What COVID Booster Shots Can and Can’t Do
ワクチンのブースターショットでできることとできないこと
The epidemiologist Céline Gounder discusses Pfizer boosters and the latest science on additional doses.
疫学者のセリーヌ・ガウンダーが、ファイザーブースターと追加用量に関する最新の科学について話し合っています
By Helen Rosner
September 23, 2021
この8月にホワイトハウスはアメリカの全成人対象に新型コロナワクチンの追加接種(3回目)を開始するという野心的な計画を発表しました。ワクチン接種に肯定的な人の中にも、その計画に反対する人がちらほらといました。FDA(米食品医薬品局)のワクチン評価研究センターの2人の高官が、ホワイトハウスの計画に抗議の意を示し、辞任するとの報道もありました。また、WHO(世界保健機関)は、発展途上国など貧しい国々ではワクチン接種率が10%以下であるのに米国が3回目の接種を計画したことを非難しました。多くの批評家が、ワクチンの臨床データを見る限り、高齢者や免疫不全者でない限り、3回目の接種は必要ないと主張しています。水曜日(9月21日)に、FDAは、ファイザー社ワクチンの2回目接種を6か月以上前に完了し、65歳以上の者で、または、職業上もしくは健康上のリスクが高い人への3回目のワクチン接種をすることを承認しました。その後、CDC(米疾病管理予防センター)のワクチン専門委員会は、3回目接種の推奨に関して職業で線引きすべきでは無いとの声明を出していましたが、所長のロシェル・ワレンスキーは金曜日(9月23日)の朝にその方針を覆し、医療従事者や教育関係者等を含むフロントライン・ワーカー(最前線の労働者)だけ3回目接種が必須であると述べました。CDC は後にさらに指針を発表していましたが、50歳以上の人で基礎疾患のある者も3回目接種を受けるべきで、それ以下の年齢の者は医師と相談すべきとのことでした。CDC(米疾病管理予防センター)の所長が推奨したことが寄与し、3回目接種を希望する者はすぐにでも接種を受けられる環境が整いました。
今週、私はワクチンの3回目接種についてセリーヌ・ガウンダー(免疫学者でニューヨーク大学グロスマン医科大学院で感染症を研究している。また、バイデン政権の政権移行時に新型コロナ対策諮問委員会のメンバーでもあった。)と話しました。昨年の11月には、当誌のスタッフライターのアイザック・チョティナーがガウンダ―に取材をしていて、新型コロナの蔓延の第2波を防ぐにはどうすべきかを聞いたことがありました。今回は、巷で3回目接種に関して様々な情報が乱れ飛んでいますので、それについていろいろと確認してみたいと思いました。以下に私がガウンダ―と話した内容を記載していますが、編集の過程で書略したり、曖昧さを排除するため文言を修正した部分があることをご了承いただきたい。聞いたのは、3回目のワクチン接種でもっとも恩恵が大きいのはどういった人たちかということです。また、ブレイクスルー感染を防ぐための最良の方法についても聞きました。また、バイデン政権がワクチンのブースターショット(3回目接種)を推奨する背景についても尋ねました。
(質問)バイデン政権が数週間前に年齢、病歴、職業等に関係なくワクチンの3回目接種を承認した時、多くの疫学研究者や医師(あなた自身を含む)は不満を表明していました。様々な新型コロナワクチンに関するデータを見ると、ワクチンの効果は接種後時間の経過とともに低くなっていくことが明らかになっています。イスラエルのデータ等を見ても明らかになっています。ですから、3回目接種は非常に効果があると思うのですが、どうして反対しているのですか?
(ガウンダー回答)そのイスラエルのデータが当てはまるのは高齢者だけです。イスラエルの実験データが証明しているのは60歳以上に限定されています。確かに、60歳以上の人では接種後に時間の経過とともに免疫力が低下しています。それで、重症化したり、入院が必要になったり、死亡することもあるようです。しかし、高齢者以外にそれは当てはまらないのです。同じような実験が他の国々でも行われていて、同じことが証明されています。英国や米国や他の国の実験でも同じ結論が導き出されているのです。高齢者の骨や関節が脆くて弱くて張りが無いように、高齢者の免疫システムも生きが良くないのです。それで、ワクチンを接種しても若い人ほど恩恵を取り込めないのではないか、そんな風に考えられています。
新型コロナワクチンには、他のワクチンと同様にワクチンに典型的な現象が見うけられます。それは、ワクチン接種後に、即座に抗体レベルが大幅に上昇するということです。しかし、ワクチンを接種すると抗体レベルが上がる以外にも変化があります。あなたの免疫システムは、メモリーB 細胞やメモリーT 細胞などのメモリー細胞が形成されることによって免疫記憶(一度感染した病原体が再感染した時には、より早くその病原体を殺す仕組み)を獲得します。そのため、抗体レベルが時間の経過とともに低くなる可能性があるものの、メモリー細胞は減らず免疫記憶は消失しません。ですので、再びウイルスに感染してしまっても、メモリー細胞が作動し、再び抗体を急増させられます。問題は、免疫細胞が抗体を作るために活発に活動するのには3〜5日ほどかかるということです。その間に、ウイルスが複製を繰り返し体内で拡がる可能性は無きにしも非ずです。デルタ変異株の潜伏期間が4〜5日ですから、その間に体内でウイルスが増殖する可能性があるわけです。あなたの免疫システムが上手く機能してウイルスが体内で拡がる前に駆逐できれば良いのですが、それが上手く出来ずにブレークスルー感染して重症化する可能性もあるのです。
これは新型コロナワクチンに限ったことではありません。他のワクチンでも同様です。新型コロナワクチンは完全に感染を防ぐ”sterilizing immunity”(殺菌免疫)ことはありません。完全に感染を防ぐワクチンはほとんどありません。ほとんどのワクチンは、感染が拡がることと発症するのを防ぐだけです。現在、巷で3回目接種は効果があるのか否かが論じられています。確実に言えるのは、ある程度は感染拡大を防ぎ、重症化を防ぐだろうということだけです。それなのに、論点は、3回目接種が完全に感染を防ぐかということになってしまっているのが問題ですし、完全に防ぎきれないなら意味が無いという間違った主張も見られるのも問題です。ワクチン接種をしてもブレークスルー感染が起こるのは当たり前のことで、そんなことは事前に分かっているにもかかわらず、それはワクチンの欠陥だと言う人がいます。その辺の理解が拡がっていません。
(質問)ブースターショット(3回目接種)は必要ないとお考えですか?
(ガウンダー回答)ワクチンを接種したのに免疫力が低下して重症化したり入院したり死亡した人たちがいましたが、そうなった人たちは主に3分類できます。2つは、高齢者と免疫不全が酷い者です。それらの人たちは、ワクチンを接種しても免疫応答が経時劣化で弱まり、ウイルスから身体を守れないと考えられます。ですので、3回目接種をすることは理にかなっていて、それによって抗体レベルを高めるだけでなく、記憶細胞が形成されることも期待できます。それが長期的に有効でウイルスの侵入から身体を守ってくれるでしょう。
3分類の内の残り1つは、長期介護施設に入っている人たちです。その人たちに3回目接種をすることは理にかなっています。長期介護施設では、ブレークスルー感染が非常に多く発生していました。それは通常、ワクチン接種をしていない介護職員や来訪者が感染源でした。介護職員らは、仕事中や私生活でウイルスを拾って介護施設にそれを持ち込んでしまったのでしょう。それで、介護施設の入所者はワクチンを接種されたにもかかわらず、ブレークスルー感染してしまったのでしょう。介護施設の入所者は高齢者が少なくありませんし、リスクの高い持病のある者も多く、医学的な視点からすると、感染しやすい人たちです。介護施設というのは、そんな人たちが詰め込まれてウイルスが拡がりやすい環境なのです。
そうしたことを考慮すると、介護職員や施設への来訪者にワクチンを確実に接種することが出来れば、介護施設内でのウイルス感染防止では非常に効果が高いと思われます。入所者に3回目接種をするより効果があるでしょう。
(質問)あなたの見解では、先ほどの3分類から外れる人にとって、ブースターショット(3回目接種)は効果が無いということでしょうか?
(ガウンダー回答)もしワクチンを接種しても、抗体レベルが3〜6カ月間だけ一時的に高まるだけで、免疫記憶も時期に失われてしまうのであれば、長期的な免疫は獲得できません。そうであるなら、ワクチンを接種するか否かを決める際には、3〜6カ月間という一時的な効果の為にワクチンを接種すべきなのかということをよく検討しなければなりません。もし、何かの事情で密になりやすく感染者に囲まれやすい状況であるならば、3回目接種を受ける価値は高いと思われます。例えば、あなたがライカーズ島(ブロンクスの刑務所がある)のような場所にいるならば、絶対に3回目接種を受けるべきです。まさしく、ウイルスが伝播し感染拡大に持って来いの場所だからです。収容者全員にワクチンを接種して感染を防ぐべきです。強制的に接種するのも手段かもしれません。しかし、世間一般の人にだれかれ構わず強制的に3回目接種を受けさせるわけにはいきませんから、強制的に摂取する刑務所のように効果てきめんとはならないでしょう。現実的には、3回目接種を進めるよりも、まだ1度もワクチン接種をしていない人に接種させることの方が効果は高いと思われます。
(質問)リスクが低い人たちにとっては3回目接種はそれほど大きい恩恵がもたらされないことが種々のデータから明らかであるのに、どうしてホワイトハウスは全ての人に3回目接種を推奨しているのですか?
(ガウンダー回答)1日で現在のように大規模にワクチン接種可能な体制を構築できるわけではないということを認識する必要があります。大勢の人たちが関わっています。巨大製薬メーカーだけでなく、巨大薬品小売、巨大医療機関、保健当局などがワクチン接種の為に協力しあっているのです。それらの中には、このために従業員を増やしている所もあります。特に薬品小売は沢山新規雇用をしたようです。しかし、予想より3回目接種希望者が少ないため、人員を減らさなければなりませんでした。私が聞いた噂では、ホワイトハウスが3回目接種を推奨するというメッセージを発したのは、ワクチン接種の関係者に人員を確保したりするための時間的猶予を与えるためだったいうものでした。前もって分かれば、ワクチンの十分な数を確保したりするだけでなく、ワクチンの保管方法、配送方法の検討や、人員確保や場所の確保に動けますから。もっとも、ホワイトハウスのスポークスマンは、3回目接種の推奨に言及したのは、純粋に保健福祉省の医師等の見解に従ったものであるとしており、そうした意図があったとは言っていません。
(質問)高齢者や持病がある等でリスクが高い人でない場合には、3回目接種を受けることは明らかな欠点がありますか?あるいは、十分な利点がないとか?
(ガウンダー回答)欠点はおそらくありますね。ワクチン接種で心筋炎を発症する人が時々いましたが、若い男性に多かったんです。10代や20代の男性が多かったんです。ファイザー社とモデルナ社のワクチンのいずれでも発症例がありました。心筋炎は永続的な合併症を引き起こすような病気ではありませんが、短期的には不快感が残ります。3回目接種で心筋炎のリスクが高まるかどうかは現在までのところ分かっていません。非常に稀な症例であるため、リスクがどれくらいあるかを認識するのにも時間がかかるのです。3回目接種のもう1つの欠点は、コストです。ワクチン自体もコストがかかりますし、接種するための場所代や人件費等々を入れたら、それこそ莫大な費用です。
利点は何ですかね?あなたがすでに2回ワクチン接種を受けている場合、3回目接種をしても得られる利点は少ないと思われます。それよりもワクチンを未だ1度も接種していない人に接種した方が利点は大きいでしょう。ワクチンを接種して免疫力を上げることも重要ですが、地域全体の感染者を減らすべく接種率を上げることも重要ではないでしょうか。あなたが、既に2回接種しているのであれば、既に免疫力は上がっているわけですから、何があなたにとって重要かというと、回りの感染者が減って感染のリスクが低くなることです。ですので、自分が3回目接種を受けるより未接種者への接種を進めることの方が重要なはずです。
(質問)ワクチンの最も有効な使い方は?
(ガウンダー回答)ワクチンの供給はまだまだ不足している状態です。米国でも十分ではありませんし、世界中で不足しています。アフリカでは接種率は4%未満ですので、今後もしばらくは変異種を生み出し続けるでしょう。そのことは、全世界のパンデミックからの回復の脅威となりかねません。寛容さを示せと言っているわけでもありません。実利的な観点から言っているのです。アフリカにワクチンを回すことは自国の利益に繋がるのです。なかなか、遠いアフリカ大陸のことに関心を持つのは難しいことかもしれません。しかし、まだ、ワクチンを接種できていない人たちに、米国外には沢山いますが、関心を持って欲しいと思います。
(質問)ファイザー社だけがすぐにでも3回目接種用のワクチンを供給できそうです。モデルナ社やジョンソンエンドジョンソン社のワクチンを接種済みの大くの人たちも、ファイザー社のワクチンを追加接種したいと言っています。CDC(米疾病対策管理センター)のワクチン評価委員会の一部のメンバーが、異なるワクチンの組み合わせ接種する案を支持しているようですが、どうお考えですか?
(ガウンダー回答)組合せ接種にアストラゼネカ社のワクチンが最適であるというデータがあります。アストラゼネカ社ワクチンを接種済みの者が、組合せ接種で3回目接種でファイザー社かモデルナ社のいずれかのワクチンを使うと具合が良いことが示されています。ファイザー社とモデルナ社のワクチンはヨーロッパではほとんど接種されていません。ヨーロッパでは主にアストラ・ゼネカ社ワクチンが接種されています。アストラゼネカ社ワクチンは、ジョンソンエンドジョンソン社ワクチンに最もよく似ていると言われています。どちらもアデノウイルスベクターワクチンだからです。ファイザー社かモデルナ社のワクチンを接種済みの者が組合せ接種の3回目接種でアストラゼネカ社ワクチンを接種すると最も強固な免疫力が備わると考えられています。ジョンソンエンドジョンソン社ワクチンを接種済みの者が組合せ接種で3回目にファイザー社かモデルナ社のワクチンを接種した場合にも同様に効果が高いと推測していますが、未だ分析中ですので現時点では評価は申し上げられません。現在、NIH(米国立衛生研究所)で研究中です。
もう1つの非常に重要な質問は、ファイザー社かモデルナ社のワクチンを接種済みの者がジョンソンエンドジョンソン社ワクチンを接種した場合に効果が高いか否かということです。今のところ、まだその答えは分かっていません。まだ研究中なのです。多くの人たちがその答えが出るのを本当に待ち焦がれていることを私は知っていますが、何分にもデータが不足していて現時点で評価するのは非常に困難です。「常識的に考えたら、組合せ接種でジョンソンエンドジョンソン社ワクチンを先に接種したら免疫がより強固になるのなら、後に接種しても同様に免疫は高まるだろう。」と言いたいところです。でも、医学界では昔から「常識的に考えたら」ということが、その後の研究で誤りであると判明することがしばしば発生してきました。ですので、データが出揃って分析するまでは確かなことを申し上げることはできないのです。
和訳全文は以上、英文全文を以下に掲載します。