Our Local Correspondents April 26 & May 3, 2021 Issue
The E-Scooters Loved by Silicon Valley Roll Into New York
シリコンバレーで大流行のEスクーターがニューヨークにやってくる!
Fleets of electric scooters have taken over city streets worldwide. With New York finally climbing aboard, do they represent a tech hustle or a transit revolution?
世界中の都市でeスクーターが走り回っています。いよいよニューヨークにもeスクーターがやってきます。eスクーターは単なるテック企業によるゴリ押し?それとも近距離移動手段に革新をもたらす?
By John Seabrook April 19, 2021
1.eスクーターのシェアリングサービス導入気運の高まり
ニューヨーク市は、かつては新たな交通手段のアーリーアダプター(早期導入者)でした。1860年代後半に、ニューヨークでは多くの人たちがベロシペード(自転車の原始的なバージョン)に乗っていましたし、その半世紀後、ニューヨーク市では自動車の利用を奨励し、無料の駐車場が沢山整備されました(現在では、ほとんどのニューヨーカーは車を所持していませんので、そうしたスペースはもっと他の目的に使って欲しいものです)。また、ニューヨーク市は地下鉄網を設計し整備してきました。今では地下鉄が網の目のように地上と地下を走っています。COVID-19のパンデミックが発生する前は、平日には1日当り550万人が利用していました。現在は、リモートワークの影響でかなり利用客数は減っています。この働き方が定着してしまうと、乗客が戻って来ない可能性もあります。
しかし、同市は電動キックスクーターのシェアリングサービスではアーリーアダプターではありませんでした。同市で”Citi Bike(以下、シティ・バイク社)”がレンタル自転車のシェアリングサービスを2013年に開始した際も、他の多くの大都市よりも数年遅れでした。同市はこの斬新で大胆な新しい街中の移動方法に対しても保守的なアプローチを採用していました。
電動キックスクーターのシェアリングサービスが一番最初に導入されたのは南カリフォルニアでした。Bird社(以下、バード社)が始めて、Lime社(以下、ライム社)が続きました。両社は、いずれもベンチャーキャピタルが支援するスタートアップ企業です。2017年にバード社がサンタモニカの街中に、2018年にライム社がサンディエゴの街中にレンタル用の電動キックスターターを設置しました。両社はできるだけ早く自治体の規制をクリアして、早くサービスを開始したいと望んでいました。バード社はCEOトラヴィス・バンダーザンデン(Uber社(以下、ウーバー社)で国際戦略を担当していた元幹部)指揮の元、世界各国で電撃戦を仕掛けて導入を急ぎました。たったの1年間で100都市に白と黒のツートンカラーのバード社の電動キックスターターが設置されました。新しいサービスに対して保守的な対応をする都市もあり、シアトル市、ウェストハリウッド市、ウィンストン・セーラム市等では電動キックスクーターが一時的に乗り入れ禁止となりました。
バード社の収支を見ると黒字になるのはまだまだ先になりそうですが、既にユニコーンとしてのステータスを獲得しています(株式時価総額が10億ドルを越えました)。後を追うように、ライム社もユニコーンのステータスを獲得しました。多くの投資家が「マイクロモビリティ(コンパクトで小回りが利く1~2人乗り程度の車両の総称)」に注目していて、次代のウーバー社が出現するのではないかと期待しています。世界規模で見ると、1年で、30社を超える電動キックスクーターのシェアリングサービスを手掛けるスタートアップ企業が出現しました。
多くの都市では、電動キックスクーターのシェアリングサービスは自転車のそれよりも先に導入されました。また、キックスクーターの方が、より幅広い年代に利用されています。バード社は、サービススタート後の1年間で1,000万回以上利用されました。電動キックスクーターの手軽さが利用者に受けているようです。たとえば、テキサス州オースティンでは、サウス・バイ・サウスウエスト(世界最大級の音楽祭・映画祭・インタラクティブフェスティバルなどを組み合わせた大規模複合イベント)の期間中、電動キックスクーターが会場間を移動するのに理想的であるとして人気を博しました。また、西海岸のベニスビーチでは電動キックスクーターが沢山走り回っています。2019年時点では、電動キックスクーターはパリ、ウィーン、マドリード、メキシコシティ等の都市の街中を走っていて、既に無くてはならないものになっているようです。あちこちの歩道にシェアリングサービス用のキックスクーターの置き場があります。
多くの公共交通手段の研究者が、電動キックスクーターのシェアリングサービスを「ラストマイルの問題」の解決策になるとして評価しています。「ラストマイルの問題」とは、駅と自宅の間の距離が歩くにしては遠い場合どうするかという問題で、400メートル以上が該当し、ほとんどの人が該当します。電動キックスクーターのシェアリングサービスは、モバイル端末(スマホ等)とGPSを活用する初めての交通手段であると評価する人もいます。また、eスクーター(訳者注:英語では同じ語の繰り返しを嫌うので、原文中で電動キックスクーターをeスクーターと言い換えている)はバッテリー駆動でソフトウェア制御の移動手段の先駆者であると評価する者もいます。しかし、eスクーターをあまり評価しない人たちもいます。彼らは、それは一時の流行でしかないと言います。また、スタートアップ企業が公共の街路を利用して一部の投資家を豊かにする為だけに技術を駆使していると非難しています。
バード社とライム社は、沢山の訴訟を負傷した利用者から起こされています。また、歩道の真ん中の指定した置き場所でないところに放置されたeスクーターに遭遇した多くの人々から敵意を持たれていました。2018年5月、サンフランシスコ市は市民から約2,000件の苦情を受けた後、バード社、ライム社、2018年11月にフォード社に買収された3番目の事業者であるSpin社(以下、スピン社)に対して行政指導を行いました。同年、ロサンゼルス市で、ライム社、バード社などが、歩行者の安全を脅かしているとして集団訴訟を起こされました。今ではインターネット上に、eスクーターを非難する内容や画像が沢山見られます。中には、芸術的と言えるほど出来栄えの良い画像も見られます。”Bird Graveyard(バードの墓場)”というインスタグラムサイトでは、破壊されたバード社のEスクーターが見れます。捨てられたものや、海に沈められたもの、燃えているものも見れます。
先進国の巨大都市の中で、電動キックスクーターのシェアリングサービス拡大に前のめりなのは、ニューヨークとロンドンだけでした。その後、パンデミックが発生し、世界中で移動手段が旧来とは大きく様変わりしています。公共交通手段の研究者たちは大変革を起こす千載一遇のチャンスだと捉えていいます。ニューヨーク市で自転車専用レーンが増々混雑しているのを見ると、eスクーターが隆盛するのも遠くないと思います。