ケタミン・セラピーって知ってる?アメリカで大流行のうつ病治療法!本当に抗うつ剤よりも効果があるのか?


 本日翻訳し紹介するのはThe New Yorker のWeb版にのみ掲載のコラムで、タイトルは”Ketamine Therapy Is Going Mainstream. Are We Ready?”(うつ病治療でケタミン・セラピーが主流になりつつあります。本当に効果ある?)です。うつ病治療の新たなトレンドの話です。

 サブタイトルは、”The mind-altering drug has been shown to help people suffering from anxiety and depression. But how it helps, who it will serve, and who will profit are open questions.”(ケタミンは、不安神経症やうつ病に苦しむ人たちに効くようです。しかし、その薬理作用は明確にはなっていません。)です。Emily Wittによる記事です。Emily Wittはスタッフライターで、エッセイや批評や紀行文など幅広く記事を書いています。今回の記事は、米国でうつ病治療で、幻覚剤のケタミンを使ったセラピー(治療)が流行っていることに関してです。

 ところで、記事を書いたEmily Wittさんなのですが、彼女は自らケタミン・セラピー(ケタミン療法)を体験します。いわゆる、体当たり取材というヤツです。それで、赤裸々に自分は数年前にちょっと嫌なことがあってうつ病を患っていたこと、以前にドラックをクラブでやってラリったり、トリップした経験がある等も記しています。なかなかオープンな人だと思います。また、彼女は日本では翻訳されておらず発売もされていないのですが、“Future Sex”という本を書いているようです。映画批評や書評もやっているようで、本当に多才な方のようです。

 また、この記事ではケタミン・セラピーのことが論じられているのですが、そもそもケタミンとは何ぞやということが私には分かりませんでした。米国では、クラブとかでやるドラッグで誰もが知っているもののようです。脳科学辞典には「アリルシクロヘキシルアミン系の解離性麻酔薬であり、世界保健機関による必須医薬品の一つである。薬物乱用が問題になり麻薬指定された。精神医学領域では、ケタミンは統合失調症モデルとして使用されているが、近年、ケタミンの即効性抗うつ効果が注目されている。」と記されています。要は、元々は麻薬だが、トリップするためのドラッグとしてもアンダーグラウンドで流通ているようです。日本では、2005年頃に六本木界隈で外国人の方がこの薬物の中毒で何人も亡くなられたことがありました。

 さて、非常に長い記事ですので、簡単に要点を記しておきます。

  1. 米国では幻覚剤(ケタミン)を使ってうつ病を治療するクリニックが雨後の筍のように増えている。
  2. 旧来の抗うつ剤はうつ症状の緩和はするものの、うつ病を治療する効果は全く無かった。
  3. ケタミン・セラピーではケタミン投与によって、セラピストの指示の下で幻覚症状に入る。それで、心の奥底の決して無くならなかったものが取り除かれる。らしい。
  4. ケタミン・セラピーは受ける人も多いが、幻覚剤の一種であるということで、このセラピーを忌避している者も多い。
  5. ケタミンは幻覚剤である。解離性麻酔薬として開発された頃に、ベトナム戦争があり、現地で多用された。その後はクラブやレイブでラリるためにやるものになった。それなりに依存性も高く、リスクの高い薬剤である。死ぬ人、自殺する人も多い。
  6. ケタミン・セラピーを行うクリニックが急増している理由は1つ。儲かるから。薬自体は7ドルだが、治療費で1回1,000ドルを得ることが出来る。患者は保険診療なので負担はそれほど大きくない。
  7. とはいえ、ケタミンがうつ病を治す薬理作用、メカニズムは解明されていない。というか、本当にうつ病を治療できるという明確な証拠は示されていない。らしい。
  8. そもそも、特定の治療法がうつ病に効くか否かを証明することは難しい。うつ症状は血糖値や血圧と違って数値で測ることができない。また、うつ病とは、慢性的に気持ちが落ち込むことであるが、そもそも意識がどこにあるかということさえも解明されていない。
  9. Emily Wittさん自らがケタミン・セラピーを体験してみた。終わってすぐは、幻覚剤でトリップした影響からか、20年ぶりで気分がスッキリした。しかし、数週間でその効果は剥落し、結局は効果がないようである。

 以上がこの記事の要点です。
残念ながら、Emily Wittさんの感想では、ケタミン・セラピーは隆盛しているようだが、うつ病を根本的に治すものではないようです。

 では、以下に和訳全文を掲載します。