本日翻訳して紹介するのはthe New Yorker の February 6, 2023 Issue に掲載の記事です。タイトルは、”When Law Enforcement Alone Can’t Stop the Violence”(法執行機関だけでは犯罪を防止できないとき)となっています。
Alec MacGillis による記事でした。氏は、新聞の社会面に載るような内容の記事をしばしば寄稿しています。いわゆるルポルタージュというものです。また、氏は ProPublicaにも記事を多く寄稿しています。今回の記事も ProPublica でも配信されているようです(syndication distributes:シンジケート配信)。氏は、政治とか経済とか特に専門的な知識があるわけではないようですが、記者とての技能に秀でていて、興味を持った事項について取材して、それを記事として雑誌等に発表しています。この記事のスニペットは、”Amid a murder crisis in America, community-based solutions have received a flood of funding. How effective are they?”(殺人事件が減らないという危機にあるアメリカで、コミュニティに根ざした取り組みに多額の資金が投じられています。効果は挙がっているのでしょうか?)となっています。
さて、この記事は、アメリカの各都市で行われている犯罪遮断プログラムに関するものです。日本では、同じような取り組みはありません。日本だと殺人事件があったら、警察が捜査して、逮捕して終わりです。犯罪防止のための組織を立ち上げても、やることないですからね。直近で締まった年度の東京都の数値を見ると、100万人当の殺人件数は9件弱です。100万人で月に1回も発生しない事象ですので、当事者になりそうな者に働き掛けしたくても、誰に働き掛けしてよいか分からない状況になってしまいまう。一方のアメリカですが、例えばシカゴ市(人口270万人弱)では年間600件も殺人事件が発生した年もあるのです。ですので、これを少なくすることに取り組むことは非常に意義のあることで、多少お金をかけてでも成果をあげてもらいたいものです(※東京都の年間9件弱という数字はあくまで殺人事件として認識された件数です。実際にはもっと発生している可能性もあります。)
私がこの記事を訳して日本と違うなと思ったのは、殺人事件を犯した人物が各都市の実施している犯罪防止プログラムの要職に就いていることが多いという点です。ドラッグの売買で揉めて相手を撃ち殺した人物が結構な要職に就いていたりしました。いや、私の感覚だと、日本では、そんな人が重要な地位をしめると、殺された遺族がいたたまれない気持ちになるので反対されるような気がします。まあ、殺人を犯したとは言え、刑期を終えれば何をしても差し支えないのかもしれませんが・・・。
さて、アメリカでは、セーフ・ストリート・プログラムという犯罪遮断プログラムが多くの都市で取り組まれています。で、殺人を犯して服役したことがある人物などが協力者として関与しています。協力者に相応しいとされるのは、昔ギャングのメンバーで、殺人を犯した経験があり、なおかつ人脈の広い人物です。暗黒街の顔役?だったような人物です。そんな人が協力者となって、ギャングの間で抗争があった際などに出張っているとのこと。攻撃された者に報復をしないよう説得します。また、報復されそうな側にも接触して詫びを入れさせたりします。これが結構成果をあげているようです。どんな説得をしているかは記されていませんでした。しくじり先生、俺のようになるなみたいな感じで説得しているのでしょうか?
これが、上手くいっているというのならば、殺人以外の事件の防止にも同じ手法を適用できるんじゃないでしょうか。私が思うに、性犯罪を犯してしまった者で刑期を終えて立派に更生した人物が、性犯罪を犯しそうな人物を説得して思いとどまらせたら性犯罪の件数を減らせるような気がします。ただ、問題があります。殺人を犯しそうな者を見つけるのは比較的簡単なのですが(ギャング間の紛争で誰かが殺されれば、報復でやられた側のギャングのメンバーが殺人を犯す可能性があると推測できる)、性犯罪を犯しそうな人物を特定するのは難しい気がします。ですので、性犯罪を犯さないように説得しようにも誰を説得すれば良いのかがわからない状況になります。ですので、結局無理ですね。
では、以下に和訳全文を掲載します。詳細は和訳全文を掲載します。