州ごとに導入することが促進されます。これらの規制策は歓迎すべきものですが、この問題に対処するには規模的に不十分です。ほとんどの米国人はそう認識しています。ピュー研究所(Pew Research)が行った世論調査によれば、回答者の78%が、これらの規制策は銃乱射事件の減少にほとんど、あるいはまったく効果がないだろうと答えました。
共和党が下院を支配していますので、直近でこれ以上の銃規制策が制定される可能性は事実上ゼロです。一方、地方レベルでは、昨年6月に連邦最高裁が一世紀にわたって拳銃を自宅外で持ち歩くことを制限してきたニューヨーク州法を違憲とする判断を下したことを受けて、銃規制法はより緩やかになる可能性があります。保守派の多数意見として、クラレンス・トーマス(Clarence Thomas)判事は、憲法修正第 2条で自衛のために公の場で銃器を携帯する幅広い権利は認められていると主張しました。しかし、その主張は根拠が乏しいもので論争を巻き起こすものです。最高裁が違憲とする判断を下して以降、各州の下級裁判所で多くの判事が、各地の銃規制法の成立を阻止したり、違憲とする判決を下しています。ヒル紙(Hill:政治専門紙)の報道によると、各地で、シリアルナンバーのない銃の所持を禁止すること、重罪で起訴された者が銃を買うことを禁止すること、空港やサマーキャンプでの銃所持を禁止することも違憲と判断されているようです。
最近起こったものも含め、アメリカの銃乱射事件から得られる重要な教訓は、ひとつひとつの事件には、それぞれ異なる状況で、異なる動機にもとづくもので、犠牲者には特に共通点があるわけではないということです。それぞれに特段の関連性があるわけではありません。常に、この点は認識しなければなりません。また、犠牲者とその家族が被った想像を絶するほどの損失についても認識しなければなりません。しかし、最も認識されなければならないのは、こうした悲劇はすべて、殺傷力のある武器の営利目的の販売が助長され、殺意を持った人でも比較的容易に銃器を入手できる文化の中で起きているという事実です。この環境が変わらない限り、そして変わるまで、銃乱射による大量殺戮事件は無くならないでしょう。♦
以上
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