渡航制限って効果ある?海外からの入国者を制限することでオミクロン株の感染拡大を防ぐことが出来るか?

 本日翻訳し紹介するのはThe New YorkerWeb版にのみ掲載のコラムで、タイトルは”Will the Omicron Travel Restrictions Work?”(渡航制限でオミクロン株の感染拡大を防ぐことが出来るか?)です。12月4日に投稿されたコラムで、渡航制限は効果があるか否かが記されています。

 Benjamin Wallace-Wellsによる寄稿記事です。Wallace-Wellsは結構まめに記事を書く人で非常に多作です。サブタイトルは、”Attempts to slow the pandemic by screening international arrivals have a mixed record of success.”(感染拡大防止のために海外からの流入者を制限する試みは、成功することもあるし失敗することもある。)です。オミクロン株が出現したので、各国で渡航制限措置をとっていますが、それが効果があるか否か?ということが記されています。まあ、結論から言うと効果はあります。オミクロン株が出現する前、ニュージーランド、オーストラリア、日本、台湾等が米欧諸国より厳しい渡航制限をしていましたが、これらの国では感染者数も死亡者も少なかったです。オミクロン株でも渡航制限は感染拡大防止の手段として有用だと思われます。

 しかし、渡航制限するにしても素早くやらなければ意味が無いというのも事実です。ある程度、国内に感染者が増えた場合、既に感染源となる者が国内に沢山いるわけですから、渡航制限などしても意味など無いのです。

 さて、私がこの記事を読んでなるほどなと感心した点は次の4点です。

  1. 新型コロナのように感染から明確な症状が出るまで数日かかるような感染症では、渡航禁止を実施すべきであると気付くような事実が判明した時点で、渡航禁止策を取っても既に手遅れである。非常に皮肉なことです・・・
  2. WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長が、南アフリカ等に対する渡航制限は課すべきでないと表明したが、全く支持できるものではない。WHO(世界保健機関)は感染症を防ごういう意識が弱いことは残念。人々の健康より政治が優先してしまっている。
  3. 新型コロナの感染防止(オミクロン株含む)では、渡航制限策は有効。
    エボラ出血熱のように感染者が高熱となり容易に特定できる感染症の場合には、渡航制限をする必要はない。特定された者だけの渡航をやめさせれば良いのだから。しかし、新型コロナのように感染者を特定できない感染症の場合には(実際、パンデミックの初期に、武漢から大量の無症状の感染者が米国に流入してしまった)、渡航制限策を取って国外からの流入を一斉にストップしなければ感染者の流入は防げない。
  4. このコラムの時点の米国でオミクロン株の感染が確認された者は1名のみであるが、実際には数千人と推測される。おそらく世界中に既にかなりの感染者がいると推測される。
    新型コロナパンデミック第1波の時も米国で1人の感染が確認された時点で、後知恵だが実際には数千人の感染者がいたことが判明している。オミクロン株も同様になる可能性が高い。また、南アフリカからアムステルダムへの直近の2便600名の乗客の感染率は5%であったが、その2便と同時期に南アフリカから飛び立った飛行機は数多く、それらも同程度の感染率と推測される。


 さて、いずれも冷静に考えると当たり前のような気もしますが、私はあまり認識出来ていませんでした。このコラムを読んで思ったのは、オミクロン株の出現後の日本の対応はどうだったかな?ということです。岸田首相はオミクロン株出現を認識後に即座に渡航制限をしました。非常にスマートな判断だったと思います。なにせ渡航制限はスピードが第一ですから。でも、WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長が渡航制限を推奨しないと表明したことを受けて、制限を少し緩くしました。テロドスが間違っているのだから、緩める必要など無かったのではないかと思わなくもないです。しかし、日本だけ極端な政策をとるわけにもいかず致し方なかったのかなと思いました。

 では、以下に和訳全文を掲載します。