Dept. of Transportation June 6, 2022 Issue
When Shipping Containers Sink in the Drink
輸送用コンテナが大量に海に沈んでいる
We’ve supersized our capacity to ship stuff across the seas. As our global supply chains grow, what can we gather from the junk that washes up on shore?
海上輸送される物量は飛躍的に増えています。グローバルなサプライチェーンが拡大するにつれ、岸にはさまざまなものが打ち上げられている。
By Kathryn Schulz May 30, 2022
1.コーンウォール・ドラゴンって知ってる?
英国のコーンウォール州南部の海岸線は、伝説の怪竜ドラゴンの生息地として有名です。黒ドラゴンは非常に珍しく、緑ドラゴンはもっと珍しいとされていて、熱心なドラゴン・ハンターでさえ、一生かかっても一匹も出会えないこともあるそうです。ヨーロッパ大陸の神話に登場するドラゴンとは異なり、コーンウォール・ドラゴンは財宝を蓄えることもなく、火も吐かず、翼もないため飛ぶこともできません。コーンウォール・ドラゴンは、海に住んでいる水棲生物で、かなりの距離を移動することができるようです。シアーシャ・ローナン(アイルランドの女優)のようにチェジル・ビーチで目撃されたドラゴンもいれば、ワッデン海に浮かぶオランダの無人島グレンド島に住み着いたドラゴンもいます。しかし、ほとんどのドラゴンは、イングランド南西部の風が吹き抜けるビーチに引き寄せられるようです。ポートウィンクルやペランポート、ビッグベリーベイやガンワローなどの海岸です。もし自分でコーンウォール・ドラゴンを探したければ、それは体長3インチほどで腕と尾がなく、レゴ社製であるということを認識しておくと良いでしょう。
コーンウォール州にコーンウォール・ドラゴンがたくさん居るのは、トキオ・エクスプレス号が原因です。それは、コンテナ輸送船です。1997年2月にロッテルダムから北米に向けて出航したのですが、ランズ・エンドの20マイル沖で悪天候に見舞われました。大波の中で船体が大きく揺れ、積んでいた62個のコンテナが荷崩れを起こして海に落下してしまいました。落下したコンテナの中の1つには、レゴ社製の小さな製品等が入っていました。正確な個数が判明しています。4,756,940個も入っていたのです。その中には、ドラゴン(黒ドラゴン33,427個、緑ドラゴン514個)も入っていました。運命的なことだと思うのですが、ドラゴン以外の製品の多くは海をテーマにしたものでした。コンテナが船から滑り落ちた後、海中に大量の小さなレゴ社製品が放出されました。さまざまな形のものがありました。スキューバダイビング時の酸素ボンベ、スピアガン(水中銃)、ダイビング用足ヒレ、タコ、帆船のマスト、潜水艦、サメ、舷窓、救命ボートなどでした。また、レゴ愛好家の間ではラープ(lurp)と呼ばれている小さな醜い岩のブロック(Little Ugly Rock Pieces)やバープ(burp)と呼ばれる大きな醜い岩のブロック(Big Ugly Rock Pieces)も放出されました。トキオ・エクスプレス号には、前者が7,200個、後者が11,520個積まれていたそうですが、全てが海中に放り出されたことが分かっています。それからまもなく、多くのヘリコプターのパイロットから、ケルト海の海面を見下したところレゴ社製品の塊(a slick of Lego)が見えたとする報告がありました(“fish(魚)”や”offspring(子孫)”や”sheep(羊)”といった名詞と同様に、”Lego(レゴ)”も単複同形のようです)。しばらくすると、トキオ・エクスプレス号から流出したものの一部が、コーニッシュ・ビーチなどに流れ着くようになりました。
人類は、海に進出して以来、つまり少なくとも1万年から10万年以上もの間、絶えず船からさまざまなものを海に落とし続けています。しかし、トキオ・エクスプレス号から約500万個のレゴ社製品が船から転落したようにコンテナごと海に落ちる事故が起きるようになったのは、せいぜい1950年代以降のことです。そうした事故を海運業界では「コンテナ・ロス」と呼んでいます。厳密に言うと、コンテナ・ロスという語は、何らかの理由でコンテナが目的地にたどり着けなかったことを意味します。港で盗まれたとか、船上火災で燃え尽きたとか、海賊に奪われたとか、戦争で爆破された時などにも使われます。コンテナ・ロスで一番多いパターンは、海中にコンテナが沈んでしまうというものです。船からコンテナが落下してしまうこともあれば、コンテナが船ごと沈没してしまうこともあります。
コンテナ・ロスの様態はさまざまで、原因もさまざまです。コンテナ・ロスが起こる原因の1つは、コンテナの数が非常に多いことにあります。現在、約6,000隻のコンテナ輸送船が常に海洋上に浮かんでいます。コンテナ輸送船も大きなものになると一度に2万個以上のコンテナを運ぶことができます。世界中のすべてのコンテナ輸送船を合計すると、1年間に2億5千万個のコンテナを運んでいます。このような膨大な数ですので、事故が起きないわけがないのです。その上、海上輸送には、常にさまざまなリスクが付き纏います。スコール、時化、ハリケーン、大波、浅い岩礁、船の故障、人為的ミス、海水や風による船体腐食などです。ですので、膨大な数のコンテナの一部が海の中に消えてしまうことは、避けられないことなのです。ところで、海中に消えてしまうコンテナの中身はどういったものなのでしょうか?また、海中に投げ出されたコンテナの中身はその後どうなるのでしょうか?経済的な損失や環境への影響があるのか否か?また、あるとしたらどれくらいの規模なのでしょうか?