本日翻訳して紹介するのは、Web版にのみ掲載のJohn Cassidyによるコラムです。タイトルは”Jerome Powell and the Fed Are Still Struggling to Understand a Crazy Economy Hit by the Pandemic and War”です。
タイトルを訳すと、「ジェローム・パウエル率いるFRBは、今後の景気を予測するのに苦戦しています。新型コロナとウクライナ紛争の影響を正確に予測することは不可能?」くらいの意味でしょうか。スタッフライターのJohn Cassidyによるコラムです。氏は、経済関連の記事をタイムリーに書いています。非常に多作です。サブタイトルは、”The models that economists have long relied on to analyze inflation have broken down since the coronavirus pandemic began.”(新型コロナのパンデミックが始まって以降は、インフレ分析の際に長年頼ってきた経済モデル、とりわけ高インフレと低失業率を結びつけるフィリップス曲線を、判断の根幹に据えることができなくなった。)となっています。
Cassidyは、FRBの金利引上げを続ける姿勢に懐疑的なようです。景気後退に陥りそうな兆候が随所に見られますし、原油価格が下がり始める等インフレ率の上昇も一服しそうな気配もあります。ですので、もうこれ以上、金利を上げると景気後退に完全に陥てしまうかもしれません。
おそらく、7月28日(木)にFRBは市場予想通り、0.75ポイントの利上げを発表するでしょう。これで、FFレートは2.5%となります。いわゆる中立金利になるのではないでしょか。8月はFRBの金融政策決定会合はありません。次は9月下旬です。それまでには2ヶ月ありますので、インフレ率が下がるのか、景気後退局面入りするのか、結果はある程度はっきりするでしょう。
Cassidyは、昨年途中から高インフレ率になったのに、FRBはそれを全く予測できなかったことに批判的です。それで、昨年に予測を大きく外したわけだから、今現在のFRBが立てている見通しも全く当てにならないだろうと主張しています。いや、そのとおりだと思います・・・。
しかし、私は、FRBを責めることはできないと思います。そもそも、昨年は中頃からオミクロン株が大流行したり、上海のロックダウン等が発生したわけで、それを事前に織り込むことなど不可能で、高インフレを予測できなかったとしても致し方ないと思います。いや、それらが無かったとしても、景気予測とかインフレ率の予測なんて、当たることもありますが、外れることも多いのです。ラリー・サマーズが、昨年後半の高インフレを予測できていたと言われています。しかし、彼は、毎年毎年そう予言していただけなのです。それで、予測が昨年後半は当たったわけですが、逆を言うと、これまでずっと予測を外し続けていたのです。認識しておかねばならないのは、どんな偉い人でも、著名なエコノミストでも、景気予測を正確にすることなんてのは無理だということです。そもそも、ウクライナで紛争が起こることや新型コロナのような疫病の大流行を予測できないわけですから。
では、以下に和訳全文を掲載いたします。
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