本日翻訳し紹介するのは The New Yorker の January 24, 2024, issue に掲載の Louis Menand による記事で、タイトルは、” Is A.I. the Death of I.P.? ”( AI は知的財産に死をもたらすのか?)となっています。
Menand はスタッフライターです。アメリカの政治や経済に関する記事を書いています。スニペットは、”Generative A.I. is the latest in a long line of innovations to put pressure on our already dysfunctional copyright system.”(生成 AI は、最新のイノベーションであるが、既に機能不全に陥っている著作権システムを揺るがす。)となっています。
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一口コメント
さて、今回翻訳した記事は知的財産に関するものでした。知的財産については、必ず誰かが所有権を持っています(権利が保護される期間が切れて、公共の財産となっているものは別として)。知的財産所有権は、法的側面から見ると、著作権、特許権、意匠権、パブリシティ権、商標権等々があります。この記事では、まず、現在の著作権法の問題点が記されています。
この記事の著者は、現在の著作権法は著作権者の権利が守られ過ぎていると考えています。著者によれば、「知的財産は、世界の大富豪 50 人の少なくとも半数の富の一部またはすべてを占めており、米国の製品輸出額の 52% を占めていると推定されている」そうです。著作権者の権利を保護するということは重要なことです。そうでないと、創作を業としている方の生活が成り立ちません。しかし、それが守られて過ぎており、それは世の中のコストを高くしていると、この記事の著者は指摘しています。
さて、この記事は知的財産の中でも特に著作権について詳述しています。著作権者の権利を保護しすぎていること以外にも問題があります。それは、著作権に関する紛争が持ち込まれる裁判所の判事が、著作権に関して正しい判断を下す能力を有していないことです。誰かのポスターは誰かの絵画の構図を盗用しているという訴訟があった場合、私のような美術の知識の無い者では正しい判断ができません。実は判事もそんな知識は有していないのです。それで、あちこちの著作権に関する裁判でお互いに矛盾する判決が出ています。その影響で、「これっ、権利が侵害されたと訴えたら莫大な賠償金もらえるのでは?」と考える輩が増えて、訴訟が頻発しているのです。もし、裁判所の判事が一貫した判断を下していれば、誰もが何が権利侵害にあたるかを理解できるわけで、訴訟の件数も減るはずです。
さて、この記事の欠点は、タイトルが「 Is A.I. the Death of I.P.? 」となっているのに、AI に言及しているのは末章のみであることです。著者が結論として言っているのは、生成 AI の出現が著作権法が上手く機能していない状況をさらに悪化させるということです。著作権法云々の記述が冗長に思えなくもないのですが、ブルース・スプリングススティーンやエド・シーランやマービン・ゲイやプリンスやアンディ・ウォーホル等の訴訟が実例で出てきますので、それなりに興味を持って読めると思います。
要約
- 知的財産権とは
知的財産権の所有者の権利は法律で守られているが、万能ではない。ことさらに権利所有者の権利が強調されすぎている。現在の著作権法は、資金にものを言わせて権利を買いまくっている企業に与しすぎている。 - 著作権法の問題点
現在の著作権法の保護期間は不合理に長すぎる。著作権者の利益となるが、世の中全体が高コストになっている。 - 著作権関連裁判での不確実性
裁判所の判事の能力が賭けている。その結果、訴訟が頻発する事態となっている。 - 生成 AI が絡む法的紛争の頻発
これについても裁判所の判事は判断を下す能力を欠いている。
では、以下に和訳全文を掲載します。詳細は和訳全文をご覧下さい。