アメリカ 鉄道ストライキ回避に政府介入!一旦ストライキは回避されたが、根本的な問題は解決せず残ったまま!

 本日翻訳して紹介するのは、the New Yorker Web版にのみ掲載のJohn Cassidyよるコラムです。タイトルは、”The Averted National Rail Strike Is a Parable of Contemporary American Capitalism”となっています。

 タイトルが示しているように、このコラムではアメリカの鉄道ストライキがバイデン政権の介入によって回避されたのですが、根本的な問題は何も解決していないということが論じられています。どんな問題かというと、労使の対立が根強いこと、経営側は潤っているのに労働者ばかりが割を食っていること、鉄道業界では特にそれらが顕著であるが他の業界も同様になりつつあることです。

 さて、このコラムによるとアメリカの鉄道業界で見られる問題点は、他の業界でも顕著になりつつあり、資本主義の弊害が顕著になりつつあるとのことです。アメリカの鉄道業界では、公益に資する事業であるからとして、かつてはガチガチの規制に守られていました。しかし、不正が頻発したことを受けて規制がほとんど撤廃されました。規制撤廃に伴い鉄道会社の経営陣はほとんと何でもできるようになりました。企業間の合併が自由にできるようになりましたし、赤字路線の廃止も簡単にできるようになり、貨物運賃も自由に設定できるようになりました。

 規制が撤廃された当初は、自由競争が促され、各社のサービスの質も上がって良いことだらけの様に見えました。しかし、実際にはそうではありませんでした。合併等が繰り返され、鉄道業界では大手7社が独占的な地位を占める体制となりました。そうすると各社は競争しなくなってしまいました。お互いが安定的に利益を残せる価格設定をし、価格の引き下げもサービスの向上も為されなくなってしまったのです。それと全く同じことが、実は、鉄道業界に先駆けて規制が撤廃されていた航空業界でも起こっていました。

 規制を撤廃したら業界内で各社間の競争が促され、一般消費者にとってもメリットがもたらされるようになると言われています。しかし、現実には必ずしもそうならないようです。では、なぜそうならないのでしょうか?次のメカニズムだと推測します。
 規制撤廃により競争が激しくなる。競争を乗り切るために企業の吸収合併が頻繁に行われる。最終的に数社による寡占体制が出来上がる。残った数社は比較的高い利益率を維持することができる。それに着目したバフェットのような目利きの投資家がそうした企業の株式を購入する。バフェトらは、株価が低位の内に、一般投資家が目を付ける前に株式を買い進めます。そうした投資家はモノ言う投資家でもあるので、経営陣に配当性向を高めるよう圧力をかける。経営陣は、高い配当性向を維持すべく、目先の利益を重視するようになる。設備投資は後回しにし、人員も削減される。利益が増えようが価格は下げない。こうして、高い配当性向が維持され、配当収入が増えて既に超リッチな投資家だけが潤うのです。

 さて、そうした業界では、労働者や利用者に利益が還元されることはありません。それがアメリカの鉄道業界や先駆けて航空業界で起きたことなのです。そして、同じことが今後他の業界でも起こるだろうと推測されます。直近ではアメリカの鉄道ストライキは政府の介入によって回避されたわけですが、それによって労働者が割を食ったように見えて仕方がありません。いや、政府が介入するんだったら労働者の権利をもっと重視する必要があったんじゃないかと思います。まあ、バイデン大統領からすると、とにかくストライキを阻止することしか頭になかったのかもしれません。というのは、インフレ率が高止まりしていて支持率が落ちているわけですから、ストライキで経済が麻痺するなんてことになったら目も当てられないからです。残念ながら、このような資本主義社会でおいしい目を見ようと思ったら、バフェットのように超リッチになって賢く投資するしかないのかもしれません。

 では、以下に和訳全文を掲載します。詳細は和訳全文をご覧ください。