昆虫の黙示録(insect apocalypse)って何?毛虫の研究が暗示する多くの昆虫に迫る絶滅の危機!

4.毛虫の不思議な生態

 毛虫から見れば、人間はつまらない存在です。人間の母親の体から絞り出された赤子は、大人を単純に小さくしただけのミニチュアでしかありません。大人も赤子も手足や付属する部分の大きさが違うだけで、基本的には同じ構造をしています。赤子は成長するにつれて、より大きく、より逞しく、より毛深くなりますが、それだけです。

 一方、毛虫は、常に変革を続けます。最初は、宝石のような小さな卵の形で生まれます。卵から出て最初の食事は自分の卵の殻であることがほとんどです。ある程度の大きさになると、最初の頭のすぐ後ろに2つ目の頭が生えてきます。それから、ダイバーがウェットスーツから抜け出すように、古い皮膚を脱ぎ捨てます(この過程で、古い頭は落ちます)。この作業を3回、4回と繰り返します。多い種では16回も繰り返します。そうして、全く新しい姿に変わっていくのです。例えば、アメリカ東部に生息するクスノキカラスアゲハ(spicebush swallowtail)は、成虫が白黒のまだらの斑点がある卵を産み落とします。この色彩のおかげで、鳥の糞と間違えられるので鳥に食われてしまうことがありません。3回目の脱皮後、いわゆる4齢(fourth instar)になると、全体が緑色(または茶色)になり、頭部に黄と黒の2つの斑点ができます。この斑点は不気味な目のように見えます。そうして蛇に擬態して、天敵に襲われないようにしているのです。

 毛虫は一定の齢期を過ぎると、毛虫ではなくなり、サナギ(puoa)になります。最後にもう一度脱皮して、硬い殻を作ります。その殻の中で、体は溶けていきます。そして、成虫円板(imaginal disks)と呼ばれる細胞の束から、新しい体が作られます。ある円板は足になり、ある円板は羽になり、ある円板は生殖器になるといった具合です。出現した成虫は、奇妙なことに、その記憶を除いて、幼い頃の面影はどこにも見られません。
 
 このような成長方法は、全身を大幅に急激に変化させる方法のことですが、太古の生物に特徴的で非常に古いものです。それは、約3億5千万年前の石炭紀(Carboniferous period)に登場しました。それがどのように進化したかについては、まだ詳しく分かっていないわけですが、このプロセスは非常に多くの種に採用されています。ガやチョウだけでなく、甲虫(beetles)、ハエ(flies)、スズメバチ(wasps)、ノミ(fleas)、カゲロウ(lacewings)なども完全変態(complete metamorphosis)で成長します。