タイトル : Has Gratuity Culture Reached a Tipping Point?
チップ文化は転換点にある?
Paying extra for service has inspired rebellions, swivelling iPads, and irritation from Trotsky. Post-pandemic, the practice has entered a new stage.
サービスに追加料金を支払うことに、反対する者もいる。iPadをクルッと向けられてチップの額を選ばされるようになった。トロツキーは、強硬にチップの支払いを拒んだ。新型コロナ収束後、チップの額はべらぼうに高額になった。
By Zach Helfand December 25, 2023
1.チップの習慣が変容しつつある
最近、飲食店に行くとレジで「チップ画面」をこちらに向けられることが多い。そんなものが登場するまで、チップを払うという行為は、誰かにプロポーズするのと同様、非常にプライベートなものだった。チップの額には、隠された価値観や潜在意識が反映されている。たとえば、ウェイトレスの胸の大きさはチップの額と正の相関関係があることが知られている。また、羽振りの良い男性は自分の妻よりも他人の妻と食事をする時にチップを多く払うことが知られている。新型コロナ後に感謝の気持ちをより強く示したいと考える者が多くなったことで、チップ文化はすっかり変容してしまった。マナーや作法の専門家は、最近流行のチップ文化は、罪悪感をそそるものであると指摘する。チップを渡す際に、実際にお金を渡すことは少なくなった。あらゆるものが非接触( contactless )になっている。飲食店のレジでは、iPad の画面をこちらに向けられる。それで、チップを何 % 払うか選択する。ガスト( Gusto:クラウドベースの給与計算ソフトを提供する企業 )のデータによると、過去 3 年間で、ベーカリーやカフェでのチップの額は 41% 増えている。最近では、スポーツのアシスタントコーチ( 37% 増)や劇場等のチケット販売スタッフ( 161% 増)にもチップを払うようになった。では、テイクアウト店でサラダをレジ担当に注文した時にはチップを払うべきか。払わなければケチと思われるのか。払えば、損をしたような気がする。以前はレストランのろうそくが灯る薄暗い中でチップの金額を書いた。今は大きなチップ画面が回りの者からも見える中でチップの金額を選択しないといけない。飲食店で列に並んでいるときの礼儀作法が 1 つ追加された。ATM に並んでいる時や小便をする時と同様に、あえて目をそらさなければならない。
先日、シアトルでボブズ・クオリティ・ミート( Bob’s Quality Meats )という精肉店を営むマイケル・リード( Michael Reed )に話を聞いた。「肉屋はチップと関係ない商売だ。」と彼は言った。彼はこの商売(彼は肉屋ではなく食肉流通売業と呼ぶ)に 20 年携わってきた。生計を立てるためであるが、仕事に誇りを持っているし、自分の能力が高いことも認識している。さまざまな国から来た移民たちに肉を販売して満足させている。歯が悪い客を覚えていて、そうした客にはステーキを薄くスライスしている。2021 年に新しいレジシステムを導入した。ディスプレイ画面を回転させられる。チップ画面として使うことができる。チップの選択肢は店で独自に決められる。3% から 10% に設定した。「大した額になるとは思っていなかった。」とリードは言った。「でも、違った」。
不満に思う者もいた。フェイスブックで怒っている者もいた。しかし、文句を言う者はいなくなり、誰もが自然と受け入れるようになった。チップの額は増えていった。リードが鶏の骨取りをすると、チップは 1 ドルか 2 ドルが相場である。ベーコンを切り分けて渡した場合は、チップは貰わない。ステーキ肉を買う客は気前よくチップをくれる。チップを払う余裕のない客もいる(フードスタンプはチップには使えない)。「チップの習慣があることで、彼らのような人たちのために手頃な価格に抑えることができる。」とリードは言った。半分弱の取引でチップを受け取っている。そのおかげで、彼はここ数年の厳しいインフレを乗り切ることができた。
リードの 19 歳の娘もチップを貰っている。スターバックスで働いている。直近で気づいたのは、化粧をするとチップが多くなるということである。昨年の夏、彼女は近くのスケートリンクに行ったのだが、乗ってきたシボレー・クルーズ( Chevy Cruze )が駐禁でレッカー移動された。彼女はリードと一緒に保管場所まで行った。書類にサインをして、出納窓口で清算をした。900 ドル以上を支払わなければならない。その中にはチップと同じ性質で名前だけが違う「奉仕料( convenience fee )」なるものも含まれていた。リードはカードで決済することにした。すると、出納係はレジのスクリーンをクルッとこちらに向けた。チップ画面だ。いくつかの選択肢が示されていて何 % にするかを選べる。「えっ、チップが要るの?」とリードは言った。「そりゃ、おかしいだろっ!」。出納係は目をそらした。