窓のない学生寮の悪夢!バフェットの片腕マンガーが寄付した寮は窓が無い!なお、本人はコルビュジエ気取り?

Amateur Hour November 22, 2021 Issue

Nightmare of the Windowless Dorm Room
窓のない寮の部屋の悪夢

Charlie Munger, a Warren Buffett crony, donated two hundred million dollars to a university for a gigantic new dorm. The catch: no windows. How did guinea pigs in a similar Munger housing experiment fare?
ウォーレンバフェットの片腕であるチャーリー・マンガーは、巨大な新しい寮のために2億ドルを大学に寄付しました。売りは窓が無いことです。同様の寮が既に作られているたのだが、その学生たちはどうなったのか?

By Charles Bethea

November 13, 2021

 2016年、ウォーレン・バフェットが会長を務める投資持株会社バークシャー・ハサウェイの副会長チャーリー・マンガーは、カリフォルニア大学サンタバーバラ校(以下、UCSB)に2億ドルを学生寮の建設費用として寄付する意向を発表しました。マンガーはその学生寮には非常に注目すべき点があると言及していました。それは、窓が一切無いということでした。

 窓の無いデザインということに懐疑的な意見も多かったのですが、マンガーは「非常に秀逸なデザインで、非常に効率的である。」と主張しまた。そのデザインは、コストの削減に寄与するし、窓があることで生まれる潜在的な侵入盗等のリスクを減らせると説明していました。また、寮の学生たちが自分たちの個室から出て自然光に溢れたコミュニティースペースに自然と集まってくるような意匠が凝らされているとのことでした。そこで、学生たちが交流を深めることが可能とのことでした。

 先月、マンガーの計画は大きな変更無しにUCSBによって正式に承認されました。計画によれば、床面積が約200万平方フィートの11階の建物で、約4千5百人分の個室を備えています。個室のほとんどには窓はありません。本物の窓の代わりに、遊園地にある偽の建物のように窓の絵が壁に描かれるようです。マンガーは、「学生の各個室にはドアが付いているし、生活するために必要な光量は確保されている。ただし、窓が無いというだけだ。」と言いました。その後、UCSBの設計評価委員会で建設関連の建設監理を担当していたデニス・マクファデンが辞任を申し出ました。マクファデンの書いた文書が後にリークされたのですが、そこには、「チャールズ・マンガーの試みは、建築家の視点からすると全く支持できないものである。」と記されていました。

 マクファデンは、マンガーがUCSBの建物をデザインしたことは、「大学が差し出した学生をモルモットにして、実験的な建物が学生の生活と人格の形成に及ぼす未知の影響を調べる社会学的・心理学的実験である」と断じました。自然光が全く無いのは問題です。空気の循環も悪く、個室の狭いスペースも問題でした。また、その建物には2つしか出入口がありませんでした。マクファデンは、「その建物の人口密度は世界で8番目の都市に相当し、ダッカ(バングラデシュの首都)とほぼ同じである。」と指摘しました。

 マンガーは現在97歳で、窓が沢山あるロサンゼルスの家に住んでます。彼はマクファデンの批判にも動じていません。彼は言いました、「無知な男が去ったので、マクファデンが去ったのはマイナスでは無く大きなプラスだと見なしています。」と。彼はマクファデンのことを「建物の本質を見ることが出来ない”うつけ者”」と評しました。マクファデンは、建設業界誌の記事でそれに反論し、「私はその建設計画について十分に詳細まで理解している。」と記しました。また、ある有名な建築家からこの件でメールを貰っており、その建築家のメールには「その建設計画は非常に恐ろしいものである。私はその計画を中止するための助力を惜しみません。」と記されていました。一方、マンガーは、この建物はマルセイユのル・コルビュジエの作ったコンクリート建築に着想を得たものであり、「ピラミッドと同じくらい永続する」ことを期待していると語っていました。

 その学生寮は地元紙で”Dormzilla”(ドームジーラ)というニックネームが付けられました。実は、マンガーが窓のない学生寮を作ろうとしたのはこれが初めてではありません。6年程前に彼は母校であるミシガン大学に1億1千万ドルを寄付しました。そして、2015年に院生用の集合住宅を完成させています。マクファデンは、窓のない部屋での生活は学生に「未知の影響」を及ぼすものだと非難していますが、既にミシガン州で何千もの学生が何年間も実験台となっているのです。

 コンピューターサイエンティストのマシュー・モレノは、昨年3月にマンガーが作ったミシガン大学の院生用の集合住宅に住んでいたパートナーと一緒に暮らすようになりました。最初は全く問題ないと感じました。床は天然石調床で備品も豪華でした。地下にはマッサージチェアが沢山あって、ムービーシアターもありました。しかし、映画が上映されたことはありませんでした。屋上ガーデンからは”Ann Arbor”(アナーバー)市街を眺めることが出来ました。しかし、雨が降ると雨水が2つある階段に直接流れ込みました。モレノは言いました、「階段は水浸しで、コオロギの死骸だらけになりました。」と。

 技術的な問題は他にもありました。火災警報器がしばしば誤って鳴動しました。ダストシュートの不具合により、落下してきたゴミで怪我した者が何人かいました。モレノは、換気が悪いので、十分な睡眠がとれないと指摘しました。モレノは言いました、「みんな日焼けマシンが必要だとか、メラトニンが必要だと言っていましたよ。」と。

 その集合住宅に住んだ者の中の一部は、見事に環境に順応しました。元薬学院生のウィルソン・チェンは言いました、「窓が無いことには最初は非常に失望しました。でも、1年もすると体が慣れたというか順応するものですね。とても暗かったんですが、それにも慣れましたね。」と。実は、その集合住宅には本当の窓が1個だけ付いている部屋も少しだけありました。しかし、チェンによれば、入居を希望する際には「窓付きの部屋への入居を希望する権利を放棄する承諾書の提出が必要」でした。

 モレノは自分の寝室では寝苦しいので、仕方なく居室内の共用スペースで寝ることになりました。共有スペースで寝るというのも中々大変でした。何せ共用なわけですから。モレノは寝る場所を変えた後、ツイッターにマンガー宛のメッセージを投稿しました、「マンガーさん、寝室に窓を付けないことによって、集合住宅の皆を共有スペースに出させて仲良くさせようという意図があるんですかね?そりゃ無理ですよ!そういうことは窓の無いところに住んでみてから言って下さい!」と。

 チェンは、窓のない部屋で4年間過ごしました。その集合住宅の設計思想について疑問を抱くなどということは一度もありませんでした。彼は言いました、「マンガーは何故か特別に窓に拘りがあったようですね?いや、私はそんなのに全く興味ないですし、どんな拘りかも知らないですね。まあ、私は窓の無い部屋で4年間過ごしましたが、何の問題もありませんでした。まわりにも変になった奴は居ないようですし、これで良いじゃないですか?」と。♦

和訳は以上、以下に英文全文を記します(ご参考)。