5.機能していないCOPの今後?
COPの会合が始まってから30年経った。それ以来、気候変動に関する交渉が絶え間なく続けられているわけだが、残念ながら一貫して排出量は増え続けている。そんな状況であるから、否定的な報道も少なくない。次のような見出しを目にした。
COP27は責任逃れの言い逃れ(cop-out)の場?
(WAS COP27 A COP-OUT?)
責任逃れ会合27
(COP OUT 27)
世界の指導者たちが再び気候変動に関する言い逃れのために集う
(WORLD LEADERS HEAD FOR ANOTHER CLIMATE COP-OUT)
イギリスのクリス・スキッドモア(Chris Skidmore)下院議員が共著者に名を連ねる最新の報告書には、「一部の人々の間では、COPは失敗したというシナリオが定着し始めている。」との記述がある。こうした思いは、このCOPに関与している多くの者たち、各国政府高官等に共通のものである。今年の2月には、元フランス気候変動交渉担当大使でパリ協定の合意に貢献したローレンス・トゥビアナ(Laurence Tubiana)を含む外交官や気象専門家のグループが公開書簡を公表し、COPのプロセスの速やかな改革を求めた。
この書簡には、「合意に基づいてものごとを決めるCOPの仕組みは、漸進的な進展を目指すものである。」と記されている。「COPが至急解決すべき課題が膨大に存在していることを考慮すると、締約国間の合意を重視して緩慢にしかものごとを進められないCOP会合の仕組みは、まったく機能していない。課題と仕組みの間に完全なミスマッチ(mismatch)がある」。
このミスマッチとCOPが豪華で大掛かりになったこと(何万人もが世界中を飛び回っており、少なくとも数千万ポンドの二酸化炭素が排出されている)を考慮すると、COP会合を廃止する時期が来たのではないか。私はこの疑問をCOPに参加している研究者など10名に投げかけた。その内の何人かは、現状のCOPに対して非常に批判的であった。しかし、廃止すべきと考える者は1人もいなかった。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の関係者の1人は、「私たちの会合は全く機能していない。」と、不機嫌そうに私に語った。
「COP会合の仕組みについて、皮肉ったり、批判する人は決して少なくない。私も批判的な立場である。」と、カリフォルニア大学サンタバーバラ校(the University of California, Santa Barbara)の地球環境ガバナンスの専門家、レイモン・クレメンソン(Raymond Clémençon)は言う。「しかし、締結国をまとめ上げるための他の選択肢が存在しているわけではない」。
「COPは、最も脆弱な国々が参加できる唯一の場所である。」と、ドイツの国際気候政策特別代表を務めるジェニファー・モーガン(Jennifer Morgan)は私に言った。「それは、非常に重要なことで、そうした国々の意向を僅かながらも反映させることができる。排出量の多い国々がバヌアツ(Vanuatu)のような国々と同じテーブルに座る。そして、行動しなければどんな影響が出るかを聞くことになる。」。(南太平洋に浮かぶバヌアツは、海面上昇によって簡単に消滅する可能性がある。)
ニューデリーに拠点を置くインド政策研究センター(the Centre for Policy Research)のナブロズ・デュバシュ(Navroz Dubash)教授も同様の指摘をしている。「COP会合は、分配的正義(distributive justice:環境的リスク、影響、利益を公平に分配すべきであるとする概念)と脆弱な国々が議題として真剣に取り上げられる、あるいは真剣に取り上げられる可能性がある唯一の場所である」。
COP28で決定すべき事項の1つは、次のCOP29をどこで開催するかということである。これまでの慣例に従えば、東欧が開催地となるわけで、この時点で未だ決まっていないということは過去には無かった。しかし、ドバイのCOP28と東欧のどこかの国で開かれるCOP29でどんな成果があったとしても、あるいはまったく無かったとしても、COP会合は継続して開催される。既にCOP30の開催地は、ブラジルのベレン(Belém)市に決まっている。♦
以上