バイデンの一般教書演説は立派だった!支持率上昇の兆しが見られないのは何故?

Letter from Biden’s Washington

So Much for “Sleepy Joe”: On Biden’s Rowdy, Shouty State of the Union
「寝ぼけた奴」ではなかった!バイデンは一般教書演説で攻撃的に怒鳴り散らした

The spectre of Trump’s return loomed large over the President’s unusually partisan annual address.
バイデンの一般教書演説が例年と異なったのは、トランプ再選が現実味を帯びてきたことが理由である。

By Susan B. Glasser  March 8, 2024

 一般教書演説はどうだったか?うるさいだけだった。半年後に大統領選を控えた重要な時期に議会で演説を行うことは、高齢で能力を不安視されている上、支持率も上がらず困難に直面しているジョー・バイデン大統領にとって、ほぼ不可能に近い任務であった。とはいえ、一般教書演説は毎年恒例の儀式てある。演説を心待ちにしている有権者もいるかもしれない。大統領はその期待に応えようとして、実現可能性を考慮せず有権者が好みそうな施策を無数に列挙した。ついつい大風呂敷を広げた。そもそも最初からそれらに取り組むつもりは全くない。実際に立法措置が講じられることは決して無いのである。そうしたことは、誰もが承知している。一般教書演説は決して楽しめるものではない。ダラダラと長く続き退屈なことで有名である。近年の一般教書演説で記憶に残るような素晴らしい内容のものはほとんどない。一般教書演説を見事にこなして苦境に陥っていた大統領が復活した事例は 1 つもない。また、一般教書演説で失態を晒して苦境に陥った事例もない。

 しかし、バイデン大統領は一般教書演説に賭けるしかない状況に追い込まれていた。世論調査ではドナルド・トランプに遅れを取っている。民主党内にも再選を疑問視する者が少なくない。2 期目を務め上げる能力について懐疑的な目を向ける者も少なくない。だから、バイデン大統領には、演説を無難に済ませるという選択肢は無かった。全国ネットの TV 中継でアピールせざるを得なかった。その結果、通常とは異なる形の一般教書演説が実現した。民主党の主張が色濃く、大声混じりで、時には少々威嚇的でさえあった。通常の一般教書演説で見られる陳腐な決まり文句は無かった。民主・共和両党議員からの惜しみない拍手も無かった。民主党議員団はこの演説を気に入ったかもしれない。共和党議員団は、座席で身をよじって聞いているしかなかった。民主党全国大会を無理やり傍聴させられていると感じていたかもしれない。

 バイデンは、一般教書演説が大統領選に向けてのアピールになりうることを証明した。バイデンは満員の議場で喝采を浴びながら、インフラ支出法案を成立させたことや大幅に雇用者を増やしたこと等の実績をアピールした。得意満面の面持ちだった。バイデンは支持率が上がらず苦しんでいたが、木曜日( 3 月 7 日)の夜は力強く己の役割を全うした。準備していた原稿に誤りがあるところがあったものの、動じることなく無難に対処した。決して穏やかな表情ではなかった。演説はここ数年の慣習を踏襲し、1 時間以上の長さだった。しかし、全体的な雰囲気は、私が記憶しているほとんどの一般教書演説とは異なっており、鋭く対立し、激しく分裂していた。民主党議員団はバイデンが演説を始める前から「あと 4 年だ!」という騒々しいシュプレヒコールをあげていた。バイデンの用意した原稿には感嘆符が 80 個も付いていた。彼は、途中でアドリブでいくつか追加した可能性がある。彼は大統領職に留まれるか否かの瀬戸際に立っている。必死である。この 81 歳の老人が大事な時に老人特有の失態を犯したとしても、誰も非難することはできないだろう。

 政治的側面から見ても、今年の一般教書はこれまでのものとは大きく異なっていた。目的は、共和党の下院を通過する見込みのない法案を推し進めることではなく、揺らぎがちな民主党議員団の結束を強固にすることにあったのは明らかである。バイデンは時折声を張り上げていたが、常軌を逸するほどではなかった。彼のハイテンションの演説は、共和党を困惑させるには十分だった。共和党は何年も彼を緊張型痴呆症患者と揶揄してきた。しかし、今回の力強い演説はそれを不可能にした。フォックス・ニュースのコメンテーターのショーン・ハニティ( Sean Hannity )は、トランプ大統領がバイデンを「寝ぼけた奴( Sleepy Joe )」と揶揄するのを引用して広めた人物である。が、彼女は、木曜日( 3 月 7 日)の一般教書演説を受けて、バイデンが「ジャック・アップ・ジョー( Jacked-Up Joe )」、つまりカフェイン過剰摂取で興奮した老人に変わってしまったと不満を述べた。民主党議員団のほとんどは、バイデンの演説を見て安堵していた。一般教書演説に臨むバイデンのハードルはかなり低かったのかもしれない。彼はエネルギッシュな演説で、そのハードルを確実にクリアした。