本日 ドバイで開催 COP28 !まったく機能していないこの会議、やる必要ある?ちょっとだけあるかな?

The Weekend Essay

The Road to Dubai

ドバイへの道

The latest round of international climate negotiations is being held in a petrostate. What could go wrong?
まもなく気候変動に関する会議が石油産出国で開催される。会議は踊る、されど進まず?

By Elizabeth Kolbert November 25, 2023

1.今週 COP28が始まる

 COP1は1995年にベルリンの国際会議場(Berlin’s International Congress Center)で開催された。まるでディストピア映画のセットのような巨大な金属で覆われた複合施設に、約900人の各国政府代表団が、非政府組織からの約1,000人のオブザーバーとともに、1週間にわたる会議に出席した。ダイムラー・ベンツ(Daimler-Benz)は最先端技術を誇示すべく数台の電気自動車を持ち込んだが、若い活動家たちは自動車産業に対する抗議活動を繰り広げた。参加者たちは、太陽電池で動くボートに乗ってシュプレー川(the River Spree)を遊覧した。

 COP1は、この種の会議としては初めてのものであったため、手続き上のルールが定まっておらず、すべての決定はコンセンサス方式(ひとりでも反対意見を持つ者がいると、承認されない)によって下されなければならなかった。交渉の議長を務めたのは、当時ドイツの環境大臣だった若き日のアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)であった。最終日の本会議で公式声明を採択する段になって、サウジアラビアの代表が立ち上がって異議を唱えた。その場にいたあるジャーナリストによると、メルケルはそれを無視したという。メルケルは「全員賛成している。」と述べ、閉会を宣した。

 COPはこれまでに27回開催された。今週、ドバイ(Dubai)でCOP28が開幕する。回数を重ねるに連れ、COPは規模がより大きくなり、より複雑になった。COP28には7万人が集うと予想されている。ちょっとした都市の人口に匹敵する。その多くは各国政府やNGOの代表者である。ロビイスト、抗議活動家、報道関係者もたくさん来る。また、各国の代表の随行者も少なくない。多くの国や団体が、万国博覧会のようなパビリオンを何百万ドルもの資金を投じて設ける。それらや協賛する企業等が、サステナビリティにコミットすることをアピールする。今回、フィンランドが初めてパビリオンの建設をする予定である。主催者によれば、フィンランドは「環境技術の中心地(green tech hub)」のイメージの確立を目指しているという。OPECもパビリオンの設置を決めている。

 OPEC事務総長ハイサム・アル=ガイス(Haitham al-Ghais)は、パビリオンの設置が決定したことを発表した際に、「私は、 COP28で全ての声が議場に上がるよう願う。」と述べた。

 COPの規模が大きくなっているわけだが、同時にCOPが対処すべき問題も大きくなっている。1995年の世界の二酸化炭素排出量(carbon-dioxide emission)は230億トンだった。今年は約370億トンと予想されている。約60%の増加である。この間に、気候変動の観点からするとより重要な累積排出量は倍増している。多くの気象専門家が、地球がまだ重大な転換点(tipping points)を迎えていないとしても、近づきつつあることを認識している。最近では、「地球上の全ての生命体が危機に瀕している。」という表現が使われている論文を目にすることも少なくない。

 何と言っても参加者の数が膨大なわけで、これまでにさまざまな問題点が露呈している。この会議は全世界が気候変動に関して真剣に討議する年に1度の機会であるが、同時に、全世界が一致して気候変動に取り組むことができないことを示す機会ともなっている。COP28の議長を務めるのは、UAEの産業・先端技術相兼アブダビ国営石油会社(ADNOC)最高経営責任者(CEO)のスルタン・アフメド・アル=ジャーベル(Sultan Ahmed al-Jaber)である。このことは、石油産出国でさえ気候変動に対処する決意を固めたということを示しているのか?それとも、化石燃料の利権が世界を支配していて、COPでさえも牛耳っているということなのか?COPは過去に20回以上開催されたが、公式声明を出せなかったことがほとんどである。さまざまな意見が出て、異議が唱えられることが多いわけでが、立場や見解の相違をどのように乗り越えていくのかということを真剣に議論すべきである。手続き上のルールが採択されていないため、すべての決定をコンセンサス方式で下されなければならないのだが、何を持ってしてコンセンサスと見なすのかということも議論の的となっている。