整いました!AIとかけてマッキンゼーととく!その心は?共に資本家を太らせ格差を拡大します!知らんけど・・・

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 マッキンゼーで以前にパートナーをしていた人物が同社の行動を擁護するために、「マッキンゼーは、政策を立案・決定しているのではなく、実行をしているのです。」と言っていました。しかし、これはかなり薄っぺらい言い訳です。残念ながら、有害な政策が決定されるのは、コンサル会社や新しいテクノロジーが、それを実行する方法を提案するときに行われやすいのです。現在稼働しているAIの多くは、企業が労働者を解雇するのをより容易にしています。では、解雇を難しくするAIを開発する方法は存在しているのでしょうか?

 社会学者エリック・オリン・ライト(Erik Olin Wright)は、著書”“How to Be an Anticapitalist in the 21st Century(未邦訳:「21世紀に反資本主義者になる方法」の意)の中で、資本主義の害に対応するための戦略をいくつも記しています。その中に、「資本主義をぶっ壊す」、「資本主義を解体する」という2つの戦略があるわけですが、この2つはおそらく今回の議論とはまったく関係なく、対象外であると言えます。より今回の議論に関連していると思われるのは、「資本主義を飼いならす」、「資本主義に抵抗する」という2つの戦略です。大雑把に言うと、「資本主義を飼いならす」というのは政府が適切な規制をすることで、「資本主義に抵抗する」というのは草の根レベルの市民活動や労働組合活動をするということです。AIがそうした戦略が実行されるのを支援する方法はあるのでしょうか?AIが労働組合活動や市民活動に力を与える方法はあるのでしょうか?

 1976年、英国バーミンガムのルーカス・エアロスペース社(Lucas Aerospace Corporation)の労働者たちは、国防費の削減によりレイオフの危機に直面していました。この状況に反応して、労働組合の職場代表(shop stewards)たちが、ルーカス プラン(Lucas Plan)として知られる文書を作成しました。150個の「社会的に有用な製品(socially useful products)」が記されていました。人工透析機(dialysis machine)、風力発電機(wind turbine)、自動車のハイブリッドエンジン(hybrid engines for car)などです。労働者をレイオフするのではなく、既存の工場の設備と労働者の熟練スキルを活かせば、それらを作ることができるという提案でした。結局、ルーカス・エアロスペース社の経営陣はこの提案を拒否したわけですが、労働者が資本主義をより人間らしい方向に導こうとした例として多くの人の記憶に残っています。現在、多くの労働者がAI関連テクノロジーの進化によってルーカス・エアロスペース社の労働者のようにレイオフや解雇の危機に直面しているわけですが、おそらく、ルーカスプランのような提案を出すことは可能であると思われます。

 資本主義は、いつの時代にも現在のように有害なものなのでしょうか?必ずしもそうではないかもしれません。第二次世界大戦後の30年間は、資本主義の黄金時代として知られています。黄金時代になったのには、当時の政府の政策が非常に優れていたということも理由の一部ですが、他の理由の方が貢献度が大きかったと思われます。当時の企業文化は現在のそれとは異なっていました。1953年以降のゼネラル・エレクトリック(General Electric)社の年次報告書には、納税額と給与支払総額が自慢気に記載されていました。また、「雇用の安定を最大化することは、当社の主要な目標である。」と明記されていました。ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)社の創業者は、「株主に対する責任よりも、従業員に対する責任の方が重い。」と語っていました。当時の企業は、自社が社会で果たすべき役割について、現在の企業とは根本的に異なる概念を持っていたのです。

 企業が以前のような価値観に立ち返るなんてことが起こり得るのでしょうか?可能性は低いと思いますが、資本主義の黄金時代は、金ぴか時代(Gilded Age:19世紀後半の、南北戦争 が終結して人口が増加し、経済が史上最も高い成長率を記録した時代)に富の不平等が極大化した後に訪れたことを思い出して欲しいと思います。今現在は、私たちは2度目の金ぴか時代を生きていると言えるのですが、富の不平等は1913年当時とほぼ同じレベルまで拡大しています。ですから、今いる場所から第二の黄金時代へ行くことは不可能ではありません。もちろん、最初の金ぴか時代と資本主義の黄金時代の間には、世界恐慌(Great Depression)と2度の世界大戦(World Wars)がありました。加速主義者なら、資本主義の黄金時代を実現するためには、大恐慌や大戦は必須の出来事だったと言うかもしれませんが、多くの者が、そのようなステップはできれば回避したいと思っています。現在私たちが抱えている課題は、世界恐慌や大戦の経ずに資本主義の黄金時代を到来させるために、どのようなテクノロジーを開発すべきかを考えることです。

 私たちは皆、資本主義システムの中で生きているわけですから、好むと好まざるとにかかわらず、資本主義に参加していることになります。そして、一個人が、何か資本主義を良くするためにできることはないかと考えることはもっともなことです。もしあなたがフリトレー(Frito-Lay)社で研究者として働いていて、ポテトチップの新しいフレーバーを考えるのが仕事だとしたら、私は何と言うでしょう?私は、無駄に肥満児を増やす仕事だから、そんな会社は退職した方が良いなどとは言いません。あなたは、食品の研究者として研鑽を重ねて得たスキルを活かして、お客さまに至福の瞬間を届けようとしているのです。それで、生計を立てているなんて、とても素晴らしいことだと言いたいです。

 しかし、AIの研究開発に携わる者の多くが、ポテトチップスの新しいフレーバーを開発するよりもAIの開発が重要だと考えています。彼らは、AIは世界を変えるテクノロジーだと主張します。そう主張するのであれば、彼らには、AIが世界を悪くすることなくより良くする方法を見つける義務があります。AIは、人類を社会崩壊の瀬戸際に追いやるのではなく、現在の不公平や格差を改善することができるのでしょうか?もし、AIがその支持者が主張するほど強力なツールであるならば、彼らは資本主義の冷酷さを弱めるようなAIの使い方を見つけることができるはずです。

 願いを叶える精霊の話(先述のミダス王の逸話のこと)から学ぶべき教訓は、努力せずに何かを得ようとする欲望こそが真の問題であるということです。さて、映画「魔法使いの弟子(The Sorcerer’s Apprentice )」を思い出してほしいのですが、その映画では、弟子が魔法をかけて箒に水を運ばせますが、弟子は箒にそれを止めさせることができなくなりました。この話から得られる教訓は、魔法は制御することが不可能であるということではありません。この映画では、魔法使いが戻ってきて、弟子が生み出した混乱をすぐに解決してくれます。ここで得られる教訓は、大変な仕事から逃げてはダメだということです。弟子は雑用から逃れたいと思って楽をしようとした結果、トラブルに巻き込まれてしまったのです。

 AIを魔法のように問題を解決してくれるものだと解釈する人は少なくありません。より良い世界を築きたいのだが、そのために困難な仕事をするのは嫌だという魂胆が透けて見えるような気がします。その困難な仕事とは、富の不平等を小さくしようとすること、資本主義を飼いならすことなどです。その中でも、科学技術者にとって最も困難な仕事は、つまり最も避けたいと思う仕事は、テクノロジーが多く生み出されれば全てが良くなるという思い込みや、いつも通りのビジネスを続ければすべてがうまくいくという思い込みを疑うことだと思われます。世界の不公平に加担していると考えることは誰にとっても楽しいことではないかもしれませんが、世界を揺るがすようなテクノロジーを生み出す人たちは、批判的な目を持って自己点検をすることが必須です。その人たちがAIを開発する際に自らの役割を冷静に見つめようとするか否かが、重要なのです。それが、AIがより良い世界をもたらすか、より悪い世界をもたらすかを決めます。♦

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