本日翻訳し紹介するのはthe New Yorker のSeptember 2, 2019 Issueに掲載の記事です。タイトルは”The Rich Can’t Get Richer Forever, Can They?”(金持ちはより金持ちになり続けるのか?)です。拡がり続けるように思われる貧富の差についての記事です。
サブタイトルは”Inequality comes in waves. The question is when this one will break.”(不平等は波のように拡大、縮小を繰り返す。それが壊れるのはいつのことか?)です。Liaquat Ahamedによる寄稿記事です。この雑誌で掲載されたLiaquat氏の記事は、この記事だけのようです。金融関係の著作が沢山ある経済学者のようです。
2年ほど前の記事です。ちょっと古いのですが、岸田新首相が格差拡大の是正を狙うということを言っていたので、思い出して訳してみました。
アメリカは、建国当時は格差の少ない社会でした。欧州のように貴族や大富豪がいませんでした。そのことが誇りでした(とはいえ、それはあくまで白人だけの話でしたが)。しかし、徐々に富の集中が進んでいき、第1次世界大戦前には欧州と同じくらいの格差社会になって、一部の富裕層に富が集中するようになりました。
現在、私たちが生きている世界では、超富裕層は更にお金持ちになっていき、格差は拡大し続けるような気がします。超富裕層は個人で宇宙旅行を申し込んだりと羽振りの良さは桁違いです。ところで、格差は拡がり続けるというのは真実でしょうか?歴史を振り返ると、格差は拡がった時代も縮まった時代もあったようです。現在は格差が拡がっている最中です。1980年代のレーガンの新自由主義以降、格差は拡がり続けているとの数値があるようです。しかし、何かのタイミングで転換し格差が縮小に転じる可能性が無いわけではありません。過去に格差が縮まった時代がありました。天変地異や戦争などが理由である時が多かったようです。私のような小市民は戦争や天変地異で財産を失うと言っても金額にすれば僅かなものですが、一方で富裕層では桁違いの損失を被るでしょうから、格差が縮まるわけです。
では、なぜ格差は拡がるのでしょうか?それは富裕層は投資に回せる資産を沢山持っているというのが理由です。投資した資産の増殖率は、労働者の生産性の伸び率(≒賃金上昇率)よりも高いので、格差は拡がりつづけるのです。そこで、格差が拡大しないようにしようとすると、資産を子孫に引き継げないようにするために、資産への課税を強化したり相続税を上げることが考えられます。鎖国した一国であれば、それは上手くいくでしょう。しかし、資産課税強化をすれば、他の国の方が資産が増えやすいわけですから、その国への投資は減りますし、資金等が国外に流出してしまいます。その国は長期的に見れば衰退するしかありません。投資されない国イコール生産性が高まらない国ですからね。富裕層もいなくなるでしょうが、下々の労働者の給料は上がらず悲惨なことになるでしょう。
では、国が出来ることは何か?政策としてやるべきことは何か?ということですが、結論は好きにやるしかありません。正解は無いですから。各政党が国民に自党の政策を訴えて、多くの国民が望むことを実施するしかありません。大多数が富裕層ではないでしょうから、富裕層への課税強化や資産課税強化を望む声が多いかもしれません。この記事では、どんな政策をとるにしても、そもそも格差を是正することなんて不可能だということが書かれています。そりゃそうです、是正できるんなら、すでにやっているはずです。今まで出来なかったことは、残念ながらこれからも出来ないでしょう。
では、以下に和訳全文を掲載します。