本日翻訳して紹介するのは、the New Yorker のWeb版にのみ掲載のDanny Funtによる寄稿記事です。タイトルは、”Betting on Elections Can Tell Us a Lot. Why Is It Mostly Illegal?”(選挙に関する賭博は何故禁止されているの?)です。
Danny Funt氏の記事がthe New Yorker に寄稿されたのは2回目です。今年の2月にはNFLの賭博に関する記事がWEb版で取り上げられていました。氏は、純粋に賭博が好きなようです。さて、本日紹介する記事は、選挙結果に関する賭博に関する記事でした。現在、アメリカでは選挙結果に関する賭博は、アイオワ大学の仕切りで実験的に細々と行われているのみです。あくまで学術的な研究の為の賭博で、一度に賭けることができる金額にも上限が設けられています(形式上は、賭博ではなく、選挙結果の予測の売買をする取引所を運営している形となっています)。商品先物取引委員会(CFTC)の管轄下にあっったのですが、その取引所を閉鎖するよう指示が出されています。
そのような指示が出た理由は、色々とあるようです。日本でも選挙結果に関する賭博は禁止されていますから、当然のことだと私は思いました。しかし、オーストラリア等では認められており、そうした国で選挙に悪影響が出たかと言うと、全くそんなことは無いようです。想定されていたデメリットは、選挙で勝利が固そうな候補者が、自分が負ける方に賭けて、故意に負けるような行動をするということでした。そうした一攫千金を狙うという事例が発生するのではないかと危惧されていました。しかし、オーストラリアでは、そうした事例は一度も発生していないようです。むしろ、メリットの方が多いようです。
では、選挙結果に対する賭博が解禁された場合のメリットは何でしょうか?この記事に書かれていたのは次の2つです。
- 選挙結果に関する賭博を解禁することで、選挙自体に対する興味が高まります。候補者の主義、主張に耳を傾けたり、候補者の背景を知ろうとする人が増えます。
- 選挙によって政権交代が起きると経済的損失を被る可能性が高い人は、政権交代が起きることに賭けることによってリスクをヘッジ出来ます。
しかし、どうなんでしょうかね?1つ目のメリットである選挙結果が賭博対象となることで政治への関心が高まるという点に関して私は同意できません。そもそも賭けないと興味が持てないことが問題だと思うのです。アメリカでは、イギリスや日本と違って競馬の人気が非常に低迷しています。その理由は、動物虐待にあたるとして非難されていることと、他のスポーツより魅力がないことです。選挙結果に対する賭博が解禁となっても勝手に人々が政治に興味を持ってくれるわけではないのです。
また、2つ目のメリットである政権交代等で被る経済的リスクをヘッジするというのは、そもそもそんなことする必要あるんでしょうか?どこか地方都市で建設会社を経営していたりしたら、選挙で市長が開発推進派から開発反対派に代わるば仕事が減って困るかもしれません。例えば、開発反対派の候補が市長選で勝ちそうだから、賭博でリスクをヘッジしようとしたとします。その場合、その賭博のベッティングでは、開発反対派に賭ける者が多くなるでしょうから、そのオッズは低くなるはずです。ですから、相当な金額を賭けなければならなくなってしまいます。全く割に合わないと思います。
さて、現在、アメリカで実験的に行われている選挙結果の予測の売買(実質的には賭博と同じ)では、ベッティング状況は非常に正確に結果を暗示していることが多いようです。いわゆる群衆の知恵が働いているようです。残念ながら、専門家があらゆるデータを分析したり、アンケートを膨大に実施して予測するよりも、ベッティング状況の方が実際の選挙結果に近いのです。ただし、群衆の知恵が働くには、個々人がお互いに影響されることなく独自に判断し予測することが必要で、そうでない場合(スポーツ賭博等ではしばしば起こる)はベッティング状況は結果を正確に予測していません。
では、以下に和訳全文を掲載します。詳細は和訳全文をご覧ください。