渡航制限って効果ある?海外からの入国者を制限することでオミクロン株の感染拡大を防ぐことが出来るか?

2.バイデン政権のオミクロン株に対する対応

 私は火曜日(11月30日)のホワイトハウスで行われた新型コロナに関する記者会見に注目していました。バイデン政権で新型コロナ対策調整官を務めるジェフ・ザイエンツは、毎回発表しているワクチンに関する数値を読み上げました。アンソニー・ファウチ博士もプレゼンをしました。「次のスライドをお願いします。」というファウチ博士の乾いた声がやたらと耳に付く感じがしました。注目を集めたのはオミクロン株に関することでした。依然として、バイデン政権の「オミクロン株は懸念の種ではあるが、パニックの種ではない。」というスタンスは変わっていませんでした。プレゼン資料のページを繰りながら、ファウチ博士は、オミクロン株の本質的な特徴の多くがまだ解明されていないことを強調しました。特徴というのは、感染力、重症化度、抗体回避能力等です。新型コロナのパンデミックに関する記者会見では良くあることなのですが、ところどころに言っていることに矛盾というか綻びが見られることがありました。CDC(米国疾病管理予防センター)所長のロシェル・ワレンスキーはオミクロン株に備えてワクチンの3回目接種を進めることが最も良い対策であると言っていたのですが、不思議なことにCDC(米国疾病管理予防センター)はこれまでワクチンの2回接種の推奨をそれほど強力にはしていませんでした。また、バイデン政権はオミクロン株は非常な脅威であると認識しており、緊急渡航制限が必要であることを認識しているのに、どうして部分的に制限するだけで全面的な制限に踏み切らないのでしょうか?

 バイデン政権が新型コロナ対策の舵取りをするのは容易なことではありません。米国内は保守派とリベラルな勢力との間の対立が激しいので、何をするにも両にらみで行わなけらばならないという面倒な状況に陥っています。バイデン政権が最大限の感染防止策を実施しようとしも、リベラルな勢力と保守派の両方が満足することはなく、片方が反発してしまいます。そうした状況ですので、ワクチン接種率がなかなか高くならないという状況に陥っています(共和党が優勢な州ではワクチン接種率が低い)。そのせいで、善後策的にさまざまな手段を講じなければならなくなっています。マスクの着用、ワクチン接種推進、学校の閉鎖、室内イベントの制限などです。しかし、それらの手段は完全には実施されていません。保守派の反発に対応して強制力を伴わない形で行われています。また、現在日本などの環太平洋諸国が厳格な渡航制限策をとっている状況ですが、米国では渡航制限を強化することに対して根強い反発があります。保健衛生当局は本来ならば国民の生命を守ることを優先すべきです。ですので、厳しい渡航制限を課したいのでしょうが、個人の自由を侵害するとして激しい批判に晒されることが予想されるので、それには踏み切れないようです。米国は自由主義の国ですから、それも致し方のないことかもしれません。やはり、強制的な手段をとるというのはなかなか難易度が高いようです。

 今後、オミクロン株の詳細が明らかになって、その毒性が高く(重症化する可能性が高く)、ワクチンによる抗体を回避する能力が高い場合には、バイデン政権の新型コロナ対策のかじ取りはさらに難易度が高まります。2020年の大統領選挙が終わってからバイデン大統領が就任するまでの数週間の政権引き継ぎ時にもガウンダーは新型コロナ関連で関与していました。ガウンダ―は言いました、「しばしば例えられるのですが、保健衛生当局の施策というのは、調光器のスイッチのようなものなのです。状況に応じて少し出力をアップしたりダウンしたりすることが必要なのです。また、新たな疫学的な知見が得られた場合などにはその都度出力を調整しなおさなければならないのです。直近で新たな変異株が出現したのですから、本当は新型コロナ対策を強化しなくてはならないのですが、再び渡航制限や検疫を強化するのはなかなか難しい状況です。一方通行の道路のようなもので、一度緩めてしまった対策を再び強化するということは非常に難しいのです。どうしても反発されますから。ですので、本当に対策は緩めるべきではなかったのです。」と。しかし、現状は制限を一度緩めてしまった状況で、なおかつ、新たな懸念材料が見つかった状況ですので、再び制限を強化するしかない状況です。ガウンダ―は言いました、「バイデン政権は本当に難しい選択を迫られています。国民の生命を守るために手を打ちたい状況なのですが、その国民の反発がゆえに実効力のある対策が打てない状況に陥っているのです。」と。

以上