Enjoying the Plotless Fever Dream of Euro 2020
ユーロ2020はエキサイティング!劇的な試合、筋書きのないドラマが繰り広げられている
With COVID on the rise again in Europe, fans pack the stands for shockingly good soccer matches.
ヨーロッパで再びコロナ感染が広がっている中、熱心なサポーターがスタンドを埋め尽くしている。期待に違わず、熱い試合が繰り広げられている。
By Sam Knight July 2, 2021
こんなご時世にサッカーの UEFA Euro 2020(欧州選手権)を開催すべきではないという人が沢山いましたし、そういった考えは一理あるあるように思えます。Euro 2020は東京オリンピックと同様で、新型コロナの影響で昨年夏に開催予定のものが延期されたものです。しかし、大きな大会が開催されるからといって、新型コロナウイルスが気を使ってどこかに消えてしまうわけではありません。7月1日にはWHO(世界保健機関)がヨーロッパの感染者数が前週よりも10%増えたと発表しました。スタジアムやバーに行く人たちが増えたことも感染が広がった一因であると指摘していました。英国では、決勝トーナメントの準決勝と決勝が行われる予定ですが、新型コロナウィルスの変異種デルタ株による感染第3波が起こりそうな雰囲気で、再び感染が増加しそうです。6月30日には感染者が2万6千人以上出ました。前週より60%増でした。入院者数はまだ少ないものの、イングランド地方だけで見ると50%以上増でした。ドイツの内務大臣は、ヨーロッパ大陸のそこらじゅうでサッカー好きがビールを飲み、応援で国歌を歌って気勢を上げ、大勢が密になって騒いでいる様を見て、「まったく無責任だ」と非難しました。また、イタリアの首相は(これまでのところイタリアチームは順調に勝ち進んでいますが)、決勝戦はロンドンで開催するのを止めてローマで開催すべきだと示唆しています。
UEFA Euro 2020(欧州選手権)の開催方式は2012年に決まったのですが、非常に効率的に新型コロナウィルスを拡散しているように見えます。6月11日に開幕し、既に44試合が11か国(アゼルバイジャンからスコトランド)で行われました。11か国の中には感染者数が多い国もあれば少ない国もあり、また、各国ではそれぞれ独自の感染予防策が採られていました。アムステルダムでは感染者数を制限し社会的距離が確保されていましたが、ブダペストではスタジアムは満員で観客は半裸で大声をあげていました。テレビで UEFA Euro 2020(欧州選手権)を見るということは、新型コロナウィルスに感染しなくて済むことを意味しますが、テレビでこの大会のトルコ石色で青い「Euro 2020」というロゴを見る度に、今年は2020年ではないので、すこし奇妙な感じを覚えます。

テレビでEuro 2020を観るのも中々楽しいものです。沢山のゴールが生まれています。月曜日の夜にコペンハーゲンで行われた試合(クロアチア対スペイン)では、大会通算109ゴール目をクロアチアのサイド・アタッカーのミスラフ・オルシッチが決めました。その時点ではまだ10試合残っていたにもかかわらず、109ゴールというのはこれまで行われた大会で最多です。その試合では、8人が1ゴールずつ決めていましたが、オルシッチのゴールは5番目に生まれたゴールでした。この大会で1試合8ゴールが生まれたのは、61年ぶりのことでした(61年前にユーゴスラビアが5対4でフランスを破った試合以来)。また、その試合は内容も非常にスリリングで素晴らしいものでした。去年の夏に各国のサッカーリーグが再開されて以来、サッカー選手は1年間ほぼ休みなく試合と練習を繰り広げてきたのでスキルが上がっていたのかもしれません。あるいは、私たちのような普通の者と同じで、久々に大観衆が入ったスタジアムの試合でサポーターの歓声を背に受けて良いプレーが出来たのかもしれません。月曜日の夜の試合では、スペインチームはそれまでの試合でのうっぷんを晴らすかのようでした。スペインは2008年と2012年大会の覇者ですが、この大会ではこの試合の前の2試合は、得点力不足が響きいずれも1-1のドローで終えていました。2試合では、長身が武器でいつも苦しんでいるような表情のストライカーのアルバロ・モラタが率いる攻撃陣は無力でした。モラタは、フィジカルコンタクトが弱くて、ゴールしそうな雰囲気はありませんでした。しかし、そんなスペインがクロアチア戦では5度ゴールネットを揺らしました。モラタは3-3の延長戦で決勝点となるゴールを決めました。いとも簡単にゴールを決めたように見えました。
その2時間後、ブカレストで行われていた試合では2018年ワールドカップ覇者のフランスが、ポール・ポグバの超絶ドライブシュートなどで、スイスを3-1とリードしていました。どうして、その両国がルーマニアで試合をしているのかはちょっと謎でした。というのはルーマニアはこの大会に出場していないからです。まあ、そんな小さなことは気にせず、Euro 2020を純粋に楽しんだら良いのです。ポグバはボールが弧を描いて落ちてゴールに吸い込まれるのを見て、悦に入ってさまざまなポーズをとって喜んでいました。フランスは勝利を手中に納めかけていました。しかし、スイスはそれに激しく抵抗しました。最後の10分で、スイスは2度ゴールネットを揺らし、勝負は延長戦に持ち込まれました。結局、120分では決着がつかず、PK戦となりました。試合を決したのは、22歳のフランス人フォワード、キリアン・エムバペのキックでした。彼は間違いなくこの試合で一番印象的なプレーを見せていました。エムバペにとっては、いろいろと因縁の残る奇妙な大会でした。彼は自信と野心に満ち溢れていました。彼はドイツ戦で華麗なゴールを決めましたが、その後、VARによってゴールを取り消されました(VARはEuro 2020では非常に正確で概ね好評でした)。エムバペはスイス戦のPK戦で自分の順番が来た時に非常に冷静に見えました。エムバペのペナルティキックをセーブした時、一番驚いていたのはスイスのゴールキーパー、ヤン・ゾマーでした。フランスはこの大会の優勝候補と目されていましたが、ここで敗退となりました。スポーツの世界に番狂わせはつきものです。
Euro 2020の上位予想されているチームで順調に勝ち上がっていたのは、ベルギーとイタリアの2チームだけのように見えました。ベルギーは世界ランク1位でこの大会に臨みました。ベルギーのプレッシングはタイトで、相手に自由を与えません。イタリアは、いつも守備的なチームですが、今大会では非常に攻撃的で面白いサッカーをしていました。その2国以外にベスト8に勝ち進んだ6チームは、実力以上の力を発揮したように見えます。デンマークは初戦でフィンランドと対戦しましたが、前半43分に中心選手で10番を背負うクリスティアン・エリクセンが心肺停止に陥りました。彼のチームメイトはフィールドで彼を隠すように周りに立ちました。デンマークの医療スタッフに蘇生法の訓練を実施したばかりのドイツの救急医イェンス・クラインフェルドはスタジアムの座席から飛び出して駆け付け、AEDを使いました。エリクセンの意識が戻った時、クラインフェルドは「意識はある?」と問いかけました。すると、エリクセンは言いました、「大丈夫、意識は戻りました。くそっ、俺は29歳になったばかりなのに、何でこんなことになるんだ!」と。デンマークはその試合は落としましたが、それ以降は熱いプレーをし続けています。先週末には、ウェールズ相手に4ゴールを叩き込んで葬りました。
一方、長年イングランドは主要な大会で高い実力を発揮できずに終わることが多かったのですが、ドイツを破ったことで既に楽観的な空気が支配的になっています。まあ、イングランドが根拠も無く楽観的になることは珍しいことではありません。火曜日の夜、ウェンブリーで、イングランドはドイツと対戦しました。このスポーツでは、ドイツはイングランドのライバルですが、対戦成績は一方的にドイツが勝ち越していました。(今回はイングランドがドイツを破りましたが、主要な大会の決勝トーナメントでイングランドがドイツを破ったのは、実に55年ぶりのことでした。)かつては敗戦時に戦犯として非難されることが多かった俊敏なラヒーム・スターリングが75分に技ありのゴールを決めました。チームの中心であり主戦フォワードのハリー・ケインはこの大会のために1年間厳しいトレーニングを続けてきました。試合時間残り10分となったところで、スターリングがボールを奪われ、ドイツのフォワードのトーマス・ミュラー(raumdeuter:空間の解釈人がニックネーム)がイングランド守備陣を切り裂きゴールに迫りました。イングランドサポーターが息を飲む瞬間でしたが、ミュラーのシュートはポストの脇をかすめました。BBCの実況解説のガイ・モーブレーは絶叫しました、「ひぇー、助かったぁー!」と。その6分後、グーリッシュの折り返しを中央でケインが身をかがめて頭で合わせて貴重な追加点を挙げました。ウェンブリースタジアムが揺れました。イングランドの多くのファンがそこかしこでスマホで決勝戦のチケットを購入しました。
Euro 2020はいよいよ最終盤に差し掛かりました。今週末には準々決勝が行われます。こうした大きな大会では時として意外なチームが勝ち残るものです。準々決勝ではアゼルバイジャンでデンマークとチェコが対戦しますが、両チームとも勝ち上がってくるとは予想されていませんでした。予想出来ないものを予想しても意味がないのですが、確実に予想できることもあります。それは、準々決勝以降はゴールが量産されるような試合は無いだろうということです。また、技術が高く、経験値の高いチームが優勝するだろうと予想します。魅力的なサッカーが必ずしも勝ち残るわけではありません。皆を興奮させてくれた大会もいよいよ終わろうとしています。私は、こんなご時世にEuro 2020を開催すべきではなかったと考えたことはありません。もうじき熱狂も冷めるでしょう。6月30日には、スコットランドの保健当局がEuro 2020の試合を観戦した約2,000人が新型コロナウイルスに感染したと発表しました。スコットランドのサポーター397人が2週間前にスコットランドとイングランドの対戦を観戦するためにウェンブリーに行って感染していました。また、ロシアの副首相は、デルタ種が蔓延しているため、500人以上の集会を禁止するよう地方自治体等に要請しました。しかし、金曜日の夜には、3万人以上がサンクトペテルブルクでスイス対スペインの試合を観戦しました。元々の計画では、Euro 2020の決勝戦は7月11日にロンドンのウェンブリーで行われ、6万人の観衆を入れる予定でした。決勝戦の結果を予想するのは非常に困難ですが、新型コロナウィルスの感染がそこで広がるのを予想するのは容易なことです。
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