妊婦が妊娠したことをグーグルなどのデータブローカーに隠す実験は成功したのか!?

 本日翻訳し紹介するのは The New Yorker の Web 版に 5 月 4 日に投稿された Jia Tolentino によるコラムでタイトルは、” The Hidden-Pregnancy Experiment “(妊娠したことを隠す実験)となっています。

 Jia Tolentino はスタッフライターです。他の雑誌の副編集長をしていたこともありますし、エッセイも出しています(邦訳はされていないがアメリカではかなり売れっ子です)。スニペットは、” We are increasingly trading our privacy for a sense of security. Becoming a parent showed me how tempting, and how dangerous, that exchange can be. ”(プライバシーと引き換えに安心感を得る傾向が強まりつつある。自分が親になったことで、そうした取引は魅力的であると同時に、危険であることも認識できた。)となっています。

 さて、本日翻訳したコラムは、筆者の Tolentino が第二子を妊娠したのですが、そのことをグーグル等のデータブローカーに隠せるか否かを試した実験について記したものです。詳細は和訳全文をお読みいただくとして、実験は見事成功しています。しかし、簡単ではないようです。Tolentino が個人情報保護の専門家に聞いたところでは、ほとんど不可能と思われていたようです。隠すためにしたことを列挙します。まず、スマホ関連ですが、スマホで妊娠とかマタニティとかについて調べない、妊娠や育児に関するアプリはすべて削除する、スマホに入れているアプリの位置情報へのアクセスを許可しない、スマホでベビー服とかを買わない等々。また、購入履歴が漏れないように、ベビー服、ベビーカー、育児関連書籍等はクレジットカードで購入せず、ギフトカードを何枚も購入して買う等々です。夫にも同じ制約を課しています。

 いや、何と言うか、涙ぐましい努力と言えます。これをやってしまうと結構不便な気がします。私が思うに、スマホ等でさまざまなことを調べると、調べた人のメタデータとともに検索内容が収集され、それらが勝手に紐付けされてデータブローカー(グーグル等のデータを収集し販売する企業)に渡り、マーケットで売買されます。データを勝手に収集されるわけですが、見返りとして恩恵もあります。無料でいろんなことを調べられます。私なんかは恩恵のほうが多いとさえ思います。昔は、家庭の医学なんて分厚い本がある家庭が結構ありました(おそらく、会社の健保組合から無料でもらったとかだと推測)。あれは買うと高かったのですが、今ではググればより詳しい内容で最新の情報を瞬時に得ることができます。余談ですが、私の友人の家は自営業だったので家庭の医学が無かった。私の家に来た時に、彼はこっそり若年性男性脱毛症について調べていた。放心状態で彼が帰った後、その項目が開いたままになっていたのである。そこには「特効薬、治療法無し」との記述があった。藁をもすがる思いでその項目を開いた友人のことを考えると、私は今でも心苦しい。

 ちなみに痔についてスマホで検索すれば、しばらくはひっきりなしに痔の軟膏や近所の痔専門クリニックのポップアップ広告を表示してくれるようになります。バリバリに情報を抜かれています。近所のクリニックしか表示されないので、位置情報もバッチリ抜かれています。いや、私が欲しい情報はクリニックとかの情報じゃないんですよ。ポップアップで、医師や看護師の前で痔になった肛門をさらけ出しても恥ずかしくない方法を表示して欲しいんですが・・・。仕方がないので AI に聞いたらアドバイスをくれました。医師や看護師はプロフェッショナルであり痔の患者に慣れているので、恥ずかしがる必要はないとのこと。AI チャットくんは痔になる可能性がないから人前で肛門を見せる屈辱が理解できんのやな。でも AI の言うこともたまには聞いてやらんと拗ねるといけないので、先日、クリニック(整形外科)に行ってきました。初診だったので受付でどうされましたかと聞かれた。ちょっと下半身の怪我で膝の状態が悪いと伝えた(受付はきれいな若い女性で、「痔」という単語を口にすることは私には荷が重かった)。数分後に診察室に案内された。先生(幸いにも同年代の男性)は、私が何も言わないのに「痔ですか?」と言ってズボンを下ろすよう指示してきました。あっ、AI チャットくんの言っていたとおり医師ってプロフェッショナルやんけって思いました。でも、恥ずかしかったですわ!痔の悪い人には、私から AI チャットくんよりもためになるアドバイスをおくりたい。行く前にけつ毛は剃れ!こういう実体験からアドバイスできるところが、AI よりも人間が優れているところだな。

 あと、データブローカーにデータが渡っているか否かはどうやって判別できるのか?ということですが、これは簡単です。Tolentino の場合は、マタニティパンツをスマホで購入したら直後からインスタグラムでベビー用品の広告がポップアップ表示されるようになりました。表示されなかったそれまでは、妊娠していることを隠せていたわけです。これは、私も経験あります。いかがわしい内容の検索をすると、満員電車では開けないようなチラシが出るようになります。これは、データが向こうに渡ってしまっている状況です。投資について検索すると、すぐに毎月投資した金額が倍になるというありがたい投資案内の広告が表示されるようになります。これもデータダダ漏れ状態です。ちなみに、シークレットタブで検索するとそういった広告は出ないようです(広告は出ないですが、検索内容はデータブローカーに渡っていると言う人もいますが、私にはわかりません)。

 では、以下に和訳全文を掲載します。詳細は和訳全文をご覧ください。