本日翻訳し紹介するのは The New Yorker の Web 版に 12 月 15 日に投稿された E. Tammy Kim のリード記事でタイトルは、” In South Korea, a Blueprint for Resisting Autocracy? ”(韓国では独裁政治に抵抗するための青写真が描かれているか?)となっています。
さて、本日和訳したコラムは韓国で尹大統領が戒厳令を宣言したことについてのものでした。コラムを書いた E. Tammy Kim は労働問題などをカバーしています。また、韓国に関連する記事もしばしば書いています。スニペットは、After President Yoon Suk-yeol ordered martial law, the legislature voted to impeach him. But it could take months to remove him from office, and uncertainties remain.” (尹錫悦大統領が戒厳令を発令した後、議会は大統領の弾劾を決議した。しかし、大統領の職務を解くには数カ月かかる可能性があり、不確実な点が多い。)となっています。
全く寝耳に水でしたが、韓国で尹大統領が戒厳令を宣言する騒動が起こっていました。日本国憲法等に戒厳令の規程がなく、戒厳令を敷くことは不可能です(旧憲法には規程があり、実際に関東大震災で治安が悪化した際に、戒厳令の一部(行政戒厳)が適用された)。まあ、戦後に日本国憲法が発布されてから今までそれが不可能でも何の問題も無かったわけで規程しなくても全く問題無いと認識します。運用を誤ると独裁に道を開くだけです。
そもそも戒厳令とは何なのでしょうか?戒厳令とは、行政や司法を軍が掌握し、国民の言論や集会の自由などの基本的人権を制限することができるものです。 発令されるのは、戦争の時、クーデターやテロのおそれのある時、大災害が起こった時などが想定されています。んー、ということは、日本は戒厳令が憲法等で規定されていないので、戦争やクーデター等のおそれがある時でも戒厳令を敷くことができないわけです。それでも、悪用されて独裁につながる可能性があるわけで、このままで良いと思います。
このコラムを訳してみてなるほどと思ったのは、文民統制が軍の暴走を必ずしも防げるわけではないという点です。文民統制とは、軍事力の統制を文民、すなわち民主的なプロセスで選出された国民の代表者が担うことを指します。その代表者の資質によって大災害が起きる可能性もあります。しなしば軍部の暴走を許さないために文民統制が重要などと言いますが、選ばれた代表者自体が軍部の暴走を支持する者であったり、軍部を自分の為に動かそうとする者である場合は目も当てられません。それは結構な頻度で発生することで、今回それが韓国で起きたのです。
私は、韓国の統治体制に問題があるとか、韓国の民主主義が遅れているとか、韓国の為政者は碌な者がいないと言うつもりはありません。日本の民主主義のレベルの方が高いなどと言うつもりもありません。アメリカが勝っているわけでも、フィリピンが勝っているわけでもありません。民主主義というのは、全体主義より優れていると思うのですが、何でも解決してくれるわけではないのです。時として機能不全に陥ります。なぜだかとんでもない人物が選挙で勝利することがあります。それでも捨てるべきではないのです。どこの国でも、民主主義を捨てない限り、韓国で起こったような事態が発生する可能性があるわけで、それは遠い国の出来事ではないのです。
では、以下に和訳全文を掲載します。詳細は和訳全文をご覧ください。
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